斉藤由貴「卒業」(1985年)
作詞:松本隆 作曲:筒美京平 編曲:武部聡志
NTTが誕生した1985年。「卒業」と題する作品が4曲も登場した。
斉藤由貴「卒業」 1985.2.21
菊池桃子「卒業 (GRADUATION)」 1985.2.27
尾崎豊「卒業」 1985.1.21
倉沢淳美 「卒業」 1985.2.14
偶然か?業界で申し合わせた結果か?阪神タイガースが優勝してしまう奇跡の年だから、歌謡界にもなにか起こったのかもしれない。
筒美フリークの私はもちろん斉藤由貴「卒業」をピックアップしたい。
注目すべき特徴はたくさんあるが、今回は松本隆氏による詞の語数が多いことを挙げたい。
音楽に拍があるように、言語にも拍(モーラ)がある。促音「っ」や長音「ー」も1モーラとしてカウントする。
語数が多いと当然モーラ数も多い。斉藤由貴「卒業」の詞(繰り返し部分もカウントする)のモーラ数を数えてみるとなんと465モーラもある。
ちなみに松本隆初期の作品、太田裕美「雨だれ」は237モーラである。
松本隆さんと組む場合は、原則、詞が先とのこと。この語数で詞先はさぞかし難しいだろう。松本隆さんにはちょっと意地悪なところがあって、「なーに、筒美さんなら上手く曲を付けてくるよ」といったノリで容赦なく難しいのを渡すそうである。有名な「木綿のハンカチーフ」は歌詞を渡されたときは筒美先生もたまげたそうである。しかし、しばらくしたらニコニコしながら「出来たよ~」と持ってくるのが筒美センセ。
斉藤由貴「卒業」では、メロディを16ビート基調で構成することにより上手く収めていると思う。譜割りを16分音符単位で調整しやすい。
それでも、随所が早口言葉のような感じになっていることも否めず、歌う斉藤由貴さんはたいへんだったのではとも思う。
しかし、おっとりキャラの斉藤由貴さんが、一生懸命、時に早口に、訥々と歌う姿が、結果的にはファンの心をつかんだのではないだろうか?
youtube動画 斉藤由貴「卒業」(1985年)