連載回数も増えてしまいましたので、もう途中からしか読まれてない方のが多いようですので、今回は、レオナルドの作品に影響を与えた画家たちをざっくりとまとめます。
何故ならどの作品も、その1枚だけをみて解釈するのは、なかなか困難で、
レオナルドが何を描いたのか?を理解していくには、
レオナルドが誰の影響を受けてきたのか?
レオナルドやその周囲の画家たちがどんな作品を描いてきたのか?
初期からの流れを順に見ていくことが、理解を深めるのに必要だと思うからです。
ほんとにざっくり紹介しているだけなので、詳細は過去記事を読まれてください。
人物相関図①
人物相関図②
マザッチョとフィリッポ・リッピの異時同図法
マザッチョの「貢ぎの銭」 3人のペテロがいる普通の異時同図法
フィリッポ・リッピの「洗礼者ヨハネの生涯」「聖ステファノの生涯」
下の画像は、異時同図法で描かれた壁画全体のほんの一部分のみです。
この部分は、壁と壁の角度を利用しているのですよ。
ヴェロッキオとボッティチェリ 異時同図法の応用
レオナルドがヴェロッキオ工房に弟子入りしている時に、ボッティチェリも同工房に出入りしていました。
その時期に彼らが仕掛けたのが、三羽の鳥にイエスの生涯を兼任させるという、異時同図には見えない異時同図の「キリストの洗礼」。
「受胎告知」はギルランダイオとフィリッポ・リッピ
「受胎告知」は、フィリッポ・リッピの「聖母マリアの死の告知」とギルランダイオの「聖フィーナに死の告知をする大聖グレゴリウス」の影響を受けたもの。
「マギの礼拝」はフィリッポ・リッピとボッティチェリ
「マギの礼拝」は、先程のフィリッポ・リッピの「聖ステファノの生涯」の異時同図法と、
ボッティチェリの「マギの礼拝」の影響を受けたもの。
レオナルドのも上の画家の作品と同じで、「キリストの降誕とマギの礼拝」なのです。
さらに、ボッティチェリを真似て、現在の自身を右に、未来の年老いた自分を左に描いた。
「岩窟の聖母」は、フィリッポ・リッピ
「岩窟の聖母」は、フィリッポ・リッピの「洗礼者ヨハネの生涯」の異時同図法の影響を受けたもの。作品中のある一部分を移動させるのは、レオナルドの独自の仕掛け。
「最後の晩餐」とボッティチェリの「聖三位一体」
「最後の晩餐」は、異時同図法には見えない、レオナルド独自の異時同図法を成立させるのに、最後の晩餐の席上にマグダラのマリヤが必要でした。そこで12弟子のヨハネにマグダラのマリヤを兼任させるための位置関係に使ったのが、ボッティチェリの「聖三位一体」でした。
※最後の晩餐はとても長い~。第31回前後の過去記事をお勧めします。
「モナリザ」は、ボッティチェリの「神秘の降誕」から
「神秘の降誕」は、イエス降誕のテーマに、ヨハネの黙示録12章のテーマを重ねたものでした。
参考記事
1500年4月頃、レオナルドはミラノからフィレンツェに戻ってきて、
ボッティチェリが、ヨハネ黙示録12章のテーマを描いたことを知り、
ボッティチェリとは違う仕掛けを模索し生み出されたのが、現代では「モナリザ」と呼ばれる作品。
制作年:1503年頃~
また現在の「モナリザ」が出来るまでに、レオナルドが制作した数枚の作品は、依頼に乗じて、ヨハネ黙示録12章のテーマをどう表現するか模索する過程でできたものだと考えます。
1枚目は、カルトンの「聖アンナと聖母子と洗礼者ヨハネ」
2枚目は、「糸車の聖母」
参考記事
その「聖アンナと聖母子と洗礼者ヨハネ」に関連して、ラファエロの「アテナイの学堂」の話になり、その流れで「署名の間」の考察を第83回まで続けてきたのですが、一旦ストップして、元のレオナルドの流れに戻すことにしました。
1500年のレオナルド第ニフィレンツェ時代に戻ります。
次回は、「サルバトール・ムンディ」について考察したいと思います。
第85回に続く