○映画『マイルス・アヘッド』～「マイ・ミュージックは誰にも渡さない」

【”Miles Ahead”—Stick To My Music】

マイ・ミュージック。

映画俳優、ドン・チードルがどうしても作りたいと思ったジャズ・マン、マイルス・デイヴィスの劇場用自伝映画。いわゆるドキュメンタリー映画ではなく、娯楽用の劇場用映画、それが『マイルス・アヘッド』だ。全米では2016年4月に公開され、日本では12月23日（金）からTOHOシネマズシャンテほかで公開される。

本作は約35万ドル弱（約3500万円）の低予算で製作されたインディ映画。いわゆるハリウッドの大作映画ではない。しかし280万ドル（約2億8000万円）の興行収入を得ている。最終的に、ソニー・ピクチャーズが全世界の配給権を獲得し、世界でリリースを始めている。

この映画プロジェクトは2006年頃からおぼろげに始まった。マイルスの自伝映画が作られるという話はいろいろと出てきた。そんな中、当初、チードルは主演をするだけの役割だったが、途中から製作にかかわるようになる。しかし、プロジェクトの製作は困難を極め、資金調達のためクラウドファウンディングも使用された。2015年10月にニューヨーク映画祭で初披露され、2016年4月1日からロードショー公開された。当初は主演だったドン・チードルが途中から監督兼プロデューサーとなった。脚本もチードルが書いている。

一足先に試写を見たので簡単な感想文を。基本的には若干のネタばれはありますが、鑑賞の妨げにはならないと思います。

予告編はこちら↓

https://www.youtube.com/watch?v=CeBR3Jo0FHM

約100分の映画でデイヴィスの一生を描くことは不可能だ。チードルはここで、デイヴィスが1970年代後期に約5年間、何もしなかった時期、つまり隠遁時代にフォーカスして、その間デイヴィスが何をしてきたのかを描こうとした。正確には復帰を目指そうとしている1979年の数日の物語を描く。

ストーリーは音楽雑誌（ローリング・ストーン）の記者が、デイヴィス宅に突撃インタヴューするところから始まる。デイヴィスはこの隠遁時代にどのような生活をしていたのか、レコーディングはしていたのか、レコード会社との関係はどうだったのか。アクション、愛憎、別れ、策略、ドラッグ、そして、音楽があふれる。

たぶん、けっこうフィクションの部分もあるのだろうが、僕が一番感銘したのは、デイヴィスが自分が録音した最新マスターテープをなかなかレコード会社に手渡さず、薬代のために現金を要求しつつも、それがギャングに盗まれるとなると、体を張ってそれを取り返そうとしているところだ。そしてそのとき彼は、「マイ・ミュージック（俺の音楽）は誰にも手渡さない」と叫ぶ。

僕などは、デイヴィスあたりだったら、同じようなレコーディングはいつでも、それこそ朝飯前のようにできるかと思うので、そんなに命まで張ってマスターを取り返そうとするのか、と思うが、その「マイ・ミュージック」への異常なまでの執念に感銘した。

デイヴィスの新しいことへの試み、他人と違うことをやること、過去にやったことの繰り返しはやらないこと、そういった精神はそこそこ描かれているような気がした。そして、そうした気概は、後のプリンスやマイケル・ジャクソンにも同じようにある。

マイルス・デイヴィスに関しては最近でもいろいろな書籍などがでていて研究するには、参考資料にことかかないので、「マイルス・デイヴィス学」を始めようとするのには、とてもいいきっかけになりそうだ。

もしマイルスが生きていたら、きっとロバート・グラスパーあたりと何かやったであろうことは容易に想像できる。そんなグラスパーらも映画、サントラにも参加。

サントラ、書籍関連など以下に。

全米では、DVD、ブルーレイともに2016年7月19日に発売されている。

■映画『マイルス・アヘッド』は日本では2016年12月23日（金）からロードショー公開。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B01F1WTLDI/soulsearchiho-22/ref=nosim/

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