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街に出て姿勢を見よう!  【045】

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前回は、手技療法にも、医学でいう「診断学」に相当するものが必要だということを紹介しました。

このことを手技療法における「施術の判断基準」と呼ぶことにしましょう。今回は、まずどのような意図でこの「施術の判断基準」を考えようとしているのかということを紹介したいと思います。

工学では、事故解析をするときにロジックツリーというものを考えます。たとえば掃除機が急に動かなくなったという場合を考えてみましょう。

とりあげすメーカーのサポートセンターに電話をかけ、担当者の人とのやり取りがはじまります。

コートはちゃんとつながっていますか? 別のコンセントにつないでも同じですか? このような一連の質問の流れの背景にあるのが、ロジックツリーです。

機械は完全に因果律にしたがって動いています。外部から供給される電気をコンセントからコードで導き、スイッチ部でコントロールしながら、モータを駆動します。

掃除機が動かないとすれば、そのいずれかで、単数か複数かの問題が生じていることが考えられます。問題を整理して一つ一つ検証して原因を突き止めてゆきます。

時には停電や家庭内の配線の不具合で動かないこともあります。まずそういった外部的な要因を排除してからでないと、機器本体のことを考えても仕方がありません。

手技療法の扱う対象は人間の身体です。生命活動は、因果性に支配されていることはたしかですが、現在の科学で明らかにされている因果性(病因)はまだすみずみまで行き届いていません。そのことを扱うのは専門の医療機関でなければなりません。

手技療法は医学とは異なる視点で、さまざまな症状に対する因果性を考えています。医療機関で解決がつかない問題があるので手技療法が利用されます。もちろん、手技療法にも守備範囲があって、適用にならないものもあります。

手技療法おいても、一定のロジックツリーに従って、体系的にアプローチすることが必要なことはかわりがありません。「施術の判断基準」をあきらかにするということによって、その流れが理解していただけるようになります。

判断の流れを作るためには個々の判断の根拠があきらかでなければなりません。人間の身体はとても複雑なものですから、電気製品を扱う以上に、論理性を持って臨むことが必要です。

もちろん機械とは違い、生き物の身体は自己修復能力を持っています。たんに原因を特定するということだけではなく、そういった幅広い意味での判断が必要になります。

睡眠はちゃんととれているか、お通じは問題ないかなどなど、多くの項目が関連してきます。

すべてをまとめあげようとすると大変長くなりますので、毎回、順を追って少しずつ紹介していくようにします。今回はとくに姿勢観察のローカルルールとグローバルルールについてお話しましょう。

ローカルルールとグローバルルールという言葉は、物質科学の分野で幅広く用いられる用語です。

たとえば水が沸騰する場合、容器に入れられた水に外部の熱源から熱が伝えられます。水のなかには対流が起こり、容器は下から熱で温められ、上では水により熱を奪わ、材質により微妙な変形が生じます。

分子レベルでみると、気化する水分子に接した水分子は、熱を奪われることにより微妙に温度が下がります。その様子は、熱源からの熱の供給の様子によって違ってきます。

容器の側でも、温めらえれる側では分子間の振動が大きくなり、水と接している面は冷やされて分子間の振動が小さくなります。

このように、水の沸騰という現象は、分子間のローカルなルールの積み重ねによって、全体としてのグローバルなルールにさまざまな表情をあたえます。

土鍋で水を温めると細かく泡立つように沸騰しますが、薄いガラス製のフラスコでは大きな泡が生じます。薄い鉄鍋では底が変形してぼこんぼこんと大きな音が立つことがあります。

こういったローカルルールとグローバルルールの違いは、たとえば雪のでき方の違い(牡丹雪とさらさら雪)、地震などの震度の違い、硬い氷とゆるい氷の違い、天候の変化など、さまざまな現象のなかに見られます。

