怖い話 オカルト板まとめ -16ページ目

勧誘

574 :おいら ◆9rnB.qT3rc:2010/01/17(日) 18:27:05 ID:fJ3UDovY0
【勧誘】
1/5
S大学前駅でO急線の電車を降りた。
駅名にもなっている大学へと足を向ける。今日はそこの学園祭。露店からウィンナーを焼く
匂いがしてきた。どこの大学も学園祭と言えば、それほど変わらないものだ。

別棟の三階に登る。右手の廊下の奥、暗がりにエスニック風な手書きの看板が見えてきた。
「民俗学研究室」。お目当ての場所だ。
部屋に入ると、アジアっぽいお香の匂いが立ち込めている。微かにガムランの音色。
ゼミの研究展示と、その時のお土産だろうか、ちょっとした喫茶と雑貨の販売をしている
ようだ。まだ午前中のためか、客はあまり入っていないように見えた。

民俗学というと、柳田國男に代表される日本ぽいイメージだが、ここは少し様子が違う。
どちらかというと世界各地を回って、エスニカルな見識を集めているのだろう。全体に
色彩豊かな工芸品の展示で固められている。
こう見ていると、やっぱり東南アジア方面は人気があるなぁ。
教授に付いていくとは言え、学生身分で毎度海外へ渡航するとなると、結構金がかかる
だろうに。逆に、家が金持ちでなければ無理かもしれない。高いかもな…ここの学費。

案内の学生に声をかけられた。髪はサラリとしたショートに薄い眼鏡。朱いサリーを着て
いる。彼女はインド系がお好みか。見回すとスタッフは殆どが女性で、しかも思い思いの
民族衣装を着ている。
なるほど、室内を見るとタイかバリ風のヒーリングサロンのような雰囲気だ。ここまで
固められてしまうと、一見の男性は逆に気恥ずかしくて入り難いだろう。

575 :おいら ◆9rnB.qT3rc:2010/01/17(日) 18:28:03 ID:fJ3UDovY0
2/5
…と、そんなことは言ってられない。名刺入れから一枚の名刺を出した。
「民俗学フィールドワークゼミのミカドさんて、いらっしゃいますか?」
自分の名前を名乗りながら、ミカドさんを訪ねた。
「今日、エリって来てるっけ?知り合いの方だって」
彼女は笑顔で取り次いでくれた。

「あのー、ミカドですけど…あ!どうも、この前はありがとうございました」
最初、聞き慣れない名前に不審そうな顔をして、控えから出てきた女性。
ミカドさんだ。おいらの顔は忘れてなかったようだ。感激した。

彼女は先日、N部線の怪しい踏切で、大きな黒い口に喰われそうになった女子大生。
偶然にも、おいらが助けた格好になってしまった。
あの夜、携帯の番号を交換し損なって、ずっと気になっていた。彼女の美貌もそうだが、
あの大きな黒い口のことが、気に掛かっていた。あれから同じような目に遭っていない
だろうか。
あの赤いチェックのスカートと白い脚が、アンなことやコンなことになってやしないか。
他人ごとながら心配していた。

それから一回だけ、おいらの勤務先に彼女からメールが来たことがある。今度、学園祭で
研究室の展示をするので、良かったら一回見にきて欲しいと。
当然、小躍りして喜んだ。その日以来、楽しみにしてきたのが、本日この学園祭だという
訳だ。

576 :おいら ◆9rnB.qT3rc:2010/01/17(日) 18:28:39 ID:fJ3UDovY0
3/5
「どうも。ご招待頂いたので、来てみました。いい雰囲気の展示ですね」
「わざわざお越し頂いちゃって、すみません。とりあえず座ってください」
ミカドさん、今日は白いスカートに薄いサーモンのジャケット。今日は非番なのか、他の
学生と違って私服だった。
しつらえられた喫茶席に通される。学園祭らしく普通のパイプ椅子にアフガンストールを
掛けただけの簡素なものだ。先程のショート髪のサリーの子が、注文を聞いてきた。
しっかりしてる。
実のところコーヒーが欲しかったが、ここは場に合わせてチャイを二つ頼んだ。

