◎ディー・ディー・ブリッジウォーター:彼女はジャズ、ソウル、ミューズ | 吉岡正晴のソウル・サーチン

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◎ディー・ディー・ブリッジウォーター:彼女はジャズ、ソウル、ミューズ

【Dee Dee Bridgewater : She’s Jazz, She’s Soul, And She’s Muse】

ミューズ。

この日は実にテンションの高いディー・ディー・ブリッジウォーターだった。そのためか、ライヴ・パフォーマンスは1時間57分に及んだ。通常の1時間半を相当超えた。ブルーノートでこんな長いショーはなかなかない。終演は11時半を回り、終電で家路を急ぐ人も多かったに違いない。

彼女の場合、ジャズ、ソウル、ブルーズ、ゴスペル、ありとあらゆるブラック・ミュージックの歴史をすべて体に内包し、それを惜しげもなく、外に出す。音楽のソウルそのものを輝きとともに放つ。彼女自身がジャズであり、彼女自身がソウルであり、彼女自身が音楽の女神、ミューズだ。音楽スタイルはソウルであっても、ソウルを感じない音楽もあるが、ディー・ディーの場合、音楽スタイルはソウルでなくても、ものすごく強烈にソウルを感じる。これがおもしろい。

彼女は文字通り体を楽器にし、体すべてを使って音楽を表現する。喉はただの声帯だ。声の発信源ではあるが、音は体を使い共鳴し、体全体からメロディーが溢れ出る。これがすごい。

この表現力をもって瞬く間にディー・ディーの世界を作り出す。『アナと雪の女王』の女王エルサが触れるものがすべて氷になってしまうように、ディー・ディーが声を発するとそこは瞬時にディー・ディーの色の世界に変貌する。

彼女もまた事前にセットリストを作らない。ステージに上がり、その日のその瞬間の気分で、歌う曲を決め、ミュージシャンに指示する。ミュージシャンも数多くのレパートリーをすべて把握していなければならない。高度な技術が要求される。そして、各曲では、各ミュージシャンに十分なソロ・パートが与えられる。そのソロの間、他のミュージシャン、そしてディー・ディーは、じっとそのソロを奏でるミュージシャンを見つめる。時にリズムを取りながら。グループ全体に漂う強固なミュージシャンシップだ。だから一曲が長くなる。

1曲目ガーシュインの「フォギー・デイ」では、存分にスキャットを聞かせ、2曲目「ブルー・モンク」では、ディー・ディーの口トランペットも登場。後半には、彼女自身が演じていたミュージカル『ビリー・ホリディ物語』から「グッド・モーニング・ハートエイク」を。さらに後半には、スティーヴィー・ワンダーの「リヴィング・フォー・ザ・シティー」、マイケル・ジャクソンの『オフ・ザ・ウォール』収録の「アイ・キャント・ヘルプ・イット」まで披露。途中には、客からの掛け声でアリーサの「リスペクト」を数小節ほぼアカペラで歌い喝采を浴びた。

実に自由度の高いライヴ・パフォーマンスだ。もちろんこうした自由度の高いパフォーマンスは、しっかりとした基礎と経験に裏打ちされているからこそだ。これだと、熱心なディー・ディー・ファンは毎回セットリストが変るとなれば、毎日行かないと気が気ではなくなるだろう。

歌ももちろんだが、気取りのないストレートな快活な明るい話好きのおばちゃんというキャラが実に愛される。

本編最後では僕が前回見た2008年のショーでもやっていたジーン・マクダニエルズの「コンペアード・トゥ・ホワット」。1960年代の曲だが、この曲の持つメッセージが2010年代の今でも有効であることをディー・ディーは憂いていた。

ライヴ後、ディー・ディー本人は客席にでてきてファンにサインのサーヴィスや写真も撮っていた。

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ご挨拶。

その後、少しだけ楽屋におじゃますると、音楽評論家の安倍寧先生がいらっしゃった。正式に名刺を交換してご挨拶。実は僕はいつも安倍先生のブログ(アメブロです)を拝見していたので、その旨伝えると、なんと安倍先生もこちらのブログをよくごらんになっているそうで、恐縮した。

こちらが安倍先生のブログです
http://ameblo.jp/abe-yasushi/

安倍先生は宝塚、ミュージカル、さらに映画にも大変お強く、その方面の記事も多数。読み応えたっぷりです。

■過去記事

ディー・ディー・ブリッジウォーター、TOKU、トミーが飛び入り
2008年12月08日(月)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-10175141917.html

May 17, 2005
Share The Love: Declares Dee Dee Bridgewater
http://blog.soulsearchin.com/archives/000267.html

2003/02/27 (Thu)
Saga of Dee Dee Bridgewater continues
http://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200302/diary20030227.html

■ セットリスト 2014年5月2日(金)ブルーノート東京
Setlist : Dee Dee Bridgewater @ Bluenote Tokyo

show started 21:37
00. Intro
01. A Foggy Day [Girshwin]
02. Blue Monk [Thelonious Monk / Abbey Lincoln (lyrics)]
03. The Music Is In The Magic
04. Good Morning Heartache [Billie Holiday]
05. One Fine Thing
06. Livin’ For The City [Stevie Wonder]
07. Save Your Love For Me [Buddy Johnson]
08. A riff of Respect [Aretha Franklin]
09. I Can’t Help It [Stevie Wonder / Michael Jackson]
10. Compared To What [Gene McDaniels]
Show ended 23:34 (117)

(2014年05月02日金曜、ブルーノート東京、ディー・ディー・ブリッジウォーター・ライヴ)

ENT>MUSIC>LIVE>Bridgewater, Dee Dee

■ ディー・ディー・ブリッジウォーター 『アフロ・ブルー』(この日はやらなかったが・・・)

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■『レッド・アース』(「コンペアード・トゥ・ワット)収録)

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■ 「グッド・モーニング・ハートエイク」など収録

Eleanora Fagan 1915-1959: To Billie With Love From
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