◎「ゴー・ジャズを聴く」＠四谷いーぐる・イヴェント・レポート

◎「ゴー・ジャズを聴く」＠四谷いーぐる・イヴェント・レポート

【Go Jazz Talk & Listening Event @ Eagle, Yotsuya】

ジャズ喫茶。

2015年7月25日(土)、隅田川花火大会が行われるその日、暑さ真っただ中の午後3時半から四谷の老舗ジャズ喫茶「いーぐる」で、越境ジャズレーベル、「ゴー・ジャズ」のトークとリスニング・イヴェントが行われた。

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司会、行方均さん、トークで吉成伸幸さん、後藤雅洋さん、今回「ゴー・ジャズ・レーベル」作品10タイトルをリリースしたディスク・ユニオンの坂本さん、そして、吉岡正晴が登壇。

行方さんの進行で、それぞれが事前に選んだゴー・ジャズからの作品を1曲ずつかけていき、それについてトークをするというもの。とりあえず、5人が２周したところで、ほぼ時間がいっぱいになり、あと３曲追加された。

かけた曲（セットリスト）、および、５人が選んだ５曲のリストは下記に。

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JBL。

それぞれのところでのトークもなかなかおもしろかったのだが、まず何より僕が驚いたのが、この「いーぐる」の音の良さ。大きなJBLのスピーカーで聴くこのゴー・ジャズ・レーベルの作品群は家や車の中で聴くサウンドとは一味違った。スピーカーは1967年オープン以後、5－6台は入れ替えているそうだ。

やはり、「いい音でいい音楽を聴くこと」のすばらしさを改めて感じた。

いくつか、話題にあがっておもしろかったことをアットランダムに。

「ゴー・ジャズ」レーベルは、ベン・シドランと今回登壇の吉成さんが一緒にスタートさせたレーベル。リリースは1990年から始まり、40タイトル以上リリースした。中には、アメリカでリリースされただけのものもある。その後ゴー・ジャズが発展解消し、新たに「ナルディス・レーベル」をスタートさせた。

当初からレーベルの目指していたのは、1960年代後期から1970年代初期に多くの作品を出した「ブルーサム・レーベル」のようなレーベルだったと吉成さん。

今回再発されたCDは、すべてリマスタリング作業を新しく施した。だからものすごく音がよくなっている。

「ゴー・ジャズ」という名前だが、ジャズ・ファンからは無視されてきた。一方、主催者ベン・シドランの豊富な人脈が素晴らしい作品を作っていた。それはジャズに限らず、ソウル、R&B、ブルーズ、フュージョン、ポップ、ロックなど広範にわたった。

このレーベルの姉妹レーベルに「ゴー・ポップ」「ゴー・ラウンジ」「ゴー・アフター・アワーズ」などもあったということが、今回初めて明らかにされ、驚きの声が上がった。

しかし、リリースされた当初はどれも売れなかった。そこで行方さんの名言登場。

「幻の名盤とは初めて出たときの不幸の結果である」。

な～～るほど。

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ロック喫茶。

あるいは、ジャズ喫茶「いーぐる」は1967年開店だが、店主の後藤さんは、1972年頃、もう一軒ロック喫茶「ディスク・チャート」という店を、現「いーぐる」の場所にオープンした。そこでは後藤さんはロックのことはわからなかったので、二人の人物に選曲などを任せた。一人はおそらくイギリスのロックが好きな日野原さん（故人）、もう一人はアメリカものが好きな長門芳郎さんだった。そして、大貫妙子さんがウェイトレスをしていたそうだ。山下達郎さんなども出入りしていたという。だがこの店はいわゆる主流のロックをまったくといいほどかけなかったので、半年でつぶれたそうだ。(笑)　1972年のことだという。

ところで昨日（2015年7月26日）の『山下達郎のサンデイ・ソングブック』で、『ソングス』40周年記念の特集で、その「ディスク・チャート」の店の話がでてきてびっくりした。

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サンフランシスコ。

吉成さんは、1969年5月から1972年の5月頃まで、サンフランシスコ・ステート大学に留学するためにサンフランシスコにいた。その頃、ビル・グレアムにインタヴューする機会があり、彼が持つライヴ・ハウス「フィルモア・ウェスト」のフリーパスをもらい、暇さえあればいろいろなライヴを見た、という。

その頃、見たアーティストにはジェファーソン・エアプレイン、グレイトフル・デッド、クイック・シルヴァー・メッセンジャー・サーヴィス、ボズ・スキャッグスがいたころのスティーヴ・ミラー・バンド、いなくなったスティーヴ・ミラー・バンド、スライ＆ファミリー・ストーンなどなど。ただし、ジャニス・ジョプリンだけは、すでに死去していたために見られなかった、という。ジャニスなしのホールディング・カンパニーは見た。「そしてそんな中で飛びぬけていたのが、タワー・オブ・パワーでした」というと客席にいたタワー・オブ・パワー日本ファンクラブ会長の櫻井隆章さんから「お～～～っ」と拍手と歓声が！　

後藤さんはジャズの巨人と謳われていたが霞町（現・西麻布）にあったディスコみたいな店でゴールデン・カップスなんかを見たり、サム＆デイヴを赤坂ムゲンで見ていたり、意外なほどの「ソウル・マン」でした。

「ジャズは勉強として聴いたり、レコードを買ったりしていたけれど、ソウルはストレートに聴いて入ってきていた。ただし、そこからアーティストを調べたりレコードを買ったりまではしなかった」と後藤さん。ジャズとソウルの捉え方に関しての興味深い発言だった。