「どうです?あれからまた変な目に遭ったりしてませんか?こっちも気になって…」
「あれからは…特に変わったことはないです」

そこに、チャイを持ってきたショートのサリーちゃんが、横から口を挟んだ。
「うそ…また遭ったの?エリの『スタンド』、黒くて大きいもんね」
「トモちゃん、ダメだって…」
「だって大丈夫じゃん。あんたの彼氏、霊能力者だし。エリも怪我なんてしないし」
「ね、彼も実は『スタンド』持ってるんでしょ。羨ましーわー」

黒くて大きい『スタンド』?霊能力者?何言ってるんだ、このメガネっ子?
…って今、この子『彼氏』って言ったか?言ったよな?
…まー、そういうもんだよな…普通。これだけの美人だし、そら居るわな、彼氏くらい。

心底ガックリきたのも束の間で、おいらは『黒くて大きなスタンド』という言葉に、見事
釣り上げられた。どういうことだ?あの時の、大きいワニの口のことか?
熱いチャイを少しすすった。シナモンは香り高いが、ちょっと甘すぎる。

577 :おいら ◆9rnB.qT3rc:2010/01/17(日) 18:29:10 ID:fJ3UDovY0
4/5
『スタンド』か…。確かに上手い喩えだと思った。おいらもジョジョは好きだ。
ということは、ミカドさんがあのワニの化け物を「出す」ということなのか?
もしそうだとして、なぜ彼女がそれに襲われる?
「その『スタンド』って、この前、踏切で遭ったのと同じものですか?」
「…」
「いや、いいです。すみません、込み入ったこと聞いて」
「いえ、…あの夜と同じものだと思います。みんなは『スタンド』って呼んでますが」

ちょっと待て。みんなって…そんなに有名なの?そんなに頻繁に出てくるものなの?

「中学校の時に海外旅行に行ってから、時々出てくるようになりました。一緒に居た
みんなも同時に見ることがあります。このトモちゃんも、去年の夏に伊豆の合宿で-」
「そうそう!あの時もエリの彼氏がすっぱり鎮めちゃったんだよね。カッコ良かったー」

はぁ…そうですか。開いた口が塞がらない。気付くと、他のスタッフの学生も会話の輪に
入ってきていた。みんな口々にミカドさんのスタンドとやらの凄さと、その彼氏の能力を
誉めそやしている。あの…ここは、ああいうのが当たり前のゼミなのでしょうか?

彼氏の職業は各地の「地脈」を鎮めるため、日本中を飛び回る「ナントカ心霊研究所」の
行動員(アクティベート・スタッフ)なのだという。
終いには、おいらの体験談をいろいろ根掘り葉掘り聞かれ、それに適当な解釈を付けられ、
その「ナントカ心霊研究所」の連絡先メモを握らされ、挙句には紹介されるところだった。

大学の頃、しつこく折伏し勧誘してきた、学会の学生構成員の連中のことを思い出した。
あの時、幾重にもおいらを囲んで、執拗に説得してきたやつらの目とそっくりだった。
おいらはぞっとして何回も頭を下げ、丁重に辞退した。

そして逃げるようにS大学を後にした。

578 :おいら ◆9rnB.qT3rc:2010/01/17(日) 18:29:40 ID:fJ3UDovY0
5/5
あちゃー。あいつらはモノホンかも。おいらも個人的な霊体験はあるが、霊媒や祈祷師、
その類だけは願い下げだ。今まで相談しに行ったことは無いし、これから行くことも無い
だろう。正直そういった連中は、どこかイカれていると、今でも思ってる。

あのS大民俗学フィールドワークゼミの連中も、基本的には同じなのだろうか?
世界各国の風俗に伝わる神秘とロマンと伝説に、現地を回ってどっぷり浸かっているうちに、
向こう側の仄暗い深みに、ズブズブと嵌り込んでいくのだ。
そして最後、もうこちら側には戻れない。

折角の気品と美貌を兼ね備えたミカドさん。ああミカドさん…。
周りがあんな真性オカルトだらけでは心配だ。このままでは後戻りできなくなってしまう。
きっと、愛する人をカルトに持っていかれる焦燥感と似たような感覚なのかもしれない。
これはかなりハードでタフな問題だと実感した。

