◎「自由か死か」究極の選択をし続けるハリエット・タブマン~映画『ハリエット』を見て | 吉岡正晴のソウル・サーチン

吉岡正晴のソウル・サーチン

ソウルを日々サーチンしている人のために~Daily since 2002

「自由か死か」究極の選択をし続けるハリエット・タブマン~映画『ハリエット』を見て

 

5人。

 

1822年から1913年まで実在した黒人女性、ハリエット・タブマンの壮絶な生涯を描いたドキュメンタリー・タッチの評伝映画『ハリエット』。

 

映画『ハリエット』本予告_6月5(金)全国ロードショーアメリカでは誰もが知る実在の奴隷解放運動家、ハリエット・タブマンの激動の人生! 奴隷として生まれた女性が、たった一人で自由www.youtube.com

 

数日前に、昨年(2019年)僕の『ソウル・サーチン・ラウンジ』にゲストで登壇し、ニューヨークのクラブ/ディスコ事情、ブラック・カルチャー事情などを現地での体験をベースに詳しく語っていただいたドクター小山から久しぶりにメールが来て、「吉岡さん、『ハリエット』見ました? すごいですねえ。暴動が起き、『ハリエット』を見て感じたことが超繋がって感じてます。黒人差別問題の答えと解決策には『ハリエット』を見ることが一番だと思いますが、どう思います? (映画に感動して)久々に映画のパンフレット買ってしまいました」とあった。

 

そこでさっそく六本木ヒルズの映画館に出向いた。昼の回ということもあってか、キャパ(収容人数)300超のところに客は僕を含めて5人。さすがにまだ映画館は人が少ないようだ。これなら何かコロナが移る可能性は低いだろう。

 

~~~~

 

自由。

 

今年のアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたシンシア・エリヴォの圧巻な演技がすばらしかったが、なにより映画というよりも、この主人公となったハリエット・タブマン(1822年~1913年)という人物が200年も前に実在し、本当にこのような奴隷解放を手助けしたという事実そのものに感銘を受ける。一体どれほどの信念を持ち、あれほど危険な脱出を実行しようと考えるのか。あんな不屈の精神をもった女性、人間を見たことはない。その意味で、彼女にフォーカスしたという点でこの映画の半分以上は成功だろう。

 

映画オフィシャル https://harriet-movie.jp/

 

映画 ハリエット2 シンシア・エリヴォ

(ミンティ―、のちにハリエット、シンシア・エリヴォ)

 

それにしても、何度も自分の家族を奴隷から解放しようと南部から北部の奴隷制度が終わり自由州となっていたフィラデルフィアに連れて行こうとする。その根性はすごい。

 

奴隷であることと自由であることの、その天と地の差。それは我々の想像を絶する。そもそも人権という概念がそこにはない。奴隷は単純に奴隷主の所有物。

 

それにしても同じ黒人でも「自由黒人」と「奴隷」の差はあまりに大きい。映画は二時間を超えるが、はらはらドキドキが続き、本当に息をつく間もない。

 

映画 ハリエット4 ジョー・アルウィン ギデオン(息子役)

(執拗にハリエットを追う奴隷主ギデオン)

 

「自由黒人」という言葉、概念を知ったのは以前映画『それでも夜は明ける』(2013年)だった。

 

今回の『ハリエット』はどうしても時系列をていねいに追うだけ、起承転結がステレオタイプに陥りそうになる。そのあたりが、アカデミーで「作品賞」に入らなかった要因なのか。

 

しかし、彼女が常に追いつめられると必ず「自由か死か」という究極の選択を迫られるが、その運命の分かれ道で必ず結果的に正しい道を選んできたところは、本当に神の導きがあったといえ奇跡の人物だと言わざるを得ない。

 

~~~~~

 

ディープ。

 

この『ハリエット (原題 Harriet)』は2019年9月のトロント映画フェスで初公開され、その後、11月1日から全米で公開された。

 

主演のシンシア・エリヴォ―は歌手としても今年ミュージカルで来日していたが、残念ながら僕は予定があわず見られなかった。この演技を見ていたら予定を変えて見に来ただろう。(笑)

 

予算1700万ドル(約18億7千万円)で制作され、すでに4330万ドル(47億6千万円)の興行収入を獲得している。

 

舞台は1840年代の奴隷が一部の州では廃止されていた時期。

 

