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前回のお話はこっち
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夫は早起きになった
ちがう、寝てないんだ
常にうつろうつろした状態で
起きてるのか寝てるのかわからない
ただ、朝になるとブツブツ聞こえてくる
携帯とお話しているように
誰かと電話しているわけじゃなく
携帯に話しかけていた
「今日は天気がいいんだよ」
「おなか空いたね、何が食べたい？」
初めて聞いたときは
“他に女ができたの？”
と疑問に思った
でもまさか、浮気ができるような状態じゃない
それは私が一番よく知ってる
・・・
・・・
まだ日が登り始めたばかりの
寒い明け方
２DKの狭いアパートのカウンターキッチン
その換気扇の下で
タバコを吸いながら携帯に話しかける
それが彼の日課になっていた
こんな状態でも仕事には行く
「やめたいな」
とつぶやきながらも
先輩に紹介してもらった会社だから。と
頑なに出勤した
今思えば
無理矢理にでも辞めさせるべき
だったのかもしれない
それでも、出勤していく
寂しそうな笑顔だけを置いて
出勤していく
「やっぱり辞めさせたほうがいいんじゃ…」
こんなことを本気で考え始めた
ちょうど３日後
夫は倒れた。
・・・
・・・
私が出先から帰る途中
「ビールが飲みたい」
そう電話が入ったから寄り道をする
お酒が大好きだった夫
でもここ数ヶ月は全く飲まなくなっていた
久しぶりだから
ちょっといいビールを買った
夜、帰宅すると
すでに夫は倒れていた。
飲みすぎだ
数十本と重ねられた吸い殻の横に
１０本以上の缶ビール
私の脳裏に
【急性アルコール中毒】という言葉が浮かんだ
飲み慣れない人
免疫が少ない人が一気に飲むとおきる
あれだ
よほど辛いことがあったのか
浴びるように飲んだらしい
慌てて駆け寄ると
幸いにも意識は残ってた
ただ、この時はっきり覚えているは
「良くないことが始まってる…」
漠然とした感情だったものの
なにか良くない、
とても良くないことが始まっている
そんな確信があった。
～～～
いつか夫はいなくなるんじゃ？
～～～
それはいずれ現実になる。