一つ名案が閃いた。
彼女の『スタンド』とやらについても、別な解釈が与えられるかもしれない。
きっと面白いことになるに違いない。いつか彼女を連れて行ってやろう。

おいらの恩人、広島弁三船敏郎声のヒッピージジイが良く来る、上野の飲み屋に。
「ナントカ心霊研究所」とかと違って、あのジジイは知る限り、きっとロンリーだ。
法外な金を取られることもないだろう。一二杯おごってやればいいしな。
おつまみ横丁

天皇論

推理

544 :おいら ◆9rnB.qT3rc:2009/12/09(水) 01:36:47 ID:iYJ4qfoc0
知人の友達の「スズキさん」に直接会ったときの話。
宜しければ。

【推理】
1/4
「…彼、アシに入ったのは久しぶりですね」
大学時代にアシスタントのバイトをしていた漫画家先生の家で、同じアシ仲間の
モリヤマくんの話題になった。

彼は今、資料のコピーを撮りにコンビニに行っている。もうすぐ戻るだろう。
「なんか、別の仕事で忙しくなっちゃったみたいよ。色々飛び回っているみたい」
先生が、原稿とにらめっこしたままの格好で答えた。
「またしばらく来れなくなるって言ってたな」と別のアシさんが言う。

モリヤマくんが帰ってきた。あれ以来、彼は心霊写真を持って来ていない。
それ故かその週の原稿も無事完成し、その帰り際モリヤマくんはおいらにだけ、そっと
耳打ちをした。

「今度、スズキに会わせてやるよ」

545 :おいら ◆9rnB.qT3rc:2009/12/09(水) 01:37:26 ID:iYJ4qfoc0
2/4
「どうも。スズキです」
この人物がそうか。先日のモリヤマくんの心霊写真に写っていた、スズキさんだ。
心霊スポットで撮ったという彼の写真。その影は、まさに悪魔そのものだった。
それを先生が不用意に口走ったために、白いものが部屋に飛び込んで来て大騒ぎに
なったのだ。
ちょっと小太りの、失礼ながらサエない風体の、おじさんタイプのこの人。
年はいくつだろう?モリヤマくんと中学で同級だったということは、まだ大学生だ。
悪いが、これがまた信じられない。こんな疲れた大学生がこの世に居るのか?
モリヤマくんが以前言っていた「魂が半分」という表現。確かにそんな感じだ。

彼の肩から、何かが出たり引っ込んだりしているのが見えた。何だあれ?

その後、二人がよく使うという喫茶店に入り、奥の席に陣取った。定位置らしい。
店のウエイトレスさんとも知り合いのようだ。
先日とは違う大量の心霊写真を見せて貰いながら、どこら辺のスポットがいいか、
どのポイントを狙えばいいか…そんな話をしているのを横で聞いていた。面白い。

彼らはいつも二人連れだって、心霊スポットを巡っている。スズキさんとは必ず二人
だけで出掛けるらしい。
率先してスケジュールを立て、機材の準備をし、精力的に現地に行こうとするのは、
決まってモリヤマくんの方なのだという。それもかなり頻繁に。
そして、現地で暫く写真など撮ったあと、こういってモリヤマくんが帰宅を促す。
「なかなか会えないな…。今日はこれで終わり」といった感じ。
スズキさんは彼に只々、付いていくだけだそうだ。

そのうち、ウエイトレスのお姉さんが近付いてきて、モリヤマくん宛てに電話がかかって
きたことを告げた。仕事が追っかけて来ているのだろうか?
「ごめん、電話だって。ちょっと行ってくる。適当にやってて。この写真もあるからさ」
モリヤマくんは別の写真の束を取り出し、テーブルに置いて行ってしまった。
スズキさんとおいらは二人きり、向い合わせに残された。

546 :おいら ◆9rnB.qT3rc:2009/12/09(水) 01:38:20 ID:iYJ4qfoc0
3/4
適当にやってろと言われても、いま一つ場が持たない。気まずい。
モリヤマくんが置いていった束の中に、以前見た「例の写真」もあることに気付いた。
仕方がない。それを指さしながら、あの夜の話をする。
「いやー、実はこの前、バイト先でこの写真を見てたとき、凄い目に逢いましたよ」
「彼に禁止されていたのに、これを見た先生がまるで悪魔だ!って言いそうにーー」

はっとした。今、おいら自分で何て言った?
…ヤバい!この写真の話をしてしまった。ウッカリしていた…。
あいつがまた来る…。白く冷たいやつが…。身を硬くして待った。
…だがあいつは来なかった。

スズキさんが、ははと笑った。
「…はは、そうですよね~。よくこの写真を見た人に言われてしまいます」
「それも僕が一人の時に、直接言ってくるんですよ。僕だって怖いし、ひどいですよね~」
え…?いま、この人なんて言った?言われる?スズキさんが、直接?

