私たちの間には
確かに愛があった。
一緒にいる時間は
温かくて、穏やかで
救われていた。
一緒にいながら
「安心できる」という感覚を
初めて知ることができた。
そのままでいられる時間だった。
そしてそれは
私の人生の中で
とても大きな出来事だった。
でも私たちは
“親密さ”との向き合い方が
違っていた。
私は
一緒に乗り越えていきたかった。
彼は
今が続いていくことを
大切にしているように見えた。
私は
“変化”の中に
安心を探して、
彼は“安定、変わらないこと”の中に
安心を置いていた。
安心できる形が
噛み合っていなかった。
見ている方向や
ふたりの関係に求めるものが
少しずつ違っていた。
彼に近づこうとすると
距離が生まれる感覚があって
その距離を埋めようとしていたけれど
私ひとりでは入れても
ふたりでは入れない場所があった。
私は
一緒にそこに辿り着きたかったけれど
彼には
入れないままの領域があった。
私は
自分が変われば
関係も変わっていくと
思っていた。
一緒に乗り越えていけると
信じていた。
でも
気づかないうちに
ひとりで踏ん張る形になっていた。
彼も彼なりに
この関係を守ろうとしてくれていたし、
私の感情の強さに
耐えてくれていた時間もあった。
それでも
それ以上の未来を
望んではいなかった。
そこに私は
最後まで立ち尽くしていた。
愛があったことと
続いていくことは
同じではなかった。
もし
お互いが
それぞれの傷を持っていなかったら
違う未来も
あったのかもしれない。
そう思うと
今でも少し切なくなる。
でもそれでも
これでよかった、とも思っている。
現実の私たちは
その形では
どうしたって
続けていけなかったから。
あの恋愛で
私は
安心を知り、
愛を知り、
そして
愛があっても
続かないことがあると知った。