これと同じように、姿勢のなかにもローカルルールとグローバルルールがあります。グローバルルールは、安定性という原則に縛られます。このルールはかなり厳格です。体位が安定するということは、結局無駄なエネルギー消費が抑えられます。わたしたちは、たえず無意識に、そして厳格にラクな姿勢を取るように仕向けられているのです。

歩くに際しても、できるだけ重心の上下左右の動揺を少なくするといった工夫が無意識に働いています。わたしたちの動作は、意識の及ばないうちにを大きく方向づけられているのです。

たとえば2歳くらいの小さな子供に会った時には、歩く様子をよく観察してください。左右の足幅が広くとられていることがわかります。地上にあるものはすべて支持基底面が広く、重心が低い方が安定しています。

【姿勢観察ファイル】歩行動作の発達


小さい子供の足幅の広さはこの法則に従っているのです。つまりここでは静止した「立ち姿勢の安定性」が最優先されているのです。

しかし、少し成長して小学校3~4年生くらいになってくると左右の足幅が狭くなってきます。歩いたり、とくに走ったりするときは、身体重心の直下に着地した方がはるかに安定性がよくなるからです。

【姿勢観察ファイル】安定性


これは重心の動揺を小さくするための知恵です。ラクに動くための無意識の調整作用です。つまり小学校3~4年生くらいでは、すでに「立ち姿勢の安定性」は揺るぎがなくなり、「動作における安定性」が優先されるようになるのです。

たとえば大人は無意識に下図のようなポーズを取りますが、子供とくに小さい子供はほとんど見られません。立ち姿勢の安定性の差がこういったちょっとした姿勢の違いに、表れているのです。

【姿勢観察ファイル】休めの姿勢と受動抵抗


小学校3~4年生になって「動作における安定性」が増してくると、男の子は野球やサッカーなど、高度な遊びに取り組めるようになります。立っているよりも動作する方が衝撃が発生し、荷重によるエネルギー消費は多いわけですから、「動作における安定性」が優先されるのは当然です。

一方、高齢化して次第に足の力が衰えてくると、これと逆の経過をたどって足幅が広くなってきます。足幅が広いということは、立つだけでも疲労が大きいということを理解してあげることが必要です。杖を使うことは、基底支持面を広くとって、このことをおぎなう意味を持っています。

【姿勢観察ファイル】高齢化と足幅の関係


このことをエクササイズを通じて体験してみましょう。動作における安定性が、体重心の直下に足を突くことによって生まれることが自分の身体で理解できます。

左右の足の着地点を肩幅くらいに開いてジョギングしてみたください。いかがですか?

左右の足幅を広くとってジョギングすると身体の左右の骨盤の上下動の振動が大きくなります。10メートルくらいでも結構疲労するのがわかります。骨盤の左右のローリンが大きくなるので、骨盤支持筋にはそれだけ大きな負担がかかります。

逆に左右の足の着地点を身体の直下の直線状に保つと、身体の振動がほとんどなくなります。何気なく走るときには、だれもが無意識にこのようにしています。

わたしたちの運動姿勢は意識しないところで、目的にそった調整を受けているのです。このことは、身体を読み解く上での客観的なサインともなるのです。

逆に不安定な動作を活用してトレーニング効果を高めることもできます。

わざと足幅を広くとってジョギングしてみてください。多少不恰好ですが、体幹力の点では、安定した走りでは選らない大きなトレーニング効果があります。

ただし注意も必要です。ローカルルールの観点から見ると、関節にかかる負担が大きくなります。故障を誘発する可能性があるのです。

腰痛症の人、日ごろデスクワークや立ち仕事で腰が固まっている人は、やりすぎてはいけません。できればジョギングではなくウォーキングからはじめてください。

さて次回は、グローバルルールに対してローカルルールとはどのようなものなのかについてお話ししてみることにしましょう。

(つづく)
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日ごろ、わたしたちは姿勢や動作について、ほとんど意識することがありません。意識するよりも早く、身体が反応してしまっているからです。

