対話 | On the White Line.

On the White Line.

リハビリ中WWA作成者の日記。映像は引退。

私の書く物語には、どうやらリアルがあるようです。

そのリアルについて博士はこういいました。


「現実ってのは痛いんだよ。痛くないのは夢なんだよ。

 物語においてリアルかそうでないかは、きっと痛みがあるかどうかなんだよ。」


そう白い壁と床の部屋で、椅子を付き合わせた博士はにっこりと言いました。




今日図書館で本を読んでいました。

Highly Sensitive Person ことHSPについて書かれた本を4時間ほど静かに読んでました。


そのなかに、そういう特性の人間はいくらか「政治的策略」を持つことが重要であるということがかかれてました。

政治的策略。嫌いなものです。自己の利益のために他人を利用することだ。

そもそも自己の利益なんて求めてはいけないんだ。それは傲慢なことだ。

それのために他人を利用するなんてますますいけないことだ。害悪だ。


しかしながら、処世術として重要であり、自分の心の中にすくなからずあるその要因に

耳を傾けることが重要である。と書いてありました。


「なら私が話を聞こう」

と、ここで、とあるキャラクターが顔を出しました。

高校生のときからずっと案があり、そして自由に喋ることが出来るレベルまで成熟したキャラクター。

そして、自分の中で、自分の対極の理想として、仕立て上げたキャラクターでした。


「驚いた。いつからそこにいたんですか。」

「貴様が政治的策略といえば私であると一瞬で判断したからな。」

「そうですけれども、どうして。話をきいてくれるんですか」

「貴様は作るだけ私たちを作っておいて、今まで話そうとしなかったからな。」

「それは私が話したところで、それは私からの問いかけであることに変わりはせず、

 それは結果として自分を甘やかすことなると思ったからです。」

「いや、私たちはお前の心情の極端な具現化であるが、その心情それぞれの見方は出来るはずだ。

 特に私のように、権謀術数を絵に描いたような人物はな。

 それに、貴様のことは、私がよく知っている。」


図書館の閉館時間になった。本を返却する。

そして、帰り道、少し「この人」と話すことにした。


「私には、政治的策略はあまりに汚いもののように見えてならないのです。

 それは感情のなく合理的に自己の利益をむさぼる判断じゃないですか。

 私はそのように行動している人物を見てほとほと厭になります。

 さっきまで自分に優しくしてくれた人物が裏で冷たい表情をみせるのを知るとき、

 私は人を信じられなくなるのです。」


「合理化とは、一番労力の少ないところで、最大利益を得ること。

自己の利益が一番最大になる点で判断することをいう。

それは経済学を学んでいる貴様がいちばんわかっているところだろう。

つまり、それは、無駄なことをせず、最短コースで一番自分の利益を得ること。

転じて、無駄な体力を消費せず、次の出来事に挑めるということだ。

その点では、利益の少ない物事を含む全ての物事に体力全体でぶつかっていく貴様は、

合理化の反対の面に居ることは確かだな。」


「しかし、最小利益いえども、無駄な物事などないはずです。

そのような利益があるか無いか、0か1かの両極端な判断は、いささか乱暴なような気がするのです。

最小利益でも、欲する人はいるのです」


「それなら、重要な案件のあとにやればいい。優先順位をつけるということはそういうことだ。

 それに、その小さな案件を解決するために、合理化のために体力を温存するのだ。

 次に繋がらない合理化など、ただ考えることをやめた怠惰な行動に過ぎない。

 それこそ、心の無い合理化だ。

 片付けなくても良い案件など確かに存在しないからな。


 それに、体力が続かなければ、案件など処理できない。

 合理化を実行することは、自分の身を守ることにも繋がる。

 無駄な体力を消費せず、温存することで、次の大きな案件に、ハイパフォーマンスで挑めるからな。

 時には休むことがもっとも良いと言うこともある


 貴様はときに『休むことは甘え』だというが、

