バークリー・メソッドの影響力と限界 | サックス・創意工夫|ジャズ・下学上達

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憂鬱と官能を教えた学校/菊地 成孔
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「憂鬱と官能を教えた学校/菊地成孔・大谷能生」

を読んで痛切したことは


アメリカに行ったこともない自分の音楽の捉え方が

(むしろ“日本でしかジャズを勉強していないからこそ”

と言ったほうが正しいかもしれませんが)


バークリー音楽大学 Berklee College of Music 外部へのリンク

バークリー・メソッド Berklee Method 外部へのリンクの考え方に

どっぷり漬かり切っていたことです。


ちなみに著者の菊地成孔さんも

バークリー・メソッド Berklee Method の全貌を

鮮やかに分析しているにもかかわらず


バークリー音楽大学 Berklee College of Music

への留学はおろか渡米経験もないそうです。



自分はコード進行 Chord Change を分析 Analyze できれば

その曲について理解できたような気になっていました。

逆に言うとあらゆる曲は分析 Analyze が可能だと

考えていたことになります。


しかも「憂鬱と官能を教えた学校/菊地成孔・大谷能生」

の中でも指摘されているとおり


バークリー・メソッド Berklee Method

が分析Analyze の対象としているのは

Harmony ハーモニー(和声)と

それに付随する形でのMelody メロディー(旋律)が主で


音楽の三要素とされるうちの残りのひとつ

Rhythm リズム(律動)に関する考察が

ほとんどと言っていいほど欠落しています。


当然ながらそれでは音楽の

ごく限られた側面の分析 Analyze でしかありません。



さらにバークリー・メソッド Berklee Method では

分析 Analyze ができない音楽が多く存在します。


たとえばジャズの世界では1960年代以降に

新主流派 New Mainstream と呼ばれる

バークリー・メソッド Berklee Method

では分析 Analyze しきれない

新しいタイプのコード進行を持つ音楽が現れています。


「憂鬱と官能を教えた学校/菊地成孔・大谷能生」

ではそれらを“コーダル・モーダル Chordal Modal ”

という言葉で表現しています。



George Russell ジョージ・ラッセルの

"Lydian Chromatic Concept リディアン・クロマティック・コンセプト"

Ornette Coleman オーネット・コールマンの

"Harmolodics ハーモロディクス理論"など


バークリー・メソッド Berklee Methodとは

異なる視点で構築された音楽理論は存在するのですが


ポピュラー音楽の構造を分析 Analyzeする理論

そして職業として商業音楽を創作する方法論として

バークリー・メソッド Berklee Method 以上の普遍性をもつ理論は

今のところ現れていない、というのが現状のようです。