快足健康ブログ -3ページ目

街に出て姿勢を見よう!  【042】

5月から一般社団法人の会長職を兼任するようになってなかなか時間がとれずに更新がと滞ってしまってすみません。今回は、どなたにもある歩行動作の対称性の崩れについて考えてみましょう。

多くの方は、おおむね1分間に80歩程度の歩行周期を保っています。とてもすばやいので詳細に観察するためには動画などを使う必要があります。


$快足健康ブログ-【姿勢観察ファイル】左右の歪み02


上の方は右立脚相のときに左右の肩の高さの差が顕著になっています。これまでもご紹介してきたように、歩行動作の観察に当たっては、

①片足立ちになったときに足が地面から離れた側の骨盤が下がるかどうか、
②肩の高さの差が周期的にはっきりするかどうか、
③立脚側の肩からできる服のシワが左右対称に表れるかどうか、
④左右の手の振れ方の違いがあるかどうか、

などに注目するよいという提案をしてきました。

実際の日常生活では荷物などをまったくもたずに歩くことはありませんから、上のようなことが純粋に身体の内側の関節運動のみを表現したと判断できることはほとんどありません。

しかし、荷物の持ちやすさ、持ち癖のようなものがない方も少ないと思います。すくなくとも、荷物を持たれている姿勢そのものは、一定の身体の歪みを前提としていることは間違いありません。

$快足健康ブログ-【姿勢観察ファイル】左右の歪み03


まず荷物を持った側に身体は引っ張られます。姿勢の基本は腰ですが、この時の腰椎は荷物を持った左側に側彎した状態になります。さらに柔軟性を失った硬い状態になります。

詳しく説明すると、筋肉には「筋紡錘」といって筋肉にかかる力を先行して感知する器官が配置されているのですが、この「筋紡錘」の作用で、荷物の重みがかかっただけで筋肉はニュートラルな状態ではなくなるのです。

これ自身は、重みに適応する身体の知恵といってもよいのですが、そのこととと平衡して、頭の位置の安定と、エネルギー消費の節約という志向が、たえず身体のなかで働いています。

荷物を持った側の足は地面に対して傾斜が強くなっていますが、これは荷重の中心の近くに着地していることを意味します。このとき身体のバランスが比較的整っているように見えますね。

推測するに、この方にとってこのような形が日常的な身体の歪みをなぞっているのだろうと思います。まとめてみると下の図のようになります。

$快足健康ブログ-【姿勢観察ファイル】左右の歪み01


注意すべき点がいくつかあります。

荷重側の足(この方の場合左足)は、荷重の中心の真下を通り抜けるような働きをするのですが、膝に対する負担はこちら側が大きくなります。

また左の骨盤と腰椎、とくに腰椎4番と腸骨の結びつきが強くなってとても硬くなります。そして、構造上右に押し出されるように腰椎5番が変位して腰椎や坐骨神経痛の原因となります。

身体がつらくなるとか、硬くなる、痛みを発するという時、とくに末梢部の痛みは、からなず右が左の片側性です。

多少の歪みはそれ自体、異常でも病気でもありませんが、そこにさまざまな徴候が隠れていることに着目すると、身体の仕組み、表情というものが、より深く見えてくるのも事実なのです。
(つづく)

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街に出て姿勢を見よう!  【041】

6月に一般社団法人身体均整師会の代表理事になってしまい、雑務に負われています。なかなかブログの更新に手がまわりませんでしたが、そろそろ落ち着きを取り戻さねばと思うきょうこの頃。

このブログでは、姿勢観察のフィールドワークをテーマにしてきましたが、今回はわたし自身の歩く姿を作図してみました。

$快足健康ブログ-【姿勢観察ファイル】歩行動作と脊柱01


この画像は、歩いているところを動画撮影して作画しました。われながら、これほどの左右のブレがあるということには少なからぬ驚きを覚えます。

図を見ると、左右とも一応立脚側の骨盤が高くなり、骨盤の受動運動が確保されているように見えます。これは多少意識して腰を緩めるるようにしたからで、普段人に見てもらうと右側の立脚相(上図、右)のときには骨盤が下がりません。たしかに上図、右の右脚立脚相では、骨盤の動きがとても微弱です。

自分の身体の利点は、身体内部の歪みや関節の硬さを知ることができることです。上の左図に描いたオレンジ入りのラインがわたしの脊柱の持っている側湾の様子です。

上図、左の左脚立脚相のときの肩の傾斜がとても大きく、首の右傾斜もずいぶんはっきりあらわれていますが、こちらの方が普段の姿勢に近いのです。面白いことに、ただじっと足で片足立ちするだけでも左右の姿勢の違いが再現されます。右足立ちになると、肩の高さがそろい、首がまっすぐになるのです。

これまで受動運動がうまく発揮されているか否かという基準で、歩行動作を評価してきましたが、無為にあらわれてくる身体の歪みは、その人がそもそも持っている身体の硬さ(※受動抵抗性の増大)と関わりがあると考えてもよいのかもしれません。

図に書き込んだ角度によると、右脚立脚相のときには脛の傾斜が大きくなって、外踝側により大きく荷重する形になっていることがわかります。

一般的に、脛の外側は右側が張って痛みを訴える方が圧倒的に多いのですが、わたしも人に圧してもらうと同じ傾向があります。ただ足首でいうと左側のほうが動きが悪く、故障した経験もあります。以前、住んでいた住宅地の周回路をジョギングしていたときのことですが、反時計回りで走っていると左足首が足を引きずるくらいに痛くなって、やむなく時計回りに変更したということがあります。

photshop(作画ソフト)のものさしツールを使って、肩や下肢、背骨の傾きの差をで計算してみましたが、多分これだけの身体の傾斜を意識的につくると、かなりの運動感覚が生じます。

