$安倍寧オフィシャルブログ「好奇心をポケットに入れて」Powered by Ameba




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2016年09月30日(金) 15時43分26秒

蔭の立て役者は作詞作曲のシンディ・ローパー

テーマ:ブログ

前回、UPした朝日新聞広告特集の原稿とは別に『キンキーブーツ』についてもう一本書きました。併せてお読みいただければ幸いです。

 

 

厳粛かつ今日的な主題が熱い音楽とダンスで際立つ

 

ミュージカルらしい陽気な楽しさが、小気味よい音楽と溌剌としたダンスともに随所ではじける。ドラァグ・クイーン、ローラの率いるゲイ・クラブとミラノのファッション・ショウの場面では、思わず腰が椅子から浮いてしまう。

 

ブロードウェイでの公演は、2013年4月4日に開幕し、もちろん現在もロングラン中だ。ことし7~8月には東京、大阪で日本人キャストによる舞台もあった。

 

日本版では靴工場の若き後継ぎチャーリーを小池徹平が、靴工場再建に一肌脱ぐゲイの女王ローラを三浦春馬が演じた。三浦がミュージカル慣れしている小池に引けをとらず、大奮闘しているのに目を見張った。

 

そして10~11月には、いよいよアメリカ・キャストによるツアー・カンパニーの公演である。私自身、日本版を結構楽しんだだけに、その残像が消えないうちにアメリカ版が見られるのはとてもうれしい。ふたつのヴァージョンを比較対照出来るだろうから。でもちょっと怖い気もする。

 

題名の『キンキーブーツ』は、ドラァグ・クイーン好みの赤いロング・ブーツを意味する。見た目はほっそりと超スマートに、でも男性を支えるのだから頑丈に作らなくてはならない。

 

生活環境も人生観も異るチャーリーとローラの協同作業はうまく行くのか?そのプロセスに見え隠れするのは、どうしたら立ち場の違う人間同士の間に友愛の情が生まれるのか、という厳粛かつ今日的な主題である。

 

世界のポップ・アイコンが放つ粒ぞろいの楽曲

 

このヒット・ミュージカルの最大の主役は、実は舞台に登場しない、世界の〝ポップ・アイコン〟シンディ・ローパーではなかろうか。ストーリーに寄り添いつつ、一曲々々粒だった楽曲を書き上げた彼女の才能に改めて舌を巻く。そう、この作品の作詞作曲はシンディなんです。達者なもので、今回がブロードウェイ処女作だなんて、とても思えない。

 

シンディの曲作りは、親しみ、気取りのなさを身上としている。一見、自由奔放。すべては、長年、彼女が培い磨き上げて来たポップス感覚のなせる業にちがいない。

 

ミュージカルの作り手たちがよく使う一種の隠語?に〝I wantsongというのがある。作品の序盤で、主人公がこれからの人生でなにを望んでいるかを端的に歌い上げるナンバーのことだ。この手の曲のあるなしが、作品全体の出来不出来を多分に左右することになるという。

 

『キンキーブーツ』では「Step One」がそれに当たる。父の死とともに工場は閉鎖すべきか散々迷っていたチャーリーだが、キンキーブーツ開発に目覚め、断固たる決意を歌に託す。

 

♬昔の僕はゼロだった/でも今、はっきり感じとれる/ヒーローになれるかもしれないって/新しいヒールを作り出してね……

 

見事な〝I wantsongである。

ローラが強かった父からの訣別を宣言する「Not My Fathers Son」も、これぞ魂の叫びと言える絶唱で捨て難い。

 

トニー賞ベスト・オリジナル楽曲賞に輝いてなんの不思議もない。

 

生の『キンキーブーツ』を観劇すれば、蔭の立て役者シンディ・ローパーのオーラをたっぷり浴びることだって出来るのでは……。

 

 

(豊かな無駄時間を楽しむ大人のコミュニティ・マガジン {コモ・レ・バ?} Vol.29 Autumn 2016 より転載)

 

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2016年09月27日(火) 18時45分59秒

来日するブロードウェイ・ミュージカル『キンキーブーツ』

テーマ:ブログ

 

さまざまなあつれきを乗り越え全員の力で作り上げたキンキーブーツを掲げる。完成の喜びと、お互いが分かり合えたうれしさを高らかに歌いあげる。

 

    才能の衝突越え 一流品

 

 ごっつい脛(すね)をスリムに見せる。丈は膝より上。ヒールは細く高く。それでいて履くのはドラァグクイーン、つまり男性だから、頑丈じゃなくちゃいけない。

 

 そんな長靴、すなわちキンキーブーツを完成させるために、イギリスのとある町工場の職人たちは必死の作業を続ける。その光景から私は、ミュージカル『キンキーブーツ』の作り手たちの、見えざる努力に思いを馳せずにいられなかった。

 

 集まったスタッフの顔ぶれが凄い。脚本ハーヴェイ・ファイアスタイン(『ラ・カージュ・オ・フォール』他)、演出・振付ジェリー・ミッチェル(『ヘアスプレー』他)。ふたりともミュージカルの表裏を知り尽くしている。

 

 そして音楽・作詞は80年代から世界のポップス界を牽引(けんいん)し続けて来たシンディ・ローパー。『三文オペラ』で1回だけブロードウェイの舞台に立ったことがある。しかし、書き手としては今回が初挑戦だ。

