$安倍寧オフィシャルブログ「好奇心をポケットに入れて」Powered by Ameba




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2017年01月27日(金) 12時38分35秒

8月開幕のミュージカル『アナ雪』への期待と不安

テーマ:ブログ

   超ヒットとなった映画『アナと雪の女王』(2013)のライヴ・ミュージカル化がいよいよ具体的に動き出した。プレヴュウ公演はデンヴァーでおこなわれる(8月17日~10月1日)。ブロードウェイ入りは18年3月を予定している。

 

 映画は全世界で12億7400万ドル、日本だけで254億8000万円の興行収入を上げた。これほどのソフトはディズニーだってそう手にし得るわけではない。強力なコンテンツの再利用、再々利用はディズニーのお家芸だけに目が離せない。今回は会長兼CEOボブ・アイガー自ら陣頭指揮に当たっている。

 

 実はディズニー・カリフォルニア・アドベンチャーで、すでに去年5月からテーマパーク向きにアレンジされたショウが上演され、人気を集めているという。

 

 映画『アナ雪』の大当たりはクリエイティヴ・チームの総合力の賜物だが、そのなかにあって、ソングライター・カップル、ロバート・ロペス、クリスティン・アンダーソン=ロペスの貢献度がひときわ輝いて見える。「レット・イット・ゴー」の世界的ヒットがなによりその事実を証明していないか。

 

 「映画は7.5曲しかないの。舞台用にもう23曲も書いたわ。材料は沢山あるの。映画で皆さんが知っているモチーフも使っているわ。でもすべての役柄をより深く掘り下げているのよ」と妻クリスティンが語れば、夫ロバートは、「肝心な点は、映画で受けた場面をどうしたら舞台に移し替えられ、観客に同じような迫力を感じてもらえるかだな」 とつけ加えている(「PLAYBILL」ウエブサイト)。

 

 もともとロバートのほうは〝本籍〟ブロードウェイで、『アヴェニューQ』(03)『ブック・オブ・モルモン』(11)と2回もトニー賞ベスト・ミュージカルを受賞している強者だ。舞台で受けるツボをはずすわけがない。

 

 ブロードウェイの劇場は1927年開場のセント・ジェームス劇場が押さえられている。『回転木馬』『王様と私』が初演された由緒ある劇場である。ただ舞台の奥行が足りないため、近く大掛かりな改造工事に入るようだ。劇場主にとっては、ことし20周年を迎える『ライオンキング』並の、あるいはそれを超えるロングランを期待出来るので、それくらいの出費はなんでもないのだろう。

 

 不安はいろいろある。視覚的にあの雪と氷に閉ざされた世界をどう造形するのか。演出家のマイケル・グランデージは科白劇では信頼出来るが、ミュージカルはさて?

 

 とは言え、ことしの世界エンタメ界の目玉のひとつであること間違いなし。

 

  (オリジナル コンフィデンス  2017 1/30号 コラムBIRD’S EYEより転載)

 

 

                             『アナ雪』は映画もDVDも超ヒットだった。

 

                                「アナと雪の女王」

                MovieNEX発売中、デジタル配信中 ©2017 Disney

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2016年12月28日(水) 13時26分06秒

ブロードウェイ・ミュージカルと歌舞伎?のハイブリッド 

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  『コメディ・トゥナイト~ローマで起こったおかしな出来事《江戸版》~』

 

 

  企画の発想そのものからして大胆で奇抜だ、日本ミュージカル史始まって以来の、もっとも破天荒な舞台になるのではないか。『コメディ・トゥナイト~ローマで起こったおかしな出来事《江戸版》~』(宮本亜門演出)が上演されると聞いて、とっさにそう思った。

 

 下敷きにしているのは、1962年のブロードウェイ・ミュージカル『A Funny Thing Happened On The Way To Forum』。日本では映画公開時の題名『ローマで起こった奇妙な出来事』  (66、DVDあり)で知られる。と言っても知っているのは一部のミュージカル通だけかもしれないけれど。

 

 もとネタは古代ローマを背景にしたコメディである。今回の舞台では、大筋、登場人物をそのまま残し、背景のみ徳川時代のお江戸に移し替えるという。

 

 主役、布袋屋成田屋の丁稚寅次を演じるのは、歌舞伎界の人気者でミュージカル初出演の片岡愛之助と来た。この役は、原作のミュージカルでは金持ち一家の奴隷スードラスである。

 

 物語は、成田屋の跡取り息子比呂(内博貴)が隣りの女郎屋の新入りお美津(平野綾)にひと目惚れしたことから、いっきょに転がり始める。比呂は寅次に恋の成就のためにひと肌脱いでくれと頼み、寅次はその報酬として丁稚の身分からの〝早期退職〟を要求する。お美津の見受け人、武士の荒尾正蔵(鈴木壮麻、上山竜治)が黙って見ているわけがない。見どころは、次々と起こる行き違い、災難を相手に防戦これ努める寅次の奮闘ぶりになるのでは?

