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街に出て姿勢を見よう!  【039】

前回は、身体の歪みの意味を、実際の歩行動作のなかで捉えてみました。そして、「歪み」の背後に身体の持つ構造的な問題があることを紹介しました。

わたしたちの関節には、動こうとする力と、動くまいとする力がたえずせめぎあいながら働いています。両者のバランスが崩れると動きのなかに引っ掛かりが生じ、身体の安定性が崩れてきます。

身体の安定性を生み出す仕組みをよく知れば、動作のなかにはらまれ多「歪み」の要因を理解することができるようになります。

動こうとする力は、おもに身体外表の表層筋によって、動くまいとする力は関節深部の深層筋にとって生み出されます。深層筋の緊張は動きの悪い関節を作り出します。このことが身体の構造的な歪みを作り出すのです。

動きの悪い関節がどのように生じているのかを見てみましょう。

$快足健康ブログ-【姿勢観察ファイル】背骨の硬化


前回も紹介しましたが、上の方は図の右側、左足立脚相のときに、左右の肩の高さに差が生じ、腰が後方に引けて、身体のバランスが悪くなっていることがわかります。

このとき、とくに着地した左側の骨盤が右側に比べて低い位置にあり、身体の重みを自然に受け止められなくなっていることが大きな問題でした。

このようなときによく生じている骨盤の問題があります。

わたしたちの骨盤は、仙骨と呼ばれる五角形の骨と広く扇をひらいたような腸骨が結びついて作られています(下図参照)。

$快足健康ブログ-【姿勢観察ファイル】骨盤の名称と比較解剖


比較としてチンパンジーの骨盤を並べてみました。形状に大きな違いあるのがお分かりになると思います。

人類の骨盤は身体の側面に張り出し、お椀(わん)のように胴体を丸く受け止める形になっています。

このような形状は、父方と母方の遺伝子にもとずいて作られることはいうまでのありませんが、そこには、長い世代にわたって繰り広げられてきた環境との格闘の歴史が刻まれています。

想像してみてください。アフリカの乾燥した大地を二本の足で闊歩し、数百万年にわたって生活を切り開いてきたわたしたちの祖先のことを。

この骨盤の形状には、左右の足がそれぞれ片足で全体重を支えながら、他方の足を前に送り出すようにして歩く姿、身体の重みを利用しながら、身体の安定性推進力を生み出すすぐれた知恵が刻まれているのです。

$快足健康ブログ-【姿勢観察ファイル】歩行と骨盤の関節


仙骨と腸骨の間には仙腸関節と呼ばれる関節があり、耳状面と呼ばれる関節面を持っています。手で触れてみるとここに若干の動きがあることがわかります。

図の赤い矢印は、仙骨に対する腸骨の動きを示しています。腸骨がAの方向に動くと仙骨は若干、前に傾いた形になり、腰椎部の反りが強くなります。

これに対し腸骨がBの方向に動くと仙骨は若干、後ろに反った形になり、腰椎の反りが緩和されます。

一般に、長時間のデスクワークなどを続けていると腸骨がAの方向に固定され後上腸骨棘(上図の右側参照)が後方に張り出した骨盤になります。

手で仙腸関節の形状を観察すると左右でA、Bの動きが反転していることがよくあります。Aの方向に固定された側は下側の腰椎が反りすぎで痛みを発しやすい側です。

そのような腰は、力を抜いて素直に身体の重みを受け止めることができません。腰をそらすポーズが苦しいので、なにげなく腰が引けた伸びきらないポーズになりやすいのです。
これを防ぐために、膝を曲げたり、下肢を外股にしていることもよくあります。

そういった目で、再度下の図の右側、左立脚相の図を見て下さい。

$快足健康ブログ-【姿勢観察ファイル】背骨の硬化


この左立脚相の姿では、図の左側、右立脚相と比べると、力が抜けないために立脚側の骨盤が低く固定されています。

全体に腰が引けて伸びきらない状態になっています。このような力みが、上半身の自然な脱力を妨げ肩の高低差を大きくしているのです。

身体の歪みの構造的な背景を知らなければ、たんなる癖として見過ごしてしまいそうなことですが、このような左右の動作のアンバランスは、矯正しようとしてもなかなかできないのが特徴です。