 

 これだけの才能がそろえば異る意思がぶつかり合い、あわや空中分解という危機があったのでは?いや、それを乗り超えたからこそ、楽しさ満載、芝居と音楽とダンスがきちっと噛み合ったミュージカルの一流品が生まれたのだろう。

 

 一方、『キンキーブーツ』の劇中ではさまざまな衝突が次々に起こり、事態は悪化の一途をたどる。若輩チャーリーは父の急死で社長の座に就いたものの、社員と気持が通じ合わない。新商品キンキーブーツ開発のため、アドバイザーになってもらったドラァグクイーン、ローラともズレが生じる。ローラと社員もなにかと反発し合う。

 

 目指すミラノ見本市でのキンキーブーツの披露は実現出来るのか。

 

 人間ひとりひとり、生まれ育ちも、ものの考え方もすべて異る。性意識だって一様ではない。あらゆる点で違いを持った人間同士が、どうしたら理解し合い、愛を深めることが出来るのか。私たちは、作品のそこここにこだまするローラの声に耳を澄まさなければなるまい。ローラは叫んでいる。「そのためにはどんな相手に対しても偏見を捨てることよ」と。

 

 原作の映画からミュージカルに受け継がれているこのメッセージを、楽天主義と笑い飛ばす前にもういちどしっかり噛みしめたい。

 

    ポップスと人間味 

 

 『キンキーブーツ』には物語上の設定で、そのままショウ場面に移行出来る個所がふたつある。ローラ率いる一座が出演しているロンドンのクラブ、それとラストのミラノのファッション・ショウである。いずれもきらびやかなシーンに仕上がっていて目の保養になる。ドラァグクイーンたちのハイヒールでバック転にはびっくりさせられた。

 

 楽曲の書き手にシンディ・ローパーを推したのは、脚本のファイアスタインだと聞いているが、この人選がずばりはまった。彼女の明るいポップス感覚と物語にあふれる人間味とが、それぞれの曲のなかで見事に溶け合い一体化している。曲の風格とともに詞の軽妙さが捨て難い。

 

 ローパーのファンには、本人が出ないから見に行かないという人がいると聞く。〝曲は人なり〟なのにもったいない。

 

                                   (9月27日付け朝日新聞広告特集より転載)
 

                

ローラ率いるドラァグクイーンたちのショウが華やかで楽しい。
ミュージカルの見せ場のひとつです。

 

 

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2016年09月23日(金) 16時54分03秒

只者じゃない!バーブラ・ストライサンド

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 アルバム第1曲「アット・ザ・バレエ」からバーブラの圧倒的な歌唱、贅沢な共演メンバー、巧妙、精緻な構成に魅せられる。耳で歌と科白を聴いているだけなのに、舞台の(あるいは映画の)一場面が目の前に立ち現われるかのよう。一分の隙もないパフォーマンス、しかし息詰まるということなく楽しめる。

 

 今回で36枚目のスタジオ録音アルバムになるという『アンコール』(ソニー・ミュージックエンタテインメント)には、「ムーヴィー・パートナーズ・シング・ブロードウェイ」という副題が付いている。バーブラ・ストライサンドの気持を推し量るなら、「ハリウッドの仲間たちとブロードウェイの名曲を歌ってみたの」といった意味合いか。

 

 「アット・ザ・バレエ」では演出家ザックをブラッドリー・クーパー、オーディション仲間のビビ、マギーをそれぞれデイジー・リドリー、アン・ハサウェイが受け持っている。本人が歌い演じるのは薹(とう)の立ったダンサー、シーラである。

 

 シーラの設定は多分アラサーか。1942年生まれのバーブラ、当年とって74歳。本来ならとり組める役柄ではないが、バーブラは見事シーラになり切っている。超一流歌手でもあるが、超一流女優でもあることの証明である。

 

 メリッサ・マッカーシーとデュエットする「あなたに出来ることなら何でも」(『アニーよ銃をとれ』より)が、これまた聴き応えがある。元唄はワイルド・ウエスト・ショウ(カウボーイの曲芸ショウ)で少女が超ヴェテランの男と速撃ち、曲撃ちを競う内容だが、ここではハリウッド女優同士の公私にわたる競い合いに書き替えてある。

 

 アメリカ・ショウ・ビジネスはおとなの社会だなあ、それにくらべてわが日本はと思わず微苦笑が浮ぶ。

 

 他の共演メンバーも豪華を極める。ヒュー・ジャックマン、アントニオ・バンデラス、ジェイミー・フォックスら。ただし曲はよく知られているものとは限らない。上演されることのなかった『スマイル』のなかの「エニー・モーメント・ナウ」(共演ジャックマン)とか。

 

 この曲の作曲者は先の「アット・ザ・バレエ」のマーヴィン・ハムリッシュである。マーヴィンは、彼女が64年、『ファニー・ガール』で初めてブロードウェイ・ミュージカルの主役を務めたとき、稽古ピアノだった。以来、ふたりは同志として歩んで来たという。2012年、この世を去ったハムリッシュに捧げたナンバーという意味合いも見え隠れする。

 

 今、ブロードウェイとハリウッドの間に架け橋を渡すという大仕事が出来るのは、ストライサンドしかいない。

 

(オリジナル コンフィデンス  2016 9/26号 コラムBIRDS EYEより転載)

 

   

 

 

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