「あの…ちょっと聞いていいですか?」
「はあ…」
「そういう風にあなたに言った人に、何か起こったりしてます?」
「いえ」
「その時…なにも起こらない?本当に?」
「後からよく言われるんですよ。あの写真は凄かった。まるで悪魔だったって」
「でもその後、その人に何かあったとかいう話は聞かないです」
スズキさんはキョトンとした顔だ。

おかしい。何か変だ。

547 :おいら ◆9rnB.qT3rc:2009/12/09(水) 01:39:46 ID:iYJ4qfoc0
4/4
おいら達はあの夜、「悪魔」と言いかけただけで、あいつに襲われた。
一方で、この写真をどうのこうの言っても、あいつには遭わない人がいる。
この二つの違いは何だ?頭の中で整理してみた。

状況は3パターンある。
1・先生の家では、居たのは先生とおいらとモリヤマ。居なかったのはスズキ。襲われた。
2・スズキさんが直接言われたときは、居たのはスズキとそれを言った人。居なかったのは
モリヤマとおいら。その人は襲われていない。
3・今さっきおいらが口走ってしまったとき、居たのは言ってしまったおいらとスズキ。
居なかったのはモリヤマ。今、彼は電話のために外にいる。で、これも襲われなかった。

スズキさんが原因とは考えられない。「2」と「3」の通り、彼に直接それを言っても、
あいつは来ないのだから。つまり、スズキさんが怒って呼び出している訳ではない。
…ということは、あいつはスズキさんに憑いているモノではない。ということか。

…。
あいつが来るとき、そこにいる人物が一人居る。
その人物が居ないとき、あいつは現れない。

モリヤマくんだ。
彼はあいつが来るのを止められないんじゃない。

彼があいつを呼んだのだ。
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踏切

539 :おいら ◆9rnB.qT3rc:2009/12/06(日) 21:26:03 ID:2oTupN9A0
おいらが何人か知っている、「訳アリ」な女の子の話を。
宜しければ。

【踏切】
1/5
遮断機が降りている。
赤い点滅が辺りの闇を染め、のんのんのんのんと渇いた電鐘の音が鳴り響いている。
列車進行方向指示器の矢印が、「←」で光っている。K崎行きの上り電車が来る。
横に女性が並んだ。見たところ学生?大学の帰りか。急いでいるようだ。
チラ見すると、チェックのスカートから伸びる脚が、暗がりに赤く点滅して、眩しい。
独り身になってしばらく経つよな…。ああ、彼女がホスィ。

催眠効果でぼーっとした車が入り込まないように、点滅と鐘の音のタイミングは微妙に
ずらしてあると聞いたことがあったな。…まあいいか。
おいらとその女子大生は、そのまま待ち続けた。
その時から、少しぼーっとしていたのかも知れない。
…。
…。
おかしい。一向に電車の来る気配が無い。何分待たせるんだこの踏切?

右手にヘッドライトの明かりが二つ見えた。やっと来たか。
轟音をあげて、目前を通り過ぎるN武線上り電車。
乗客の数は多くない。夜の電車は車輌の照明で中の様子が良く解るが、妙だったのは、
乗っていた客がみんな、こちらを向いていたことだ。

540 :おいら ◆9rnB.qT3rc:2009/12/06(日) 21:27:08 ID:2oTupN9A0
2/5
おいら達を見ていた。
全ての車輌の全員が、こっちを見つめていた。
その何人かと、はっきりと目が合った。口を開け、何か言いたそうな顔をしていた。
ただ一人、最後尾の車掌さんだけ、後ろの方を指差していた。
「あれを見ろ」とでも、言いたげな顔をしていた。
赤い点滅と電鐘の音、電車通過の轟音の中、ぼーっとそれを見送った。

…何だったんだ今のは?…だめだ、イマイチ解釈出来ない。
点滅と鐘の音はまだ止まらない。また「←」の矢印が赤く光っている。
また上り電車かよ。この赤い点滅と音で思考に蓋をされた中、いい加減イライラしてきた。
横の女子大生が何かブツブツ言っているのに気付いた。彼女も結構イラついているらしい。
そりゃそうかも。