最近はこのお店が音がいいということで、「ヒップ・ホップ」などのリリース・イヴェントなどにも使われることがあるそうだ。

ちなみに、担当の坂本ディレクターによると、10タイトルで一番売れているのは、ウィル・リーのアルバム、一番売れていないのはリオ・シドランだそう。

話は尽きないが、イヴェント終了後のアフターでは吉成さんにたっぷりサンフランシスコ話を聞いた。

この辺りはまた後日。

（この項続く予定）

■「ゴー・ジャズ・トーク＆リスニング・イヴェント」2015年7月25日(土)、四谷いーぐる

司会　行方均
パネリスト　後藤雅洋　（いーぐる店主）
吉成伸幸　（ゴー・ジャズ創設者）
吉岡正晴　（音楽ジャーナリスト）
坂本涼子　（ディスクユニオン、レーベル担当）

■セットリスト　Setlist @ Jazz Cafe Eagle, Yotsuya, July 25, 2015 (Saturday)

Selected by Goto Masahiro, Yoshioka Masaharu, Yoshinari Nobuyuki, Namekata Hitoshi, Sakamoto Ryouko

Talk show started 15:35

01. Solar – Ben Sidran (後藤選曲)
02.　Whatever Happened To The Blues – Phil Upchurch （吉岡選曲）
03.　Moondance – Georgie Fame (吉成選曲)
04. Home – Lio Sidran　（坂本選曲）
05.　King Of The World (Part 1 & 2) – Ricky Peterson (行方選曲)
06.　Yeh Yeh – Georgie Fame (後藤選曲)
07.　What You Won’t Do For Love – Ricky Peterson (吉岡選曲)
08.　The Tide Keeps Lifting Me – Phil Upchurch (吉成選曲)
09.　Mr. Fone Bone – Bob Malach (坂本選曲)
10.　Piano Players – Ben Sidran (行方選曲)
11.　One Voice – Bob Malach (後藤選曲)
12.　Life’s A Lesson – Ben Sidran (吉成選曲)　From the Album “Life’s A Lesson”
13. (DVD) It Should Have Been Me – Go Jazz All Stars

Talk show ended 18:38

■5人が10枚のゴー・ジャズアルバムから選んだ5曲。各人それぞれ勝手に選んだのですが、なんと「ムーンダンス」を3人が選んでいます。アルバムの○数字は下記アルバムリストを参照してください。

～GO JAZZ@いーぐる（2015/7/25）の5人が選ぶ～
GO JAZZ はこれを聴け!!! 　

ジャズの巨人・後藤雅洋の5曲

★ソラー/ベン・シドラン（③より）
★バップ・シティ/ベン・シドラン（③より）
★オールド・フォークス/ベン・シドラン（②より）
★ワン・ヴォイス/ボビー・マラック（⑤より）
★イェ・イェ/ジョージィ・フェイム（⑥より）

ソウルの鉄人・吉岡正晴の5曲（順不同）

★ミスター・Ｐズ・シャッフル/ベン・シドラン（④より）
★ホワットエヴァー・ハプンド・トゥ・ザ・ブルース/フィル・アップチャーチ（⑧より）
★風のシルエット/リッキー・ピーターソン（⑦より）
★キッシング・マイ・ラヴ/ウィル・リー（⑨より）
★ムーンダンス/ジョージィ・フェイム（⑥より）

ロックの超人・吉成伸幸の5曲（順不同）

★クール・パラダイス/ベン・シドラン（①より）
★ムーンダンス/ジョージィ・フェイム（⑥より）
★ザ・タイド・キープス・リフティング・ミー/フィル・アップチャーチ（⑧より）
★アイ・キャント・シンク/リッキー・ピーターソン（⑦より）
★ドリフティン/ウィル・リー（⑨より）

GO JAZZ最新CDコレクション制作担当者・坂本涼子の5曲（順不同）+1曲

★ホーム/リオ・シドラン（➉より）
★イェ・イェ/ジョージィ・フェイム（⑥より）
★ムーンダンス/ジョージィ・フェイム（⑥より）
★ミスター・フォーン・ボーン/ボビー・マラック（⑤より）
★デザイア・オブ・ラヴ（①より）
（次点）
★クール・パラダイス/ベン・シドラン（①より）

本日の進行担当者・行方均の5曲（録音順）+1

★ピアノ・プレイヤーズ/ベン・シドラン（②より）
★クール・パラダイス/ベン・シドラン（①より）
★イェ・イェ/ジョージィ・フェイム（⑥より）
★キング・オブ・ザ・ワールド（パート1&2）/リッキー・ピーターソン（⑦より）
★ドリフティン/ウィル・リー（⑨より）
（別格）
★ナルディス/ベン・シドラン（③より）

レーベル創立25周年
GO JAZZ最新CDコレクション
全10タイトル・各1,852円+税・絶賛発売中

①ベン・シドラン『クール・パラダイス』（SCOL-4001）1990年作品
②ベン・シドラン『ニュー・ウェイヴ・バップ』（SCOL-4002）1981年作品
③ベン・シドラン『バップ・シティ』（SCOL-4003）1983年作品
④ベン・シドラン『ミスター・Ｐズ・シャッフル』（SCOL-4004）1996年作品
⑤ボビー・マラック『ムード・スウィング』（SCOL-4005）1990年作品
⑥ジョージィ・フェイム『クール・キャット・ブルース』（SCOL-4006）1991年作品
⑦リッキー・ピーターソン『スマイル・ブルー』（SCOL-4007）1991年作品
⑧フィル・アップチャーチ『ブルースのすべて』（SCOL-4008）1992年作品
⑨ウィル・リー『OH!』（SCOL-4009）1994年作品
⑩リオ・シドラン『エル・シド』（SCOL-4010）1999年作品

10枚のアルバム、①から⑩まで順に。