このことは、なにげない姿勢や動作のなかにも、とても規則的な秩序が働いていることを示しています。

たとえばアフリカで人類の化石を発掘しいている人類学者たちは、足の甲のたった一つの骨の形状からも、その骨の持ち主が直立歩行していたかどうかを判定しすることができるほどなのです。

それゆえに、わたしたちの姿勢や動作を注意深く読み取ると、さまざまなな身体の抱えている問題を読み取る窓口ともなるのです。

このブログでは、このことをとくに手技療法の意義を理解していただく窓口として掘り下げたいと考えてきました。

直立するためには、まず足裏の筋肉をコントロールする神経や血液を供給する血管が圧迫されない構造が、確保されていなければなりません。

わたしたちの身体は、程度の差こそあれ、長い目で見ると加齢による円背姿勢にむけて緩やかに変化し続けています。

【姿勢観察ファイル】加齢による姿勢の変化


足の甲の骨を例にとると、たえず足裏の神経や血管に圧迫が加わらないような構造を保ちつつも、その骨間の配列は、姿勢変化の影響をうけて多様なゆがみをあらわしてきます。

なぜかというと、荷重の影響から無関係な関節は存在しないからです。わたしたちの身体は、とても大きな重量をしています。しかもこれを支える足裏(基底支持面)はとても小さく狭い、つまりとても不安的な形をしています。

このような不安定な形は、落下しようとする身体の重みを利用して運動エネルギーを得る哺乳類に特性(たとえば馬の身体を想像してください)を考えて初めて理解できます。

不安定な形であるからこそ、よいいっそう高度な関節能力が求められているのが、わたしたちの身体なのです。関節を理解するためには、荷重の変化に対する注意力が求められているというのは、このことを指してるのです。

手技療法には、医療でいう「診断学」に相当するものがありません。その効果は、実際に受けてみて身体で関することはできても、客観的に捉えることはむずかしい、少なくともそのように思っている人が少なくないのではないでしょうか。

しかし、姿勢というものにそなわった「秩序」に着目すると、たんにコリをほぐすとか、筋肉の疲労を揉みほぐすというのではない、手技療法の意義が、ある程度はっきりと理解できるようになるのではないかと考えています。

下の方を見てください。

【姿勢ファイル004】足首のゆるんだ歩行動作


荷重した左側の骨盤が高くなっています。これは、直立歩行をするうえで欠かすことのできな重要な徴候です。

地面を蹴ろうとしている足は骨盤から後方に伸び、かつつま先立ちになっています。

この足は、地面を蹴ると同時に引き上げられ、後方から見るとズボンの膝のところに皺が表れてきます。

一方、反対側の足は、この瞬間にまっすぐに伸びて身体の真下に位置するようになります。このとき、こちらの足では膝裏のズボンの皺が消えてなくなります。下の図はその瞬間の姿勢の特徴をよく表しています。

【姿勢観察ファイル】直立姿勢になる瞬間

ごらんいただくとわかるように、このとき地面に足がついている側の骨盤が高くなっています。

このような特徴(秩序)が保たれていない方に出会うことがあります。下の図を見てください。

持ち上げた足の側の骨盤が高くなって、上体が着地した足の側にかなり傾いています。このような姿勢は、身体の傾斜を補正する筋肉(中臀筋 GME)の筋力低下によってもたらされます。

多くは、下部の腰椎に運動の制限(硬さ)があって、痛みなどの神経症状が出ています。このようなときは、あわせて脛の前側の筋肉(前脛骨筋 TA)も脱力した状態になっていることが少なくありません。
【姿勢ファイル】トレンデレンブルグ徴候

腰の問題が長期に積み重なって表れる姿勢ですので、身体を調整したからといってすぐに改善するわけではなりませんが、関係の深い第4・5腰椎間関節の運動を改善するために、骨盤部や上腰椎部、さらには胸椎や頚椎部に生じているゆがみ、筋力のアンバランスにまで配慮して、身体を整えてゆく必要性があることを、読み取ることができるのです。