右手を見ると、今度は赤い光が二つ、近づいてきていた。
この時一瞬、思考が回った。おかしい。赤は尾燈の色だろ?遠ざかるはずだぞ?
しかし、その赤い光は確かにこちらに向かって来ている。
…あの光は電車じゃない。別の何かだと直感した。耳がキーンとしてきた。

すると突然、横の女子大生が遮断機を押し上げて、踏切の中に入り始めた。
「あ…危ないっすよ!」
流石においらも危険を感じて、腕を掴んで引き戻そうとした。だが、できなかった。
彼女はブツブツ言いながら、無理やり中に入ろうとしている。引き寄せられない。
女性とは思えない、すごい力だ。

右を見ると、二つの赤い光はもうそこまで来ていた。それは電車ではなかった。

541 :おいら ◆9rnB.qT3rc:2009/12/06(日) 21:28:34 ID:2oTupN9A0
3/5
大きな、黒い口だった。
赤く光る双眸が、おいら達を見下ろしていた。何だコイツは?
なんだかワニの口のように見えた。確かに爬虫類の感覚があった。何故かは判らないが。

ヤバい。彼女の腕を掴んだ両手に、渾身の力をこめて、こっちに引き戻す。
ビリリと彼女のブラウスが肩口から裂ける音がした。ブラウスの袖が抜けた。
彼女の腕はおいらの両手からすっぽりと抜けて…そのまま彼女は線路の上に踊り出た。

風を切り裂く音が耳をつんざく。バキバキグモバキ!骨肉が砕ける音がした。
その黒い口は、目の前で彼女を頭から飲み込み、そのまま走り抜けていく。
チェックのスカートと、そこから伸びた白い脚が、瞬間目に焼き付いた。
おいらはちぎれたブラウスの袖をもったまま、そいつが闇に消えて行くのを、茫然と
見送るだけだった。

訳がわからない。ただ目の前で女性が一人、線路をやって来た大きな黒い口に喰われた。
くそ、こんな事があったのに、まだ頭がぼーっとしている。動け頭。

電鐘の音が止む。遮断機が上がり始めた。
線路を越えた向こうに誰か居る。暗がりに目を凝らすと、ブラウスの片袖が無い。
さっき喰われた彼女だった。ポカーンとしている。

よかった…無事だった。思わず駆け寄った。
「大丈夫ですか?怪我とかしてませんか?」
「あ…あの、すみません、私…どうかしましたか?」と彼女。
自分が何をしようとしていたか、どうなったか覚えてないらしい。
こっちもまだ心臓がまだバクバクしていたが、息を整えながら、鈍くなった頭で経緯を
思い出せる限り説明してやった。

542 :おいら ◆9rnB.qT3rc:2009/12/06(日) 21:29:33 ID:2oTupN9A0
4/5
説明している間じゅう、不思議な気分だった。ばあちゃんや女の子の霊、ワケの判らない
モノは見たこともあるが、あんな怪獣のような具体的な化け物はこれまで見たことが無い。

それも、結果的に見ず知らずの女子大生を助けてしまうとは…。
一種、運命的なものを…感じちゃっていいのかしら?おいらw

「またやっちゃった…気をつけていたのに…」
彼女は胸の真ん中をギューっと握りしめた。…お守りか何かなのか?
またやっちゃったって?何なんだこの女子大生?

今の独り言を聞く限り…この子は「訳アリ」の部類に入る。曰く付きの…という意味だ。
「ブラウス、破いてしまってすみません」というと、「あ…」
今更、引き裂かれたブラウスに気付いて、恥ずかしそうに肩口を引き合わす。色っぽい。

取り敢えず近くの交番まで送り、名刺だけ交換して別れた。
思った通り女子大生だった。ミカドさんていうのか。大学のゼミの名刺だった。
「S大学民俗学フィールドワーク」もしかすると、ここも色々と訳アリなゼミなのかも
知れない。大変興味深い。

ただ、おいらはここで致命的な間違いを犯した。何と言うことをしてしまったのか…。
いまさら、どうしようもない。あの時、頭が冴えてさえいれば…と後悔した。
ヘコんだ。流石にその後、何日間か寝込んだ。

