◎ Nao Yoshioka ナオ・ヨシオカ・ライヴ~丁寧にプロデュースされたソウル系シンガー | 吉岡正晴のソウル・サーチン

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【Nao Yoshioka Live: Well Produced Soul Singer With Strong Determination 】

デビュー。

ライヴを見てから書こうと思ってなかなか書けなかったナオ・ヨシオカ・リリース・ライヴについてやっとまとめた。

東京のソウル系インディ・レーベル、スイート・ソウル・レコーズが満を持してデビューさせるシンガー、ナオ・ヨシオカのデビュー・アルバム『ザ・ライト』(2013年12月4日発売)のリリース・ライヴが2013年12月6日(金)代官山のライヴハウス「ループ」で行われた。

一度渋谷のカフェで行われたキーボードと彼女だけの簡単なショーケース・ライヴを見たが、バンド形式のものは今回初めて見た。歌がうまいのはCDやそのショーケースで確認していたが、こうしたバンド形式のライヴでも臆することなく堂々と歌っていて好感を持った。彼女は言葉を変にこねくりまわしたりして「日本語英語」みたいにせず、ストレートに素直に発音するのでいいディクション(発音・発声)を聞かせる。これはポイント高い。

客層も圧倒的に若いファンが多く、会場は立錐の余地もないほど超満員。それまでにリリースに向けてこまめにラジオゲスト出演やインターネットなどでの告知、CDショップでの展開を繰り広げた成果のようだ。「ソウル・サーチン・レイディオ」でも、このライヴ前までにラジオID付きで3回ほどかけている。(IDありがとうございます)

ライヴを見て一番感じたのは、彼女が努力と根性の人なのかな、ということ。全曲英語曲でしっかり歌う。普通の人が聞けばとても日本人とは思えないだろう。本人は英語はネイティヴではないのに、これだけ綺麗に英語の歌が歌えるのは耳がいい証拠だ。そして、その歌声の中に芯の強さがあるような気がする。加えて、何よりCDがひじょうに丁寧に録音され、パッケージ、露出を含めたアーティスト全体が実に入念にプロデュースされている印象を強く受けた。これはレコード会社が社を上げて集中しプロモーションしているのがうまく効果を出しているのだろう。

発掘。

会場で、ちょうど彼女の発掘者で日本で活躍するエンジニアのニラジに話を聞いた。それによるとこうだ。2012年初め頃、渋谷かどこかのライヴハウス(ニラジの記憶ではプラグか)で行われた若手シンガー、ミュージシャンが集まるジャム・セッションで大阪から出てきたばかりの彼女が歌うのを見た。(たぶん、僕はその場にはいなかったと思う) 確か、エタ・ジェームスの「アット・ラスト」(ビヨンセもカヴァー)だったか。彼女が歌った最初の1音で『これはすごい』と思い、すぐにアイフォンで動画を撮り始めた。歌い終わって彼女の元に行き、連絡先を聞くと2-3日前にやってきたばかりで東京で歌ったのは初めてだったという。CDを出すにはそれなりのレコード会社や組織がないとできないので、この動画をスイート・ソウル・レコーズの山内(やまのうち)社長に見せて、やりましょうよと誘い、レコーディングが決まった、という。

僕は2012年12月、シングル盤「メイク・ザット・チェンジ」のイラスト・ジャケット付きサンプルをブルース・アレイでもらった。本人からもらったのかと思っていたが、本人は覚えていないというので、おそらくスイート・ソウルの誰かからもらったのかもしれない。その盤で名前を覚えた。なにしろ、ヨシオカなので。(笑) ひょっとして本人に会ったのはその後の澤田かおりさんのライヴ会場だったかもしれない。

ちなみにニラジはアメリカ生まれ、神戸育ちの、ここ数年、洋楽的なJポップ作品を多数てがけているエンジニア。洋楽のセンスと日本の音楽業界の特徴もよく知っている人物だ。何より驚くのが、かのフィル・ラモーンの最後の弟子的存在だということ。フィルのおかげでバークリーに奨学金で通えたという。あちこちのライヴ会場でよく出会うので、かなりマメにいろいろとチェックしている人物でもある。

