1500年頃に制作したと推定され、1763年以降、行方不明となっていたのですが、1900年に一般家庭から発見されたものです。その間、塗り重ねや修復がされていたため、発見された当初のものは、現在のとやや容貌が違うものでした。
下の画像は、現代の技術で古く塗り重ねられていたものを除去し、修復で塗られたものです。
修復後、2017年オークションに出品され、510億円という破格の値段で売却され話題になりました。
またレオナルドの真作か? 工房の誰かのものか? 研究者の間でも意見が割れているようです。
この作品の一般的な概要については、ウィキペディアやまとめサイトを参照してみてください。
この作品がレオナルドの真作かどうかはさておき、レオナルドが1500年以降に、このような作品を描いたことは間違いないでしょう。
「サルバトール・ムンディ」とは、世界の救世主という意味になります。
右手は二本指を立てた祝福のポーズで、左手に世界(地球)を模した球体を持っているものです。
「サルバトール・ムンディ」のタイトルではありませんが、祝福の指と球体をもつポーズは、レオナルド以前からあるものでした。
人物は、イエス・キリストの風貌で描かれますから、レオナルドの「サルバトール・ムンディ」も、イエス・キリストの肖像として解釈されているのです。
でも自分はイエス・キリストとは思いません。
レオナルドの作品に度々みられるように、別の顔を持っていると思います。
これから数回にわたり、「サルバトール・ムンディ」を再考察していきます。
まずは、レオナルド以前と以後の作品をいくつか見てください。
レオナルド以前の作品
これまでに描いたことがないテーマのものを描く時は、以前はどんな風に描かれていたのか?と、過去の他者の作品を参考にするものです。
そこでレオナルド以前のものを探したのですが、今のとこ見つけたのは5点。
ここにあるのは、ネットで調べられる範囲の作品です。
レオナルドの当時には、もっと参考となる作品があったと思います。
フランドル地方、カスティーリャは、直接見た可能性は無いかな・・・。
ヴェネツイアは、ミラノからフィレンツェに戻る前に滞在していますので、まだ可能性はありそうですが、画家同士の関係性はみえないので、可能性の一つとしてみています。
レオナルド以後の作品
上3枚は、レオナルドの弟子です。
「サルバトール・ムンディ」を再考察するにあたり、レオナルド以前・以後の作品を見ていくと、やはり一番気になる部分は、「球体」です。
レオナルド以前の作品を見ると、球体は色あり、透明なのとありますが、どれも球体の上に十字架がついています。レオナルド以後の画家らも多くは十字架がついています。
レオナルドと弟子3人は、十字架がついてないのです。
十字架を無くした球体にしたのは、レオナルドが最初だと思います。
透明な球体で、十字架の無いもの。
ここにレオナルドのメッセージ性があると思うのです。
第86回に続く