2024年05月のうた 選 | 悠志のブログ

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ぷくぷくぷくぷくぷくぷく。


枝を折れ

 

 

この ほそい

枝を折れ

この硝子の枝を折って

胸を震わせよ

この心をつらぬけよ。

 


 


 

月があるしあわせ

 

 

夜空に月があるしあわせ

神は私の(ねが)いを

一つだけ叶えてくれた。

 

 

 

白い夜の室

 

 

宇宙を遠巻きにして

蒼い夜の(へや)には

冷たい藻のようなものが

揺蕩(たゆた)っている

天上に見える水面(みなも)

うつくしく

月に耀いてみえる。

 

 

 

夕日

 

 

水につかるように

あの夕日のひかりの中に浸かっていたいと思う。

 


 

夕焼け

 

 

風のつよい日ぐれ

枝々が烈しく炎えるように

ひかっていた。

 



やさしい雨

 

 

やさしい雨が

朝をいっそう美しいものにしている

軒端のしずくが

よろこびを湛えている

こういうやさしいもののお蔭で

私は生きている気がする。

 

 


 

 

部屋のなかにも

宇宙があるのだろうか

きょう

朝日の入る部屋の窓から

大きな雲が入ってきた

雲は私を呑み

切手ほどの裏窓から出ていった

私はいま空しいものとなって

坐っている。

 

 


激しい雨

 

 

はげしい

雨が

じいんと

痺れるように、止んだ。

 

 

ことり

 

 

聞いたことのない、小鳥の声がする

啼いている

啼いている

私も啼きたくなった。

 

 


夜の海

 

 

目をつむると

夜の海が広がっている。

 


私というできごと

 

 

夜は淋しいな

さむいな

いつしかうずくまり

冷たいはつ夏の

私というできごとのことを

ずっと考えていた。

 

 

 

夏の夕陽

 

 

夏になると

夕陽は疲れてつらそうにみえる。

 

 

 

雨をみた

 

 

きのう、雨をみた

生きているゆえの、

つらかったことごとをみんな雨の所為にしていた

それでいいと思っていた

 

まちがいであった。

 

 

 

野づらを歩けば

 

 

野づらを歩けば

自身が生きていることごとを

痛切に感じてしまう。

 

 


 

 

夏とは激怒の季節

硝子球がくだけちる季節。

 

 

 

小鳥になりたい

 

 

小鳥になりたい

空のうえでしんでゆきたい。

 

 


 

 

蠟燭の炎をみていると

胸が光りはじめる。

 

 

 

あぢさゐ

 

 

あぢさゐがあんな色で咲くのは

かなしいからだ

かなしい故に雫をまとい

うっすらひかりながら咲くのだ

あんなに群がっているのは

さみしいからだ

ひとりでは耐えられないから

互いに慰めあい

みんなで涕いているのにちがいない。

 

 

指田悠志

 

 

 

6月は、作詩をお休みします(詩集編集のため)。