第85回 「サルバトール・ムンディ」透明な球体 | レオナルド・ダ・ヴィンチの小部屋~最後の晩餐にご招待

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レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画の謎解き・解釈ブログです。
2021年5月末から再度見直して連載更新中です。

 

1500年頃に制作したと推定され、1763年以降、行方不明となっていたのですが、1900年に一般家庭から発見されたものです。その間、塗り重ねや修復がされていたため、発見された当初のものは、現在のとやや容貌が違うものでした。

 

下の画像は、現代の技術で古く塗り重ねられていたものを除去し、修復で塗られたものです。

修復後、2017年オークションに出品され、510億円という破格の値段で売却され話題になりました。

またレオナルドの真作か? 工房の誰かのものか? 研究者の間でも意見が割れているようです。

 

この作品の一般的な概要については、ウィキペディアやまとめサイトを参照してみてください。

 

 

この作品がレオナルドの真作かどうかはさておき、レオナルドが1500年以降に、このような作品を描いたことは間違いないでしょう。

 

「サルバトール・ムンディ」とは、世界の救世主という意味になります。

右手は二本指を立てた祝福のポーズで、左手に世界(地球)を模した球体を持っているものです。

「サルバトール・ムンディ」のタイトルではありませんが、祝福の指と球体をもつポーズは、レオナルド以前からあるものでした。

 

人物は、イエス・キリストの風貌で描かれますから、レオナルドの「サルバトール・ムンディ」も、イエス・キリストの肖像として解釈されているのです。

 

でも自分はイエス・キリストとは思いません。

レオナルドの作品に度々みられるように、別の顔を持っていると思います。

 

これから数回にわたり、「サルバトール・ムンディ」を再考察していきます。

 

まずは、レオナルド以前と以後の作品をいくつか見てください。

 

  レオナルド以前の作品

 

 

 

 

 

 

 

 

これまでに描いたことがないテーマのものを描く時は、以前はどんな風に描かれていたのか?と、過去の他者の作品を参考にするものです。

 

そこでレオナルド以前のものを探したのですが、今のとこ見つけたのは5点。

ここにあるのは、ネットで調べられる範囲の作品です。

レオナルドの当時には、もっと参考となる作品があったと思います。

 

フランドル地方、カスティーリャは、直接見た可能性は無いかな・・・。

ヴェネツイアは、ミラノからフィレンツェに戻る前に滞在していますので、まだ可能性はありそうですが、画家同士の関係性はみえないので、可能性の一つとしてみています。

 

 

 

 

  レオナルド以後の作品

 

 

 

 

 

上矢印上3枚は、レオナルドの弟子です。

 

 

 

 

 

 

「サルバトール・ムンディ」を再考察するにあたり、レオナルド以前・以後の作品を見ていくと、やはり一番気になる部分は、「球体」です。

 

レオナルド以前の作品を見ると、球体は色あり、透明なのとありますが、どれも球体の上に十字架がついています。レオナルド以後の画家らも多くは十字架がついています。

 

レオナルドと弟子3人は、十字架がついてないのです。

​​​​十字架を無くした球体にしたのは、レオナルドが最初だと思います。

 

 

 

透明な球体で、十字架の無いもの。

ここにレオナルドのメッセージ性があると思うのです。

 

 

 

第86回に続く