野球の投手が、コントロールをよくするためにフォームを矯正した結果、すっかり球速が落ちてしまたという話がありますが、そこにはとても重要な問題が隠されていることが少なくないのです。

このような微妙な関節運動を探り出すうえで重要なのが、手の感覚です。そのためには目的を持って、繰り返し手の感覚を磨くことが不可欠です。

手技療法の意義を考える上で、重要なポイントなので、「カラダを科学する本格的整体ブログ」の方でまとめてみようと格闘しています。もうすぐそちらの方もご報告できると思っています。
(つづく)

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街に出て姿勢を見よう!  【038】

身体が、自分の重みを受け止め、本来のしなやかな身体動作をおこなえるためには、「ゆるむ」べき関節がしっかりゆるんでくれることが大切です。

意外に思われるかもしれませんが、このような関節の表情はストレッチや柔軟体操では読み取ることができません。前屈も後屈も十分すぎるくらいできる方に、すごく硬くなっている関節が存在しうるのです。

その意味からも、歩行動作を読み取ることには大きな意味があります。

大切なことは、ここで問題となる「ゆるむ」力が、表層の筋肉ではなく、関節の深部の筋肉の状態によって生み出されていることです。下図は同じ方の歩行の経過を追ったものです。

$快足健康ブログ-【姿勢観察ファイル】背骨の硬化


上図の左と右を比べてみますと、右側の左脚立ちの状態では、体重のかかっていない右側の骨盤が引き上げられ腰が引けています。肩のラインの傾きが大きく、頚が右側に傾いています。

全体として右半身を狭めた状態になっているのがわかりますね。腰の「ゆるみ」の低下と首の傾き、肩の力みが深く関わりあっているのが直感的に理解できると思います。

対称的に、上図の左側、右脚立ちの図では右側の骨盤が高くなり、右足外側の腸脛靱帯にきれいに張力がかかっています。

腰がまっすぐ入り、このため腰椎の前側にある大腰筋にもしっかり張力がかかり、身体の重みを受け止めエネルギーとして利用できる状態です。

比較の意味で下の方と見比べてみてください。

この方は下図の右側、左足立ちのときに、体重のかかっていない右側の骨盤が高くなって、腰がゆるまない状態になっています。

$快足健康ブログ-【姿勢観察ファイル】脊柱の硬化02


立脚側の左の腰椎に問題があって臀部側面の筋肉に力が入らないためにそれを補うために身体を左側に傾けています。いわゆるトレンデレンブルグ歩行のごく軽い形です。

傾いた肩のラインと比べてもかなり頚が左に傾いているのがわかります。これは上胸椎に左側を狭めるような側彎があることを示唆しています。

そういったことをふまえて、もう一度最初に紹介した図の左側の姿勢に注目して下さい。

この方は、下図の男性とは対照的に肩が右側に傾いています。頚を見ると、肩の傾きと不釣合いに一方に偏しているとは思われません。

つまり胸椎部は下図の男性とは対照的に右を狭めた側彎を示しているけれども、頚の傾きにはそれほど大きな影響を示していないことがわかります。

ただし、右の腰がかなり後に引けていますね。これは右側の腰が十分に伸びない状態にあることを示しています。

このように、なにげない歩行動作を比較対照してみると、身体の歪みの姿が意外にはっきりと表れているのがわかります。

歩行動作は、日ごろ感じている以上に負荷の高いトレーニングです。これは、わたしたちの体重が想像しているよりもかなり重いことに関係があります。

身体はこのことに適応しているために苦もなく歩くことができますが、さまざまな関節の表情だけは、さすがに隠すことができないというわけなのです。
(つづく)

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街に出て姿勢を見よう! 【037】

前回、筋肉は重みを受け止める役割やエネルギーを生み出す役割と同時に、センサーとしての役割をはたしているということを紹介したました。

センサーとしての役割をはたしているのが、筋肉のなかに埋め込まれるように存在する筋紡錘という器官です。

筋肉のなかには、筋繊維という細長い細胞がたくさん走っています。筋肉の両端は腱と呼ばれるコラーゲン繊維になっているのですが、すべての筋繊維はこの腱の間を結んでいます。細胞といってもいくつもの細胞が合体してできる多核細胞でとても長くなっています。