 その状態で仕立て上げた案件を提出して許してもらおうとするほうがよほど『甘え』だといえる。」


腹が減ったので、その人とコンビニに入った。

その人は、

「なかなか美味そうなのがあるじゃないか。

 これとかどうだ?たしかサークルのあいつが好きだった飲料だ」とやや興奮気味に言っていた。

「あなたそんなにキャラの角がとれてましたっけ?」と質問したら

「ある程度の妥協は必要だ」と言っていた「これもある程度成長のうちだといって欲しいものだ。」

「確かに、最後、だいぶ角取れるように設定しましたものね・・」と言おうとしたが、口をつぐんだ。


地下鉄の改札からホームまでずいぶんと距離があった。

その距離も、ずっとその人と話していた。


「しかし、私は、時々そのような人を見ると、嫌悪を覚えます。

やさしいと信じていた人が腹黒だったとあとで噂で聞かされて、何度ショックを受けたことか。」

「それは貴様の中にある程度存在する腹黒さを知っているからだろう。

 それがいかに悪いことかと、最初に私に投げかけた質問のとおり、

 お前はそれに嫌悪を抱いているからだな。」

「いつか、その腹黒さが自分に発揮されるのではないかと思うと怖いですし、

 そんな表裏使い分けるなんて、なんだか公平ではなく卑怯な感じがするのです。」

「お前はいつも同じ人間から同じ優しさを享受できると思っていたのか?」


私は足を止めた。


「それはどういうことですか」

「貴様は道徳を履き違えている」

「・・・」

「貴様は、いつも人に優しくしているが、そうしないと優しくされないからとわかっているからだ。

 逆に言えば、優しくしていれば、優しくしてもらえると、思い上がっているからだ。

 お前は無償で優しさを配ることが道徳だと思っているが、

 貴様が、他人がときおりみせる冷たい面に失望や裏切りを見出すのは、

 それに見返りを求めているのが原因だ。

 無償の愛とは見返りを求めないものが本物だと言うのに。」


ホームに到着した。電車が入ってきた。


「逆に言えば、政治的策略を駆使している人間のほうが信用できると私は思うし、扱いやすいと思うがね」

「それはどういうことですか」

「そのような人間が貴様に利益を与えるとき、

 そのときだけは貴様が今与えている利益以上の見返りがあることを期待しているからだ。

 つまり投資だな。

 そのときばかりは、貴様を(多少の判断ミスはあれども)必要としていると言うことだからな。


 しかし、必要ないと思ったら相手から切られる。そうしたら貴様もそれが切り時だと判断すればいい。

 それ以上のつながりは相手にとっても必要ないし、

 相手が改心しない限り、腐心するだけ、体力のムダだ。」


電車が1駅、2駅と通過していく。

「うん、この飲料は美味いな。」とその人は言っていた。


「しかし、そのことが悪いベクトルに向かってるとわかっていたらどうすればいいんですか。」

「利用してやれ。」

「それこそ卑怯というものではないですか」

「痛みを通して知ることもある。むしろ、2,3イタイ目にあわないといけない。そうあるべきだ」


そのときばかりは、うーんそりゃどうだ、ど反論したくなった。

しかし、このひと以上に反論するほど、私は口達者ではなかったので、

この件に関しては宿題にしようと思った。

そうこうしているうちに、乗換駅に到達した。


「何で私のために奈々絵さんこんなに話してくれるんですか。」

「少なくとも私はお前の中に内在する意識として貴様と話す必要があると感じたからだ。

 キャラクターを生み出せども、そいつらと話すことを忘れている。

 もうすこし、別のやつと話したらどうだ。フェルトもリーフィーもいるし、三栄も安田もいるからな。

 それでは、私は失礼する。こんどは美味い茶でも用意してくれ」


そういうと、そのひとは、どこかに行ってしまった。


信じてくれないだろうが、不思議なのは、この人と話すとき、

私は「この人の言葉を考えてはいない」ということだ。

自分の話したいことはハッキリしているのだが、

この人の言葉は、「この人任せ」で、どこからか言葉が出てくる。

本当に会話している気分になった。