この方の場合は、腰が後方に引けて、肩にも力みが見られます。地面を蹴った足のつま先も十分に跳ね上げられていないように見受けられます。

歩行のリズムは、意外に多くのことを教えてくれるのです。
(つづく)
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街に出て姿勢を見よう!【043】

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ずいぶん更新が滞っていて申し訳ありません。
現在、hpの休院日の表示が変更できなくなっていまして、こちらのブログに11月12月分を掲示させていただきました(以下)。

さて、歩行と姿勢の関連を考える上で、とても重要なことがあります。それは「動き」を作る働きと、「関節のズレを防ぐ働き」の拮抗的な関係です。

オステオパシーでは、ズレを防ぐ働きを「フォームクロージャー」、実際の動きを作る働き「フォースクロージャー」といいますが、身体均整法は、前者を強弱性、後者を可動性と呼んでします。

これらの働きの拮抗的な関係が身体の歪みを作ります。

快足健康ブログ-創健堂カレンダー


「動きを作る働き」は、おもに表層筋(複数の関節をまたぐ多関節筋)によって作られ、「関節のズレを防ぐ働き」は、おもに靭帯や深層筋(一つの関節をまたぐ短関節筋)によって作られます。

わたしたちは、自分の意識で身体を動かすことができます。このときの動きを「可動性」といいます。身体の可動性は、表層筋(複数の関節をまたぐ多関節筋)によって作られます。

これに対し、たとえばペアストレッチをした時、人に補助してもらうことで、自分では動かせないところまで関節を曲げることができるようになりますね。

このような動きを、受動的運動といいます。このときに生じる抵抗感(受動的抵抗性)は、靭帯や深層筋(一つの関節をまたぐ短関節筋)によるもので、「関節のズレを防ぐ働き」です。

わたしたちの身体運動は、厳密に言うと、靭帯や深層筋の働きによる作られる「関節のズレを防ぐ働き」によって作られる軌道の上を、制御されながら動いているのです。

下の人を見てください。

快足健康ブログ


歩行動作の瞬間を捉えたイラストですが、右側(→)は左足の片脚立位、左側(←)は右足の片脚立位です。右側の図では、お尻がすこし横に張り出し、左腰が丸くなって、腰がうまく反りきれていないのが分かりになりますね。

右の腰がうまく伸びないことが大きな原因です(※)が、ここに、靭帯や深層筋による受動的運動のアンバランスが表れているのです。
(※これについて前に説明しました)

このことを骨盤に注目して見てみましょう。

骨盤は、そもそもほとんど動きのない部位ですが、靭帯の張力によってわずかに運動します。この運動を「うなずき運動(ニューテーション)」といいます。

快足健康ブログ


「うなずき運動(ニューテーション)」は腰を反らしたときに生ずる動きで、仙骨がわずかですがお辞儀をしたように変位します(上図、左参照)。

これに対して、背中を丸めたときには「のけぞり運動(カウンターニューテーション)」が生じます(上図、右参照)。

骨盤の中には、仙骨と左右の腸骨の間の「仙腸関節」という関節と、左右の恥骨の間の「恥骨結合」という、二つの関節がありますが、ニューテーションやカウンターニューテーションに関わるのは「仙腸関節」です。

先の方は左側の仙腸関節が、この「のけぞり運動(カウンターニューテーション)」に固定されているのです。

このような場合、左側の仙棘靭帯、仙結節靭帯が強く緊張した状態になっています(下図参照)。

快足健康ブログ-骨盤背面の靭帯群


仙腸関節には、上下、前後に強固な靭帯組織が発達して、関節のズレを防いでいるのですが、このような骨盤の歪みに対しては、脊柱の歪みとともに、おもに下側の靭帯群の緊張を緩める操作が必要になるのです。

(つづく)