 

 私が映画、ブロードウェイ再演(96)を見た限りではスードラス役者(前者ではゼロ・モステル、後者ではネイサン・レイン)の手八丁口八丁の芸達者ぶりが、爆笑、哄笑を誘う要となっていた。

 

 今回のブロードウェイ・ミュージカルと歌舞伎?のハイブリッド版では、その成否は一に掛かって愛之助のコメディ・センスにあると思われる。

 

 もとネタのミュージカルを作詞作曲したスティーヴン・ソンドハイムは、ブロードウェイのプロ、観客双方から一身にリスペクトを集める、文字通りの巨匠である。『ウエストサイド物語』の作詞、『スウィーニー・トッド』『イン・トゥ・ザ・ウッズ』などの作詞作曲で広く知られる。その作風は作詞、作曲を問わず知的かつ都会的で時には高踏的と言われる。しかし、この作品に関する限りじゅうぶんお洒落ではあるものの、なぜか頭の痛くなるような曲調はひとかけらもない。オープニングの「Comedy Tonight」から精いっぱい浮き浮きした雰囲気を盛り上げてくれる。

 

 若き恋人たちが相思相愛で歌う「Lovely」は、題名通りの典型的なラヴ・バラードで観客の胸をとろけさせずにおかないし、スードラス(寅次)らが歌う「Everybody Ought to Have A Maid」はコミック・ソングならではの軽快さに満ちあふれている。

 

 ところで、ソンドハイムはくわしい自註付き全作品集「Finishing The Hat」を出しているが、そのなかでこの作品は「ミュージカルではない、ファルスだ」と断わっている。つまり笑劇、どたばた喜劇なんだと。そして「ファルスは急行、ミュージカルは各駅停車だ」とも。急行は蒸気を溜め込んで一気に走り出す。それと同じように、このミュージカルではスピードを上げる前、すなわち第1幕前半に主な歌を持って来た、でないと流れと速度を邪魔することになるというのだ。亜門さん、よろしゅうお頼もうします。

 

                ({コモ・レ・バ?} Vol.30 Winter 2017より転載)

 

 

2016年12月22日(木) 12時22分12秒

歌と笑いとペーソスと、ライヴで見せた堺正章の真骨頂

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  ことし一年の憂さを吹き飛ばしてくれるようなとても愉快なワンマン・ショウを見た。Blue Note Tokyoでの堺正章ライヴである(12月8日 1stステージ所見)。絶妙なトーク、肩の力の抜けた歌いぶり。連発するジョークに下品さがないのがいい。70歳ならではの老練ぶりと年齢を感じさせない溌剌さが、なんともいいバランスでブレンドされている。

 

  のっけから淀みない話術が冴え渡る。芸能キャリアの原点、16歳で参加したグループサウンズ田邊昭知とスパイダース当時の話が実におかしい。銀座、新宿などの音楽喫茶が主な仕事場だったが、客がひとりだったことも。

 

 「突然、場内が真っ暗になった。店のマネジャーが電気代がもったいないって」

 

  スパイダース時代からの僚友で、目下病気療養中のかまやつひろしの姿を見つけ、舞台に引き上げる。そして、かまやつ作曲の「サマー・ガール」をデュエットする。当の作曲者にビーチ・ボーイズとの類似点をやんわり問い質したりするのだが、年季の入った芸の力ですべてをジョークに昇華させてしまう。

 

 「今夜は10曲ほど歌わせていただきます。値段をつければ10曲で3千円、まあ1曲300円くらいのもので……」

 

  冗談の先は自分にも向けられる。ほどよい自虐性がまた笑いを呼ぶ。

 

  堺の強味は、スパイダース時代もソロになってからも自前のヒット曲を多数持っていることだ。そのキャリアなくしてワンマン・ショウ・ライヴはあり得ない。

 

  この夜、堺は一曲々々に万感の思いを込めて歌った。「あの時君は若かった」「夕陽が泣いている」「街の灯り」「さらば恋人」と続く。ただ佳曲と信じる「忘れもの」がヒットしなかったことが納得出来ないらしい。

 

 お喋りのなかで自らの人生を振り返り、「五勝四敗一引き分け」と採点していたのも、含蓄深いひとことだなと感心させられた。「一引き分け」を入れたところになんとも言えない微妙さがある。この自己採点は、おごらず高ぶらず、己に謙虚な堺の人柄そのものだと思う。

 

 特筆したいのは笑いの蔭に時折ちらりと見え隠れするペーソスだ。気がつく人は気がつくスパイスになっている。

 

 思い出ひとつ。スパイダースが初めて有楽町・日劇の『ウエスタン・カーニバル』(1966年5月5~12日)に出演したとき、堺と井上順が披露したコミック・アクトが忘れられない。バックの演奏に合わせてフェンシングの真似事をするだけなのだが、間合がいいのか実におかしかった。天性の喜劇役者の萌芽はすでにあのときあったのでは?努力の人でもあるマチャアキに改めて乾盃!

 

(オリジナル コンフィデンス  2016 12/26号 コラムBIRD’S EYEより転載)

 

当日のメニューより。

 

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