日々の撮影を通して、こども達から、たくさんの宝物をいただいている私ですが、撮影を通して、こども達に、「無言のメッセージ
」を送っていることがよくあります。
ただ、単に、「写真を残す」だけでなく、「おじさんは、君たちをこう思っているよ!」というメッセージを送っています。
日頃の撮影において、私は、とにかく「こども達を平等に撮ってあげたい」と思っています。
もちろん、私は仕事を通してこども達と接しているので、「平等に撮らなければ、あとでクレームのもとになる」という考えもありますが、クレームがどうした、こうしたということよりも、まず、「こども達に悲しい思いをさせたくない」という思いがとても強いです。
こういった思いが強いのは、私が若い頃、ずっと、大人や目上の人達から、平等に接してもらえなかったという辛い過去があるからなのですが、ほんとに、今となっては、こういった辛い経験がとても役に立っていると思います。
さて、日々、学校さんで撮影をしていると、様々な行事において「ブラスバンド部
」のこども達が演奏を聴かせてくれることがあります。
私は、こども達が一生懸命にがんばる姿がとても好きなので、真剣に演奏をしているこども達を見ていると、思わず涙ぐんでしまうこともあるのですが、素晴らしい演奏を聴かせてくれるこども達に、写真屋として恩返しをしたいという気持ちが強いです。
そういった中、ある小学校さんの運動会の最中、「ちょっとした出来事」が起こりました。
運動会というのは、「君が代」とか「校歌」、「表彰」、「入場行進」などで「ブラスバンド部」のこども達が演奏してくれることが多いのですが、狭いエリアに大きな楽器を持ったこども達が、密集しているので、集団の奥で演奏している子に関しては、とても撮りにくいのです。
「密集したこども達を、短い撮影時間の中で、極力目立たず、邪魔にならず、でも、全員をしっかり撮る」
とても難しいです。体力的にも、精神的にもヘトヘトになります。
ただ、そういった中、撮影中、ある女の子にカメラを向けていると、その子は演奏しながらも、チラッと、こちらを見たあと、スッと半歩ほど前に出たのです。
こういったブラスバンド部の演奏は、ただ単に演奏すれば良いというわけでなく、「見栄え」も重要視しています。その証拠に、学校さんによっては、運動会のあわただしい中でも、わざわざブラスバンド部用の衣装に着替えて演奏するところもあります。
そして、この学校さんも、わざわざ演奏用の衣装に着替えていましたし、ちゃんと美しく「整列」もして演奏していました。
でも、この子はあえて、列を離れ、半歩、前に出たのです。
「もしかして、この子は、俺が撮りやすいように、動いてくれたのかな?」と思いました。
そして、無事、その子を撮り終えたあと、私は、「撮れたよ!ありがとう!」という意味を込め、右手をわずかに上げました。
すると、その子は、先ほどとまったく同じように、チラッとこちらを見て、半歩下がったのです。
この子がなぜ、動いてくれたのかは、わかりません。
ただ単に、「写りたかった」のか、それとも、「撮りやすいように動いてあげよう」と思ってくれたのか、はたまた、その両方だったのか。
ただ、たくさんのこども達が、これまで自分にやってくれた様々なことを考え合わせると、都合のいい捉え方かもしれませんが「撮りやすいように動いてあげよう」と思ってくれたように感じました。
「こころ、通じたかな?」
私は、そう、感じました。
とても、嬉しい瞬間だったので、この時のことは鮮明に覚えています。演奏中にも関わらず、動いてくれた子はこの子だけではないのですが、「この子たちを、絶対平等に扱う!」「おじさんは、君たちの誰ひとりとして、ぜったい見捨てないよ!」と、ちょっとオーバーにも思える信念を、日頃から貫き通していることが報われた瞬間だったのかなと思っています。
私は、こども達を、「集団」としては見ていません。
あくまで、「ひとりひとりの集まり」として見ています。あの子も、この子もみんな同じように大切。何があっても平等。
こどもをたったひとりでも蔑ろ(ないがしろ)にすれば、全員からの信頼を無くすと思っています。
こども達は、「あの子を蔑ろにするってことは、いつか自分も蔑ろにされる」と心の奥底で感じるはずです。
だから、「おじさんは、どんな時でも、誰ひとりとして蔑ろにしないよ!」っていうメッセージを常に送り続けています。
そうすれば、ちょっと大げさですが、というより、かなり大げさですが、「上別縄さんは自分たちを絶対裏切らない!」というような信頼を得られると思っています。
なんにしても、大人である私がまず、こども達に大きな愛情をしめしてあげる。そうすれば、「大人の鏡」であるこども達は、必ず愛情を返してくれる、そう思っています。
(おわり)
今回も、読んでくださった方、ほんとうに、ありがとうございます。