◇リー・ダニエルズ監督(映画『大統領の執事の涙(ザ・バトラー)』の話 | 吉岡正晴のソウル・サーチン

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◇リー・ダニエルズ監督(映画『大統領の執事の涙(ザ・バトラー)』の話

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涙。

2月18日オンエアした『大統領の執事の涙(ザ・バトラー)』のリー・ダニエルズ監督のインタヴュー、記者会見。なかなかおもしろかったのだが、オンエアでも大量にこぼれている。いくつか思いつくままに、おもしろかった話などを。

リー・ダニエルズは映画について大学かなにかで若い学生に講義をして教えてるという。そんな中で、映画のタイトルには、絶対に自分の名前をつけてはいけない、「タランティーノの~~」とか、のようにと教えていた。

だが今回の『The Butler』は、当初、『The Butler』だけで企画が進んでいたが、この言葉の権利を大手のスタジオが持っていて使えなくなり、窮余の策として、『Lee Daniels’ The Butler』となった、という。結果、生徒に教えていた「自分の名前をつけてはいけない」という教えとまっこうから対することになってしまった。

そして、日本にやってきてこの映画のタイトル(邦題)が、「Tears of the Butler of President(大統領の執事の涙)」となっていることを知り、「これだ!」と思ったという。ただこれだと長いから、「Tears of the Butler」あたりでもよかったんじゃないか、と思ったそうだ。ただ、僕個人は邦題に「涙」はなくてもいいと思う。なんか安っぽくなるので。ただそのほうが一般受けはするのかもしれない。難しいところ。

ブラックスプロイテーション。

いわゆる本作も広義のブラック映画に入るが、そのあたりをどう思っているか、と彼に尋ねると、逆に「君はどう思うんだ」と質問された。彼は、シドニー・ポワチエ時代の映画、1970年代初頭にあったいわゆる「ブラックスポロイテーション映画」の時代、スパイク・リーから、以降の映画、そして、現在、そのどこに自分は入ると思うか、どのジャンルに入ると思うか、と尋ねてきた。いや、それこそ、こちらが当事者のあなたに聞きたいことなのだが。(笑) 

すると彼はその後、こう答えた。「僕は黒人でもあり、ヨーロピアンでもあり(ヨーロッパの血も入っているらしい)、ホモでもあり(ホモ、ゲイであることを公言している)、いろいろな要素を持っている。だから自分が作る映画が『ブラック映画』かどうかはわからない。いろいろな要素を持った自分、さまざまなカルチャー(文化)を体言して、それらの経験を踏まえて今の僕があり、それらの経験がすべて映画の中に現れている」 

つまり、彼の中には特に「ブラック映画」を作っているという意識はないようだ。

もう一本の人種差別を描く問題作『それでも夜は明ける(12 Years A Slave)』も公開を控えている。この作品も、「ソウル・サーチン・レイディオ」で詳しくご紹介する予定だ。

ちょうど、さっき会ったネイサン・イーストともこの話をして大変興味深かった。

Lee Daniels' the Butler
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MOVIE>The Butler
ARTIST>Daniels, Lee