5月13日に、1頭のシェパード犬が来院しました。
その子の名前は「エレナちゃん」、10歳になった女の子です。
エレナちゃんは、午後急に動けなくなったとのことで、車からも下ろせないので、行ってみると、確かに自力で立つこともできなく、唇の粘膜は真っ白でした。
病院まで抱っこして運び、そのまま血液検査、エコー検査を行いました。
その結果、脾臓の腫瘤が破裂して、腹腔内に大量の血液が出て、出血性のショック状態で、その時点でもまだ出血は止まっていませんでした。
急速点滴を行い、獣医師の手が空き次第、開腹手術を始めたかったのですが、5月も診察が忙しく、誰も手が開かないので、看護師に手伝ってもらい麻酔を導入し始めました。
開腹する段階で、敦井先生が来てくれて、他の先生も、診察の合間に手伝ってくれました。
手術自体は脾臓を摘出するだけなので、30分で終了したのですが、腹腔内の大量の血液があり、今回は1/3だけ吸引して、出血している脾臓は腹腔の外に出して処理・摘出し、腹腔内にある血液はそのままにして閉腹する方法を取りました。
腹腔内に出血した血液の70%は数日で体に吸収されるのですが、腹腔内の血液をそのままにしての手術は、視野の確保の問題もあり、普通は全部吸引してからの手術となります。
そして、腹腔内に大量の血液を残したまま閉腹すると、きちんと縫合しても、腹膜の切開部から血液がじわじわと漏れてしまいます。
しかし今回は、大量出血だったので、あえて血液を残した手術にしました。
手術前の「エレナちゃん」、本当に死んでしまう一歩手前でしたが、16日に、元気で退院しました。よかったです。