第94回「聖アンナと聖母子」の人物構成 | レオナルド・ダ・ヴィンチの小部屋~最後の晩餐にご招待

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レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画の謎解き・解釈ブログです。
2021年5月末から再度見直して連載更新中です。

 

推定年1508-10年

 

小羊をつかんでいるのが幼子イエスとすれば、

イエスを抱えようとしているのは、イエスの母の聖母マリアとなります。

では聖母マリアの背後は誰なのか?

 

  聖母マリアの背後は誰なのか?

 

聖母マリアに寄り添う人物は二人考えられます。

一人は、聖母マリアの夫の聖ヨセフ(イエスの養父)です。

 

 

ただ聖母マリアの夫ヨセフは、杖をつく老人で描かれるのが一般的でした。

レオナルドの作品の人物は、とても高齢のヨセフには見えないのです。

 

 

もう一人は、聖母マリアの母の聖アンナです。

 

 

聖アンナも高齢なはずですが・・・

幼子イエスを抱く聖母マリアと、聖母マリア抱く聖アンナの構成は古くにもありましたし、

レオナルドによる頭部の習作も残されています。

 

下矢印レオナルドによる、この作品の習作とみられる頭部の素描

 

レオナルドはミラノからフィレンツェに戻ったあとの1501年頃から、小羊と聖母子たちの構想の素描を描いていまして、

 

その1501年頃のレオナルドの構想を元に描いたとみえる、プレシャニーノの作品をみると、やはり背後の人物は聖アンナとみえます。

 

 

ただ、ラファエロもレオナルドの構想を参考にしたとみえる作品を1507年に描いているのですが、聖アンナではなく聖ヨセフでした。

 

ラファエロがレオナルドに出会ったのは1504年頃です。

レオナルドが「ある人物に別の人物を兼任させたり、通常の異時同図ではない異時同図といった多重の意味のある仕掛け施すこと」を、1505年には理解していたとすると、聖アンナではなく聖ヨハネの構成にしたのは気になる部分であります。

 

参考にしたのは1501年のこの素描ではなく、現存していない別の素描だったのか?

ラファエロのアレンジだったのか?

 

下矢印ラファエロとレオナルドに関する参考記事

 

 

  カルトンの聖アンナと聖母子の場合

冒頭の「聖アンナと聖母子」よりも先に描いた「聖アンナと聖母子と洗礼者ヨハネ」の作品があります。着色はされず、木炭と白のチョークで描かれたものでした。

 

 

これもタイトル通りでみれば、幼子イエスと洗礼者ヨハネと聖母マリア、聖アンナの構成となります。

でも洗礼者ヨハネは十字の杖を持ってないし、天を指す人差し指があるし、糸車の聖母や、ボッティチェリの影響からみて、これらには別の人物が兼任されていて、イエスの異時同図(幼児→子ども→大人)になっているといった考察を第69回以降にしてきました。

 

レオナルドの仕掛けに気づいていたラファエロも、ヴァチカンの署名の間の「アテナイの学堂」に、イエスの異時同図(幼児→子ども→大人)を加えていた・・・といった話にも続くのですが、かなり長くなりますので、詳しくは過去記事でお願いします。

 

要するに自分は、
カルトンの「聖アンナと聖母子と洗礼者ヨハネ」は、別の人物が兼任されていると考えているものですから、「聖アンナと聖母子」も、そのままではないと疑ってみているのです。

 

 

では、誰が兼任されているのか?

何のために描いたのか?

 

 

 

第95回に続く