ハリエット(ミンティ)が大変な長い距離の逃亡し、自由の国(州)フィラデルフィアに到着するとそこに「自由黒人」の宿主が現れた。それが美しい女主人、マリーだった。これを演じるのが、最初一瞬ハル・ベリーかと思ったが、なんとそれはジャネル・モネイだった。登場人物の中でもひときわ美しかった。彼女はハリエットの良き理解者となり、ハリエットがもつ人並みはずれた能力を知る。

 

映画 ハリエット3  シンシアとジャネル・モネイ

(左・エリヴォ、右・ジャネル・モネイ)

 

自分が逃亡を成功させると彼女はもう一度戻って残された家族を連れ戻そうと画策する。果たして家族は自分が体験した過酷な逃亡の旅に耐えられるのか。

 

それにしてもここで描かれる「自由黒人」と「奴隷」の身分の差に慄然とする。そして、彼女が何度か声高に言う「自由か死か」は、あの時代に究極の選択だった。しかし、それはジョージ・フロイド殺害から再度巻き起こった「ブラック・ライヴズ・マター(黒人の命も大事)」に続く。

 

一昨年(2018年)見た『デトロイト』、2014年日本公開の『それでも夜は明ける』、2020年の『黒い司法』などと並んで、黒人が置かれている状況の過去・現在・未来を描いている。そして、ハリエットのような信念を持った人物がいたからこそ、現在ジャネル・モネイが大きなロック・フェスで活躍できるのだとつくづく思う。

 

歴史はずっと何百年も続いている。だからこそ、この映画はその長い時間分重い。

 

■参考資料

 

映画『デトロイト』~2018年1月日本公開~1967年の暴動を50年後に描く衝撃作(1)
2017年11月20日(月)
https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12329704810.html

 

映画『それでも夜は明ける(12 Years A Slave)』パート1~それでも僕は推薦する
2014年03月07日(金)
https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-11789200022.html

 

映画『黒い司法』
https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12576845421.html


ENT>MOVIES>Harriet

ENT>ARTISTS>ERIVO, CYNTHIA


~~~~~

 

■サポートのお願い

 

ソウル・サーチン・ブログは2002年6月スタート、2002年10月6日から現在まで毎日一日も休まず更新しています。ソウル関係の情報などを一日最低ひとつ提供しています。

 

これまで完全無給手弁当で運営してきましたが、昨今のコロナ禍などの状況も踏まえ、広くサポートを募集することにいたしました。

 

ブログの更新はこれまで通り、すべて無料でごらんいただけます。ただもし記事を読んでサポートしてもよいと思われましたら、次の方法でサポートしていただければ幸いです。ストリート・ライヴの「投げ銭」のようなものです。また、ブログより長文のものをnoteに掲載しています。

 

noteにも掲載されています。

https://note.com/ebs/n/nc7f05be405c9

 

noteでの記事購入、サポートのほかに次の方法があります。

 

方法はふたつあります。送金側には一切手数料はかかりません。金額は100円以上いくらでもかまいません。

 

1) ペイパル (Paypal) 使用の方法

 

ペイパル・アカウントをお持ちの方は、ソウル・サーチンのペイパル・アカウントへサポート・寄付が送れます。送金先を、こちらのアドレス、 ebs@st.rim.or.jp にしていただければこちらに届きます。サポートは匿名でもできますし、ペンネーム、もちろんご本名でも可能です。もし受領の確認、あるいは領収書などが必要でしたら上記メールアドレスへお知らせください。PDFなどでお送りします。

 

2) ペイペイ(PayPay) 使用の方法

 

ペイペイアカウントをお持ちの方は、こちらのアカウントあてにお送りいただければ幸いです。送金先IDは、 whatsgoingon です。ホワッツ・ゴーイング・オンをワンワードにしたものです。こちらもサポートは匿名でもできますし、ペンネーム、もちろんご本名などでも可能です。もし受領の確認、あるいは領収書などが必要でしたら上記メールアドレスへお知らせください。PDFなどでお送りします。

 

3) サポートしたいが、ペイペイ、ペイパル、ノートなどでのサポートが難しい場合は、 ebs@st.rim.or.jp までご連絡ください。銀行振込口座をご案内いたします。(ちなみに当方三井住友銀行です。同行同士の場合、手数料がゼロか安くなります)

 

コロナ禍、みなさんとともに生き残りましょう。ソウル・サーチン・ブログへのサポート、ご理解をいただければ幸いです。

 

ソウル・サーチン・ブログ運営・吉岡正晴

 

本記事はnoteでも読めます
Noteトップ
https://note.com/ebs

 

ANNOUNCEMENT>Support

ENT>MOVIES>Harriet

ENT>MOVIES>Erivo, Cynthia