◎ポール・マッカートニー~あらゆる老若男女の人生のサウンドトラック | 吉岡正晴のソウル・サーチン

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◎ポール・マッカートニー~あらゆる老若男女の人生のサウンドトラック

力。

先日、ブルーイ(インコグニート)に電話インタヴューしたときに、「音楽というのはパワー(力、権力)を持つことができる」という話になった。ミュージシャンがメッセージを印象的なメロディーに載せて語れば、そのメッセージが聴く者に強く印象付けられ、影響を与えられる。そのメッセージは種類を問わない。政治的、社会的なメッセージもあれば、愛、それも二人の間の愛もあれば、広く人間愛のこともある。強い影響力を持ったミュージシャンは、一人の人生の行方さえ変えることができる。

ステージにはアーティストの人間力が如実に現れる。ポール・マッカートニーはさまざまなメッセージをこの日5万人超の観客に投げかけた。それも飛び切りの笑顔とひょうきんさでもって。そしてその人間力の大きさは飛びぬけていた。

ステージで見せるあの愛らしい振る舞いは、きっと20代の頃から変わっていないと思う。言ってみればあふれる才能とキャラクターは20代のものがそのまま現在まで引き継がれているような気がする。だから、実年齢71といわれても、そんな年には見えないのだ。

たくさんの日本語を操り、多くのビートルズ・ヒットを歌い、それだけでなく驚いたのが最新作からも何曲か歌い、完全に現役感あふれるアーティストであり、しかも、生きる伝説でもある。全37曲(メドレーものも含めると40曲)、2時間40分、圧巻のパフォーマンスだった。

これもまた、ビートルズとポール・マッカートニーの過去・現在・未来を見事に線で結んだライヴ・ショーだった。ジョン、ジョージ、ジミ・ヘンドリックスに敬意を表し、過去をリスペクトしつつ、71歳にして現在、未来を語るところがスゴイネ(ポール風に)。たぶん、彼だったらビートルズの曲とウィングス、ポールの曲だけやったとしても大拍手大感動で大絶賛されただろう。しかし、それではオールディーズ・アーティストになってしまう。その安住の地に留まらないところが立派、スバラシイ(ポール風に)。
吉岡正晴のソウル・サーチンオープニングのポール

団塊。

この日は東京ドームは超超満員。あそこまでいれるかというほど、ステージ真横まで、アリーナから一番上まで人がいる。あそこはステージは見えないだろうから、音と空気を楽しむ、共有するエリアということか。観客の年齢層もまさに老若男女、2世代、3世代にまたがる。

しかし、中心はおそらくポールより少しだけ下の団塊の世代、ベイビーブーマー(昭和22年~24年、1947年~1949年生まれ)だ。現在64歳から66歳くらいになっている。彼らはビートルズが登場した1963年にちょうど14歳から16歳。それから50年、半世紀。

仕事を終え、リタイアし悠々自適の生活を送られている方も多いのだろう。

その世代の中にはパソコンをやる人もいるかもしれないが、「ポールが来るんだって、パソコンで予約してくれよ」「コンビニで発券してきてくれよ」と息子や娘に頼んだ父親も多かったのではないだろうか。それより何より、このドームに来て、ガラケーではあまりいい写真が撮れないので、これを機会にスマホにするぞ、と思った人も何人もいたに違いない。ちょうど、近くにそんな男性二人組がいた。観客には男性一人も多かった。彼らからすると、ポールは自分たちよりも、ちょっとだが、年上。自分より年上のポールが3時間近く、あんなにがんばっているのを見たら、自分もがんばらなければ、とやる気とガッツをもらうだろう。ひょっとしたら、ポールのこの時期(2013年)の来日は、パソコン、ITに乗り遅れた団塊の世代に、「パソコンやるぞ~~」「ガラケー、スマホにするぞ」(ひょっとしたら携帯未携帯の人に、携帯、持つぞ~)と決意させた瞬間だったかもしれない。

