ピカソと並ぶ美の巨匠。没後アジア初の回顧展。」
キャッチがこれまたファンの心をくすぐるフランシス・ベーコンの展覧会、ずっと行きたかったのですが、東京国立近代美術館にようやく足を運んできました。

彼の作品は人間の内面に潜んでいる不安・痛み・狂気・叫び・暗さ・恐怖などのエネルギーをデフォルメされた人間の姿に具現化するという作風で、現代美術に大きな影響を与えた20世紀を代表する画家と言われています。それにしても上の写真の絵も、教皇が叫んでいる様を描いているようなのですが、迫力があります。。夢に出てきそうですね。
特徴的だった点をいくつか挙げると、まず、初期に描いた「叫び」の作品群では、人物が立方体の箱の中で叫んでいる構成になっていて、被写体(人物)と絵を鑑賞する人との間に確固たる隔たりを感じさせるために、あえて反射の強い透明のガラスで絵を覆い、展示されるようにベーコンはこだわったそうです。(「反射が強くて絵の前に立って鑑賞している人の姿が反射してしまうので見づらいですが、本人の強い希望があり、ご了承ください」といった断り書きがありました)

また、ベーコンは影響を受けた画家や映画なども独特の世界観でアレンジし、世に多くの作品を残しています。この写真、色合いや雰囲気に見憶えがありませんか??
はい、ファン・ゴッホです。この田園風景の温かみのあるゴッホの作品ですが、ベーコン風になるとこんな感じになります。これも夢に出てきそうですね。

これは今回の展覧会のポスターにも登場した「ジョージ・ダイアの三習作」。これも三幅対(トリプティック)と呼ばれる独特の作風で、証明写真をヒントに、別角度から同じ人物を描く手法を編み出したと言われています。モデルはベーコンの恋人だった女性ですが、この作品完成の数年後に自殺してしまいます。
展覧会では、インタビューに答える彼の映像も放映されていました。歴史上の人物とはいえ、映像に残っているのはなんとも不思議な感覚でした。彼は「いったいどんな風に(そんなにユニークな、常識を逸脱した)作品を書くのだ?」といった質問に対して、「デッサン(下書き)はなんとなくするんだ。そうしたらその時が訪れるのをじっと待つだけさ。それがいつ来るのかは分からない。でもそれが訪れたら、後は流れに身を任せてひたすら描くだけ。その時の記憶すら残っていないよ」 正確にメモしていたわけではないので語感が少し違うかもしれませんが、たしかそんなような言葉を注意深く、そして力強く話していました。

ロンドン郊外にあったアトリエとたたずむベーコンの姿です。途方もなく散らかっていますが、、、あの突き動かされるような迫力と熱量ある作品群の多くがここで生み出されていたわけです。
「目撃せよ。体感せよ。記憶せよ。」
は本当になるほどと思わさせられる内容でした。かなり癖のある作品ですが、東京は5月26日までらしいので興味ある方はお見逃しなく。人が絶望している作品のポストカードの買い過ぎには気をつけましょう。僕は冒頭に紹介した「叫んでいる教皇」を買い過ぎてしまい、使い道がないことに気付いて叫びそうになっています。