543 :おいら ◆9rnB.qT3rc:2009/12/06(日) 21:30:35 ID:2oTupN9A0
+++++
5/5
彼女の携帯の番号とメアドを交換するのを忘れた。

悔やんでも悔やみきれない。
流星の絆

ナイチンゲ-ル・スピリットで行こう。

カクシュ

531 :おいら ◆9rnB.qT3rc:2009/12/03(木) 21:46:55 ID:3RdLatZk0
先日、コトリバコ系の話を聞きました。
蠱毒にも近いかも。呪いの酒のお話。
宜しければ。

【カクシュ】
1/3
友人が以前、日本酒の酒蔵に見学に行ったとき、そこの杜氏さんが教えてくれたという話。
見学の後、旅館で宴会をし、そのまま二次会に入って、部屋で呑み続けるのが普通の流れ
だという。いつもは杜氏さんは一次会でお帰りになってしまうのが常だった。
あの仕事は朝早いから。
だが、今回出席された、そのかなりお歳を召した杜氏さんは帰られない。
聞くと、今年の仕込みも終わり、これで引退を考えているので、明日は休みを取ったとの
こと。杜氏さんと夜更けまで酒が飲めるなんて中々出来ることではない。
仲間は皆めちゃくちゃ喜んだという。
酔った勢いか、「ココにゃー、恐ろしい酒がある」と、杜氏さんが口を滑らせた。
皆即座に食いついた。

その酒蔵はT県にあり、純米吟醸としては、結構な石高を出しているところだが、そこの
蔵の奥の古蔵には、見るのも呑むのも禁止された、禁断の酒があると言うのだ。
「カクシュ」と杜氏さんは呼んでいた。
杜氏さんいわく、自分も飲んだ事はない。しかし若い頃、箱の封印を解いてその酒瓶を
見た事があるという。

杜氏さんの言ったことを要約すると以下の如し。
口の広い、白い陶器製のカメに入り、同じ陶器製の蓋がはまっていた。
それは大きな骨壷の様にも見えて、気味が悪かった。
凡字のようなものが書かれた細い帯で、何重にも厳重に封印されていた。
かなり古いもののようだった
振るとジャボジャボンと音がした。ゴツっという音も時折する。
蓋を開けると、何か骨のようなものが漬けられていた。
原酒のような、かなり高いアルコール濃度の酒のようだった。
匂いを少し嗅いでみると、気が遠くなった。
何かヤバい気がして、口をつけることが、どうしても出来なかった。

「そこまでしながら、どうして呑まなかったのですか?」と聞くと、畏れ多くて呑めた
ものでは無かったという。
杜氏さんはその後、当時の杜氏長に、めちゃくちゃ怒られたそうだ。
もう少し匂いを嗅いでいたら、呪いと毒で本当に死んでいたぞと怒鳴られた。
長は、若い杜氏さんに泣きながら説教したそうだ。

532 :おいら ◆9rnB.qT3rc:2009/12/03(木) 21:47:47 ID:3RdLatZk0
「なんだったんですか?結局?」皆は興味深深。
「変な動物の骨と角を漬けてあった」と、杜氏さんは答えた。

以下はその杜氏さんが杜氏長から内々で教えて貰った、その骨と角の話。
聞いた後、全て忘れろと言われたという。

1800年代。当時T県の山奥の村では飢饉に喘いでいた。時は天保の大飢饉の頃。
平地では食えるものは全て採り尽くしたあと、食用になるものを求めて、ある樵が山中を
さ迷っていたとき、山道の向こうから、牛と猿の合いの子のような動物がこちらにトコトコ
歩いてきているのを見た。
樵は思った。
丸々と太ったその動物を仕留めて持って帰れば、村全体が暫くは凌げる。
それともウチの家族だけで独り占めしようか。肉を塩漬けにすれば数ヶ月は持つだろう。
どうやって連れて帰ろうか?ここで殺すか?俺に卸せるのか?
樵の思案を読んだように、その動物は言葉を喋ったという。

「俺を喰っても美味くはないぞ」
「おまえの村に残っている小豆を、少し喰わせてくれたら、おまえの村を救ってやる」と。
樵は考えあぐねた挙句、取り敢えず村まで連れて行くことにした。自分独りでは、
この言葉を話す動物は、手に負えないと思ったから。
そいつは、お気楽な感じで素直にトコトコついて来たそうだ。