そして、無意識に作り出された傾きのなかには、身体がはじき出した最もエネルギー消費の少ない力学的バランスが反映されているはずです。意識的に作り出し出した動きと、無意識に生み出される身体の歪みの間には、身体感覚に大きな違いが生まれます。このような身体感覚が、身体にかかる物理量を計測するセンサーとして機能しているのです。

そういった目で異なる人の歩く姿を観察してみましょう。

$快足健康ブログ-【姿勢観察ファイル】歩行動作と脊柱02


図の方を見ると左側の右脚立脚相の時に身体の歪みが顕著にあらわれていますが、こちらの方がこの方本来の身体の形をあらわしていると考えてみましょう。

左肩に荷物をかけていますが、こうすると身体は無意識に左肩をあげようとします。これも物理的なセンサーとしての身体の役割です。その意味では、右脚立脚相の歪みはより強調してあらわれていると考えた方がよいかもしれません。右手を大きく後方に振り出しているのも、荷物の重さとのバランスを考えるとよくわかります。

肩に荷物を掛けるときには、掛けやすい側と掛けにくい側が決まっています。わたしは右肩にものをかける傾向があるのですが、この方の場合は左肩だと思います。肩が下がっている側は、荷物がずり落ちてを掛けにくいのです。

わたしの肩の上がり下がりはおそらく首の傾きと関係していて、右に倒れたゆく首を左の肩を下にひさげようとする対抗力(カウンターアクティビティ)で支えようとしているだと思いますが、この方は肩の下がりと首の傾きが一致していますね。わたしの身体とは異なる力学的バランスが働いていることがわかります。

一見すると微妙でわかりにくいのですが、左側に傾いていこうとする身体を、首や肩を使って一生懸命引き起こそうとしているようにも見えます。

このようなバランスの震源が一体どのように発生してくるのか、次回はこの点を考えてみたいと思います。
(つづく)

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街に出て姿勢を見よう!  【40】

これまで歩行の動作には身体のなかの緊張や硬さが表れてきます。これまで歩行動作を観察するうえ視点の置き方について解説してきました。

哺乳類は身体の重心をとる能力が本能的にとてもすぐれているのが特徴です。高い運動能力を持った生き物がたくさんいます。

木々の枝や電線をすばやく移動するリスの動きはその典型的なものでしょう。わたしたち人類の直立二足歩行も、このような哺乳類特有の高い運動能力を基盤に成り立っています。

$快足健康ブログ-【姿勢観察ファイル】リスの運動能力


とくにわたしたち人類はとても身体の大きな哺乳類です。身体のバランスの乱れは、即座に大きなエネルギー消費に結びつきます。

わたしたちの身体は、足裏の支持面を基準に、たえず前後左右回旋の重みや運動エネルギーの変化を鋭敏に感じ取り反応するようにできています。

歩行動作を観察する際にはこのことに留意した上で、それでも隠すことのできないバランスの乱れ、姿勢の歪みというものが生じているという目で見つめることが大切です。

下図の方の姿勢の歪みは少し複雑です。じっくりと観察して、なにが、どうのように問題なのか、ゆっくり考えてみてください。

$快足健康ブログ-歩行と上体の傾斜


まず気になることは、骨盤の受動運動です。左立脚相のときに、右側の骨盤が高い位置に保たれたままになっています。これは左側の腰に力みがあることを示しています。

では右立脚相の姿はバランスが取れているかというと、荷重した右側の骨盤が高くなっているという点は問題ないのですが、全体のバランスはかならずしもよくありません。

とくに右腕が外側に大きく振られているのが気になります。右立脚相のとき右腕が体幹から大きく離れていますね。

これは上体が左側に大きく傾いているのを補おうとする無意識の運動です。たとえば重い荷物を肩から下げると、反対側の腕を無意識に大きく振ろうとする動きがあらわれますが(下図参照)、これと同じものです。

上の方の上半身は、とくに右立脚相のときに、大きく左側に傾いているのがわかります。

$快足健康ブログ-【姿勢観察ファイル】荷物と腕の角度


このことはシャツのシワに注目してみるとよくわかります。背面から見たとき、衣服に着地した足の肩から反対側の腰に向けて斜めのシワができるのが本来の形だと申しましたが、左立脚相できれいに表れているシワが、右立脚相では見られません。

右立脚相では、背中全体が平板になって、上半身のはずみ車として役割が十分発揮できていないことを示しています。左右の肩の高低差も大きく、頚が右側に大きく傾いているのがわかりますね。

これらの事実は、運動エネルギーの点では大きなロスとなるにもかかわらず、うまく吸収することのできない関節運動のアンバランスが生じていることを示しています。

これまでとくにカイロプラクティックのサブラクセーションと呼ばれる関節運動制限をあらわす概念について、その真偽をめぐって論争がおこなわれてきました。たとえば「レントゲン写真で客観的に確認できないではないか」といった議論が長年にわたって積み重ねられてきました。

しかし、このように、巨視的な目で身体運動を評価してみると、脊柱のなかに強固な関節運動制限が存在しうることが間接的に理解できます。

このような運動制限に対して、わたしたちは、
・ストレッチなどの全身的な運動では20~30歩の足踏みですぐに元に戻ってしまうこと。
・一方、徒手的な刺激によって個別関節運動にアプローチするとかなり持続的な姿勢の変化が起こること。
・その際、関節部に「響き」を生ずるような自律神経性の知覚線維に作用する刺激賀より効果的であること。

などを確認しています。

実際に動作を観察してみると、たんに筋肉のコリを緩めるといったこととは別次元のことそして、脊柱の観察運動の制限を取り除くことの意義がよく見えてくると思いませんか。
(つづく)

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