青い人の赤い指 | On the White Line.

On the White Line.

リハビリ中WWA作成者の日記。映像は引退。

人の血の匂い、って、そう滅多なことじゃあ嗅ぐことはない。
いや、自分の血の匂いだってあやふやなものじゃないかな。滅多に大量出血とかしないし。
けどね、不思議とね、人の血の匂いって、鼻につくの。やっぱDNAレベルの問題なのかねえ。

まあ、そんなことはいいとしてね、
他人の血の匂いを嗅いだのは、10月中でね。
帰路の電車に揺られていたところだった。
たしかとても疲れていた。まあ、疲れているのがデフォだから、特筆すべきでもないんだけど、さっさと座りたいな、と内心思っていた。

大学の最寄り駅は同じ大学の学生や地元の人でごった返すが、都心を突っ切る電車だから、いきなりたくさんの人がおりて、だいたいの確立で席の端っこに座ることができる。
それを狙って、電車に揺られる間寝てやろうと思っていた。

それで、都心の駅に到着し、いつものように人が降り、んで、席の端っこに座ろうとした。
けど、乗降が激しい駅だからね。走ってきた作業服を着た兄ちゃんに席を取られそうになったわけだ。
まあ、兄ちゃんもそれに気づいて、私に譲ってくれたけど、
まあ、ワシよりも作業服の兄ちゃんのほうが疲れてるだろうから席の端っこでなくてもいいやと思って、
しゃぁないからはしから二番目に座ったのよ…

なんだ?血の話なんて出てきやしないじゃないかって?
いつも通りアホみたいに回りくどいって?
いいじゃねえか。そういうのが好きなひともいるやもしれないだろ?
そういうニッチなところに新たなビジネスが生まれるのよ。

なに?これはビジネスでもなんでもねぇってか?
うるせえなあ、たとえだよたとえ。

ええと、どこまで話したっけか…
ああ、渋谷まできたんだった…

んで、二番目に座ってうとうとしてたわけだよ。
そんななかおもむろにに隣に座っていた作業服の兄ちゃんが目に入った。
その日は火曜日だったのかな。
ちょうど経営学で、「ブルーカラー」と「ホワイトカラー」の「カラー」は「color(色」でなくて「collor(襟」だ、ってことをやったばかりでね。それを作業服みながら思い出していた。

ホワイトカラーはスーツの色、ブルーカラーは作業服の色。
まあ、うまく言ったものね。しかし、どうして作業服って青とか緑なのかしらね。
オレンジや黄色だったら目立つから事故とか防げるんじゃないかしら…ああ、汚れが目立つか。
なんて、まあ、これは今思ったことなんだけど、作業服について眠い頭で思考を押し広げたわけだ。

そしてなんとなく、その兄ちゃんの手が目に入った。

手の甲全体が傷だらけで、痛々しく、その傷は新しいのがあれば古く赤茶がかっているところもあり
乾燥と粉塵で表面は白く粉を吹き、
指の関節という関節というところが秋口だというのにひび割れ、
本人は若いというのにまるで老人のようにしわしわな手だった。

私は絶句した。こんなに酷い手は見たことがなかった。

そのうち、その人はハンドクリームかなにかを手に塗ったのか、手に潤いが戻ってきた。
そのとき、ぷんと、血の匂いが漂ってきた。
強い匂いだった。
出血はしていないのに、不快にも感じるほどであった。

ふと思い出した。
この人は私に席を譲ろうとした。
手があんなになるまで働いて、痛くて、疲れて、仕方が無いはずなのに、どうしてあのような行動がとれるのか。
どうしてその人の目は輝きを失ってはいなかったのか

このような人々をなんとかするのが、今、大学に通って経営学を修める我々の使命なのではないか。
このような人々が今のこの国を土台として支えているというのに、蔑ろにしていいのだろうか。

電車から降りて、逐一噛み締めていくごとに、その思いは強くなり、労務関係の授業かゼミに行こうか、と、思った次第なのでした。