既に小豆など、とうの昔に食い尽くし、もう何人も食いぶちを間引いていた村人は、
樵の話などに耳を貸さず、早速にこの動物を殺して卸そうと殺到した。
十数人がかりで打ち据えた。
でも、その動物は鎚や鍬で頭を何回叩かれても死ななかったという。
腹を裂かれ、体をバラバラにされながら、その動物はずっと静かに呪いの言葉を唱えて
いたそうだ。
結局、その動物の肉を喰った村人は、じきにその全員が血と自分の臓物を吐いて死んだ。
その肉にありつけなかった女子供や、力の弱い村人だけが逆に生き残ったのだと。

その後、その動物の屍骸はどうなったか?
杜氏長の話はここまでだったという。
何故、忘れなければならない話を俺にしたのかと杜氏さんが問うと、アレを見た者はその
謂れを知る必要があるからだ。と杜氏長は言った。

533 :おいら ◆9rnB.qT3rc:2009/12/03(木) 21:51:09 ID:3RdLatZk0
3/3
酒蔵というものは、本来年貢として徴収されてしまうはずの米の、少しずつの上澄みを
小作から集め、酒にして売り、その金を小作に還元することが出来た数少ない庄屋さんが
前身の場合が多い。村人にとっては当時の現金収入は、何物にも変え難い。

それが本当の意味での「庄屋さま」だ。
故に、そういった酒蔵や醤油蔵は、今でもその地域の盟主であることがが多いのだと。
この酒蔵も例に洩れず、現在は政界財界に口が聞く、その道では知られた存在だという。

ワシはもう辞める。もう、あのカクシュがあるこの蔵に来ることは無い。
アレがあの古蔵にあることは、今の若当主も知らないかも知れない。
この話もあんたたちには関係がない。忘れてくれ。
あんたたちが騒いだところで、何の影響も及ぼすことは無いし、出来ない。
まあ、そもそもあんたたちはアレを見ていないからな。及ぼされる事は無い。
そう杜氏は哄ったという。

酒には呑む以外にも、幾つか用途がある。ひとつは消毒、ひとつは漬けた状態にしての
保存だ。昔は首級も実見に持って行く際には酒樽に漬けていた。

杜氏さんは杜氏長にこう言われたそうだ。
あのカクシュは呑むモノじゃない。あの骨と角を末永く保存するために、清く酒漬けに
してあるのだと。

いつか誰かが、何かの目的のために、それを使うことがあるかもしれないから。
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ヤマノケ

167 1/3 2007/02/05(月) 22:47:31 ID:uuWi3n130
一週間前の話。
娘を連れて、ドライブに行った。
なんてことない山道を進んでいって、途中のドライブインで飯食って。
で、娘を脅かそうと思って舗装されてない脇道に入り込んだ。

娘の制止が逆に面白くって、どんどん進んでいったんだ。
そしたら、急にエンジンが停まってしまった。

山奥だからケータイもつながらないし、車の知識もないから
娘と途方に暮れてしまった。飯食ったドライブインも歩いたら何時間かかるか。
で、しょうがないからその日は車中泊して、次の日の朝から歩いてドライブイン
行くことにしたんだ。

車内で寒さをしのいでるうち、夜になった。
夜の山って何も音がしないのな。たまに風が吹いて木がザワザワ言うぐらいで。

で、どんどん時間が過ぎてって、娘は助手席で寝てしまった。
俺も寝るか、と思って目を閉じてたら、何か聞こえてきた。

今思い出しても気味悪い、声だか音だかわからん感じで

「テン(ケン?)・・・ソウ・・・メツ・・・」って何度も繰り返してるんだ。

最初は聞き間違いだと思い込もうとして目を閉じたままにしてたんだけど、
音がどんどん近づいてきてる気がして、たまらなくなって目を開けたんだ。



168 2/3 2007/02/05(月) 22:48:10 ID:uuWi3n130
そしたら、白いのっぺりした何かが、めちゃくちゃな動きをしながら車に近づいて
くるのが見えた。形は「ウルトラマン」のジャミラみたいな、頭がないシルエットで
足は一本に見えた。そいつが、例えるなら「ケンケンしながら両手をめちゃくちゃに
振り回して身体全体をぶれさせながら」向かってくる。

