〇 ビートルズ「ノーホエア・マン」の全米ナンバーワンに見る全米チャートの違い | 吉岡正晴のソウル・サーチン

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〇 ビートルズ「ノーホエア・マン」の全米ナンバーワンに見る全米チャートの違い

 

【Beatles’ “Nowhere Man” Hit No.1 On American Chart?】

 

全米1位。

 

SNSで、友人が「台風情報のチェックのためラジオを聴いてたら、ビートルズのバラード特集をやってて、局アナが「Nowhere Man」は全米1位になったなんて紹介してる。そんなの初耳だよ」と書いていた。

 

ちょっと気になったのでチェックしてみたら、たしかにビルボードでは3位、キャッシュ・ボックスでは2位だった。最近は「全米1位」というとビルボード誌のホット100で1位ということになる。ただ、以前は全米のヒット・チャートというのは3誌あった。今でも存続するビルボード誌、どちらも廃刊となったキャッシュ・ボックス誌とレコード・ワールド誌だ。

 

すると、「ノーホエア・マン」は、なんとレコード・ワールド誌の1966年4月2日付けと9日付けで2週連続で1位になっていたのだ。

 

さすがに、「レコード・ワールドは盲点だった」と友人も書いていたが、確かに、「ノーホエア・マン」も「1」(ナンバー1ヒットばかり集めたコンピ)に入れられたのではという指摘もあっている。

 

1960年代中期だと、ビルボードとキャッシュ・ボックスはほぼ2大業界誌で、若干、キャッシュ・ボックスのほうが勢いがあったような気がする。レコード・ワールドは後発ゆえの3位だった。

 

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ついでなので、この3誌によるビートルズのナンバー・ワン・ヒットを調べてみた。

 

1964年4月初登場以降、21曲1位になった曲があり、次の3曲だけが3誌で1位になっていない。つまり、18曲は3誌で1位になっている。ちなみに、これ以前、64年1月から4月までの初登場曲、「アイ・ウォント・トゥ・ホールド・ユア・ハンド」「シー・ラヴズ・ユー」「ツイスト&シャウト」の3曲が1位になっているが、ここまではレコード・ワールドの記録がない。

 

ほとんどの曲は3誌ともで1位になっているが、例外が次の3曲。

 

「ノーホエア・マン」、 レコード・ワールドのみ1位、キャッシュ・ボックス2位、ビルボード3位。

 

「イエロー・サブマリン」、 キャッシュ・ボックス、レコード・ワールドともに1位、ビルボード2位。

 

「サムシング」、 レコード・ワールドのみ1位、キャッシュ・ボックス2位、ビルボード3位。

 

しいていえば、レコード・ワールドはビートルズに「フレンドリー」だ。(笑)

 

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こうしたヒット・チャートは、当時はすべて手作業で、レコード店での売り上げ、ラジオ局でのオンエア回数などを集計し、それを独自の方法で点数化(数値化)し、その数値の上からランク付けしていた。すべて手作業ゆえに、いろいろと人為的な操作も可能だっただろう。

 

よくあるのが、ほぼ同じ点数の場合は、広告を出してくれる会社のものを少しだけ上位にするというもの。元々10位のものを1位にすることはできないだろうが、2位か3位のものは、ものによっては1位にできるかもしれない。

 

そういう意味で、ヒット・チャートが3つあったのは、それぞれの独立性を担保する上でも、お互いめちゃくちゃができない抑止力にはなっていたのだろう。

 

ビルボードとキャッシュ・ボックスで1位にならずに、レコード・ワールドだけ1位になったというのは、なにやら、意味深だ。当時のレコード・ワールドを調べると、ビートルズの広告が飛びぬけて多かったとかあるのだろうか。

 

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