筋紡錘は、この筋繊維のなかに埋め込まれた短いセンサー用の器官です。錘内筋繊維という短い筋繊維が走っていて、筋肉が引きの伸ばされると一緒に引き伸ばされます。錘内筋繊維のまわりにはたくさんの神経が絡みついていて、筋肉の伸びを感知し、脊髄に神経インパルスを送るようにできているのです。

$快足健康ブログ-【姿勢観察ファイル】筋紡錘の仕組み


筋肉は、筋紡錘が引き伸ばされるとそのことを感知して緊張します。しかし、筋紡錘が緩んだ状態になっているとこのような反応が起こりません。身体がだらんとしているときのことを考えていただくとよくわかります。

逆に筋肉に力が入っている時は、筋紡錘そのものが緊張状態になって、極端に感度が高まり、筋肉がロックされた状態になります。力こぶを作った腕を引き伸ばそうとしたときの状態です。試みていただくとわかりますが、腕ががしっと固まってびくともしないはずです。

このような筋肉の生理作用が、さらに表層と深層の筋肉の役割分担のなかで、実際の身体の動きを作り出します。表層と深層の筋肉は、基本的な生理作用は一緒でも異なる意味を持ってきます。

たとえば背骨の歪みを生み出すうえで重要な役割をはたしているのは、おもに深部の筋肉です。

両者の違いをまとめてみると次のようになります。

表層筋
   表層にある
       多関節筋(たくさんの観察をまたぐ)
       速筋成分を多く含み、瞬発力富むが疲れやすい

深層筋
   深層にある
       単関節筋(単一の関節をまたぐ)
       遅筋繊維を多く含み、瞬発力に欠けるが有酸素化で持続的に活動できる

つまり、表層筋は、日ごろわたしたちの意識に上る身体動作と対応しているのに対し、深層筋は、個々の関節の物理的な変化に対応していて、わたしたちの意識に上りにくいといえるでしょう。要は、関節がずれないように保持している筋肉なのです。

深層筋が緊張するとどうなるか。本来あるべき歩行のリズム、身体の重みを受け止める受動運動をうまく発動できなくなるのです。

下の二人の方を見てください。

$快足健康ブログ-【姿勢観察ファイル】受動運動の乱れと歩行動作01


お二人とも右足が地面から離れた状態にあります。左脚単脚支持の状態です。本来なら、右側の骨盤が下がって低い位置にくるはずですがそうなっていません。

これにともなって次のようなことが生じます。

①左脚の外側の腸脛靭帯は、骨盤傾斜を引き起こし身体の重みを受け止め、利用することができません。
②右側の大腰筋が十分に引き伸ばされず、下肢を引き上げるエネルギーを蓄えることができません。
③左下肢後面のハムストリング筋が十分に引き伸ばされず、足をけ上げる力が低下します。
④総じて左下肢の筋肉に蓄えられた弾性エネルギーが発揮されないまま熱にかわりバンプアップを起こす(=太くなる)。

見ると二人とも右手に荷物を抱えています。当然右半身に力みを生じます。筋紡錘が緊張して筋肉をロックし、身体の重みを受け止めにくなります。上に掲げたことは、たんに荷物によってもたらされた一時的な状態なのかもしれません。

しかし、だれもが実感としてご存知のように、ふつう荷物を持ちやすい側はどちらか一方にかたよっていて、ほっておくと右ばかり、あるいは左ばかりで荷物を抱えてしまうことが多いはずです。

上に掲げたことは荷物による一時的な現象としてではなく、それ以前からかなりの一貫性を持って身体にインプットされていて、日常動作によってますます助長されてしまうということが多いのです。

こういった身体の傾向性は、基本的に身体のこわばりとしてあらわれてきます。

これを読み取るためには、背骨(脊柱)全体の表情に注目することが大切です。その出発点は、首の傾きを評価することにあります。次回は、このあたりのことからご紹介してみます。

(つづく)

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