じゃあ、もう一人と喋ってみようか。という気分になった。


「で、僕に会いにきてくれたんだね!わあああ嬉しいなあ!」

と、松谷博士は喜びを爆発しながらやってきた。

こんなにこのひとテンション高かったかなあ。ちょっと調整ミスったかなあ。とふと思った。

「で、なに話したいの」

博士は身を乗り出して聞いてきた


「えっとですね、博士は自分の利益を求めることについて、どう思いますか。」

「そうだね。僕は別に利益とか幸せとかは目的のための副産物にしかすぎないんだよ。

 いや、副産物っていうのもおかしいなあ。産物に順位も無いからなあ。

 ああ、でも、目的が達成できたら利益ってことになるのかなあ。うーん」

「それについて、罪悪感とか感じ・・ないですよね。博士に限って」

「でもね、きみはすぐ他人目線に物事を見て、

 組織の利益は自分の利益。組織から逸脱する利益は協調性を乱すこと。

 みたいな仕事人間みたいな考え方をしがちだけど、

 ひとのための利益、って考えるよりも、

 自分のための利益、って割り切って考えたほうがらくだと思うよ」

「へ?」

「人をナントカしてあげよう。とか、人のことを思うと、余計な力と心構えが必要になっちゃうんだよ。

 それよりか、完全に自分のため。と考えたほうが、

 どうにもならない人の心理をいじるために複雑に考えたりするより、

 自分自身だけにベクトルを向ければいいんだから、よっぽどらくだと思うよ。」


うーん。宇田川君の心を奪うためUSBを作った博士とは思えない。

しかし、彼は彼の利己心の赴くままにそれを作り成功したことも事実だ。

けど、そこには宇田川くんの心はあるのか?


「自分の利益の中に、「相手の心」もそこに含まれていれば、それこそ最大の利益じゃん。

 それなら、自然と、相手の心も慮れるんじゃないのかな。そうしたら相手のほうからやってくる。

 つまり、相手の気持ちがほしいと言う「意欲」が「義務感」に変わらずにすむんだ。

 意味は一番君がわかっているでしょ?」


そういうと博士は小指を立ててくるるんとまわした。

この人は他のキャラクターよりもずっと乙女で素直で可愛らしかったりする。

けど、そういう側面があるものの、頬杖をついて、

大人の女性がタバコをふかすような大人の女性のような顔を見せたりする。

彼は男性だけど、そんな顔をしながら、私に向かってこういった。


「つまり、君は相手の心を感じて他人の目を気にすることをせずに、

 もっと利己的に、自分自身の利益を享受してもいいと思うよ。

 それが、君の心に内在するキャラクターとして言いたいことだったりするよ。」

「なんでそうなるんですか。

 確かに、賞をとったら、環境が変わると思っていたけど、何一つ、いい方向に向かないじゃないですか。

 むしろ、それが唯一の希望だったんです。とったら少しは私も認められる存在になると思っていた。

 しかし、扱いは何一つ変わらない。その乖離を改めて目撃し、それが埋められないとわかったら、

 それ絶望を見出すのも、仕方が無いじゃないですか。」

「けど、そうじゃないと、次への意欲は湧かないじゃない。

 そしたら新しいキャラクターが生まれないしね。」


「・・君は、今回の一件にひどく絶望しているけど、それは一つの可能性の結果が出たに過ぎない。

 けれど、これは、もう一つの可能性に集中できるということでもある。

 科学と一緒だよ。アプローチを変えて、もう一度別の研究、つまり行動が出せるんだ。

 絶望なんて無いんだよ。

 意味の無いことなんて起きないって、台詞を書いた君が一番わかってるじゃんか。」


「そうだけど。」

「けど、言わずとも、一番君がどうしたいかわかってるんじゃないのかな。

 そもそも、話しかけているのは君の内在の意識だしね。

 きっと君は確認したいだけなのかもしれない。」


博士がこの結論に至るときには、自転車で家の前にとめようとしたときである。


「そうですかね」

「もっと話してみたらどうかな。君は、ずっと、作り出せども、周りばかり気を配っていたからね」



家に着いた。そして、会話を記録することにした。

不思議なのは、本当に不思議なのは、私は博士の台詞など、全く作っていないことにある。