めちゃくちゃ怖くて、叫びそうになったけど、なぜかそのときは
「隣で寝てる娘がおきないように」って変なとこに気が回って、叫ぶことも逃げることも
できないでいた。

そいつはどんどん車に近づいてきたんだけど、どうも車の脇を通り過ぎていくようだった。
通り過ぎる間も、「テン・・・ソウ・・・メツ・・・」って音がずっと聞こえてた。

音が遠ざかっていって、後ろを振り返ってもそいつの姿が見えなかったから、ほっとして
娘の方を向き直ったら、そいつが助手席の窓の外にいた。
近くでみたら、頭がないと思ってたのに胸のあたりに顔がついてる。思い出したくもない
恐ろしい顔でニタニタ笑ってる。

俺は怖いを通り越して、娘に近づかれたって怒りが沸いてきて、「この野郎!!」って
叫んだんだ。
叫んだとたん、そいつは消えて、娘が跳ね起きた。

俺の怒鳴り声にびっくりして起きたのかと思って娘にあやまろうと思ったら、娘が
「はいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれた」
ってぶつぶつ言ってる。

169 3/3 2007/02/05(月) 22:48:49 ID:uuWi3n130
やばいと思って、何とかこの場を離れようとエンジンをダメ元でかけてみた。そしたら
かかった。急いで来た道を戻っていった。娘はとなりでまだつぶやいている。

早く人がいるとこに行きたくて、車を飛ばした。ようやく街の明かりが見えてきて、
ちょっと安心したが、娘のつぶやきが「はいれたはいれた」から「テン・・ソウ・・メツ・・」に
いつの間にか変わってて、顔も娘の顔じゃないみたいになってた。

家に帰るにも娘がこんな状態じゃ、って思って、目についた寺に駆け込んだ。
夜中だったが、寺の隣の住職が住んでるとこ?には明かりがついてて、娘を引きずりながら
チャイムを押した。

住職らしき人が出てきて娘を見るなり、俺に向かって「何をやった!」って言ってきた。
山に入って、変な奴を見たことを言うと、残念そうな顔をして、気休めにしかならないだろうが、
と言いながらお経をあげて娘の肩と背中をバンバン叩き出した。

住職が泊まってけというので、娘が心配だったこともあって、泊めてもらうことにした。
娘は「ヤマノケ」(住職はそう呼んでた)に憑かれたらしく、49日経ってもこの状態が続くなら
一生このまま、正気に戻ることはないらしい。住職はそうならないように、娘を預かって、
何とかヤマノケを追い出す努力はしてみると言ってくれた。妻にも俺と住職から電話して、
なんとか信じてもらった。住職が言うには、あのまま家に帰っていたら、妻にもヤマノケが
憑いてしまっただろうと。ヤマノケは女に憑くらしく、完全にヤマノケを抜くまでは、妻も
娘に会えないらしい。

一週間たったが、娘はまだ住職のとこにいる。毎日様子を見に行ってるが、もう娘じゃないみたいだ。
ニタニタ笑って、なんともいえない目つきで俺を見てくる。
早くもとの娘に戻って欲しい。

遊び半分で山には行くな。


172 本当にあった怖い名無し sage 2007/02/05(月) 22:59:10 ID:sN6iWxmE0
>>169
大まかな場所はどの辺?

175 167 2007/02/05(月) 23:07:37 ID:uuWi3n130
>>172
宮城と山形の県境だ。

>>174
俺もネットでその漢字で調べてみたけど「ヤマノカイ」って読みしか出ない。
たぶん意味的には一緒なんだろうが。

190 167 2007/02/06(火) 01:27:22 ID:LtW/CGn10
>>188
今預かってくれてる住職が霊的にどの程度のもんなのかわからんから
それも迷ってる。実家の両親とかはいろいろあたってくれてる。
今のところは住職頼みだ。

>>189
いや、実況してる余裕もあまりないんでな。これで最後にする。
なんで道を外れたのか、今は後悔ばかりしている。その当時の精神状態が
すでにヤマノケに操られてたのかもしれない。なんて都合のいい考えか。
 
とにかく、遊び半分で山には入るな。彼女、奥さん、娘とかいるなら尚更。
本当にそれだけは言っておきたい。
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