吉岡正晴のソウル・サーチン「エヴリバディー・アウト・ゼア」あたりでの映像

1曲目が始まる前から、アリーナはもう総立ちになっていた。誰もがこの瞬間を最大限に楽しんでいることがわかる。ここまで観客全員が楽しそうに、ライヴを楽しめる演目はさすがになかなかない。これだけのハッピー・オウラを振りまけるポール・マッカートニーという存在は、言葉では表現できない。

ポール・マッカートニーはあらゆる世代の人々に人生のサウンドトラックを提供してきて、これからもしていくことになる。音楽家としてこれほどの喜びはないに違いない。

吉岡正晴のソウル・サーチン 最後「イエスタデイ」で観客に入口で手渡された5万本の赤いライト(サイリウム)がドームを彩った

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■ ポールの来日関連記事、

僕は関連記事をすべて見ているわけではありませんが、全公演を見た白木さんの熱すぎるレポートのひとつ。まさにライヴが蘇るすばらしい詳細完全レポート。
2013-11-22 01:49:48
11/21(木)ポール・マッカートニー来日公演6日目最終公演@東京ドーム
http://ameblo.jp/high-hopes/entry-11709897209.html

2013-11-21 15:43:04
ポール・マッカートニーが全来日公演で、ジミ・ヘンドリックスを追悼する理由と背景
http://ameblo.jp/high-hopes/entry-11709599356.html

音楽評論家、中川さんのライヴ評。これもすばらしい記事。
らっこ・ライブ・レビュー:ポール・マッカートニー 生と死つなぐ祈りの歌
毎日新聞 2013年11月21日 東京夕刊
http://mainichi.jp/shimen/news/20131121dde012070033000c.html

音楽評論家、渋谷陽一の社長はつらいよ
今夜もポール・マッカートニーを観る
2013.11.20 01:48
http://ro69.jp/blog/shibuya/92484

■ メンバー

○ポール・マッカートニー Paul McCartney:ヴォーカル、ベース、ピアノ、ギター
○ラスティー・アンダーソン Rusty Anderson:ギター、ベース
○ブライアン・レイ Brian Ray:ギター、ベース
○ポール・ウィックス・ウィッケンズ Paul Wickens:キーボード、ギター
○エイブ・ラボリエル・ジュニア Abe Laboriel Jr.:ドラム、ベース

(ドラムスがすごくいいグルーヴだと思ったら、なんとベースのエイブ・ラボリエルの息子だそう。ポールはあまりベースをプレイしなかった)

■セットリスト ポール・マッカートニー 2013年11月21日(木) 東京ドーム
Setlist : Paul McCartney Out There Japan Tour, November 21, 2013, Tokyo Dome

Show started 19:25
01 Eight Days a Week
02 Save Us
03 All My Loving
04 Listen to What the Man Said
05 Let Me Roll It / Foxy Lady
06 Paperback Writer
07 My Valentine
08 Nineteen Hundred and Eighty-Five
09 The Long and Winding Road
10 Maybe I'm Amazed
11 I've Just Seen a Face
12 We Can Work It Out
13 Another Day
14 And I Love Her
15 Blackbird
16 Here Today
17 New
18 Queenie Eye
19 Lady Madonna
20 All Together Now
21 Lovely Rita
22 Everybody Out There
23 Eleanor Rigby
24 Being for the Benefit of Mr. Kite!
25 Something
26 Ob-La-Di, Ob-La-Da
27 Band on the Run
28 Back in the U.S.S.R.
29 Let It Be
30 Live and Let Die (花火すごかった)
31 Hey Jude

Encore:
32  Day Tripper
33  Hi, Hi, Hi
34  Get Back

Encore 2
35  Yesterday
36  Helter Skelter
37  Golden Slumbers ~Carry That Weight ~The End

show ended 22:05

【2013年11月21日木曜、東京ドーム、ポール・マッカートニー・ライヴ】
ENT>LIVE>McCartney, Paul

■ ビートルズ、赤盤

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