プロジェクト。

さて、山内さんはこのナオ・ヨシオカを売り出すにあたり、「メイク・ザ・チェンジ」プロジェクトを立ち上げることを決める。これまでスイート・ソウル・レコーズがライセンスなどをてがけてきた海外のアーティストとナオを組ませ、海外のアーティストが日本に来たときは、ナオとステージを一緒にやらせ、彼女が海外に行ったときにそのアーティストと海外のステージで共演させる、といったことを狙い、実際いくつか実現している。先の渋谷のカフェでのショーケースはニューヨークのソウル・シンガー、ヘストンとのコラボの形だった。

実際曲もそうした海外のアーティストと一緒に作ったりしてデビュー作にいれた。山内さんは自分自身がこれまで数年やってきた音楽業界での経験をすべてつぎ込んだ。自分の音楽人生の全精力を込めて作った自信作と言うだけあって、スイート・ソウル・レコーズからの作品の中では一番の出来になった。

ライヴでは、ジェニファー・ホリデイ、ハドソンらが歌う『ドリームガールズ』の「アイ・アム・チェンジン」など、歌い上げ系が迫力があってとてもよかった。またデビュー作からCMにも使われている「スペンド・マイ・ライフ」など、いいリズムで、このあたりは、フユのドラムスと息才ベースのコンビネーションによるグルーヴが抜群で、歌もそれに乗っていいのりになって印象深かった。彼女はショーケースでも飛び入りでもどんどん場数を踏むといい。

運。

映画『バックコーラスの歌姫(ディーバ)たち』でも「歌がうまいシンガーはいくらでもいる。だがそこから脚光を浴びることができるフロントに立てるのはほんの一握りの運をつかんだ者だけだ」と語られるように、ナオ・ヨシオカは今その運をつかんだ。出会い、ご縁、というものが大事なのだ。

これだけ力の入ったスタッフに恵まれたナオ・ヨシオカはそういう意味で本当にラッキーなスタートを切れたと感じる。英語だけでいくのか、日本語も歌うのか、アメリカで売り出すのか、ライヴは定期的にできるのか、などいろいろと課題はあるのだろうが、また、このプロジェクトが東京・代々木上原の一インディ・レーベルから発信されていることも含めて今後も注目して行きたい。たぶん、現在のメジャーの環境では出来そうで出来ないもののようにも思えてくるからだ。

The Light
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Nao Yoshioka
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メイク・ザ・チェンジ・プロジェクト
http://www.sweetsoulrecords.com/make-the-change-project/

スイート・ソウル・レコーズノナオ・ヨシオカ・ページ
http://www.sweetsoulrecords.com/artists/nao-yoshioka/

ナオ・ヨシオカ・オフィシャル・サイト
http://naoyoshioka.com/

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■ MEMBER 代官山ループ、2013年12月6日

Nao Yoshioka (Vocal)
Kaz Kato(Musical Director, Keyboards)
Fuyu (Drums)
Takahiro Sokusai (Bass)
Yusuke Onishi (Guitar)
Lyn (Chorus)
Yuho Yoshioka(Chorus)

■ セットリスト
Nao Yoshioka, “The Light” Release Party In Tokyo, Presented By Sweet Soul Records
Loop, Daikanyama, December 6, 2013

[ ] denotes original artists

show started 20:17:
00. Video
01. Feeling Good
02. Spend My Life
03. Certifiable
04. A Change Is Gonna Come [Sam Cooke]
05. How Come You Don’t Call Me Anymore [Prince, Stephanie Mills, Alicia Keys]
06. I Am Changing [Jennifer Holliday, Jennifer Hudson]
07. I’m Not Perfect
08. Evil Gal Blues [Dinah Washington, Aretha Franklin]
09. I Believe I Can Fly [R.Kelly]
10. Think [Aretha Franklin]
11. The Light
Enc. At Last [Etta James, Beyonce]
Enc. Make The Change
Show ended 21:33

(2013年12月6日木曜、代官山ループ、ナオ・ヨシオカ・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Yoshioka, Nao