「近江八景」とは、古くから風光明媚な所として知られる琵琶湖の南西岸の8つの景勝のこと。

江戸時代の浮世絵師・歌川広重(うたがわ ひろしげ)の作品でも有名です。
 

明治時代の山田流の箏曲家、山登萬和(やまと・まんわ)作曲による山田流箏曲「近江八景」では、この8つの風景が、昼から夜になるような一日の移り変わりとして唄い込まれています。

 

次の8つで、これちなみに山田流箏曲「近江八景」に出てくる順:


 粟津(あわづ)の晴嵐(せいらん)

 矢橋(やばせ)の帰帆(きはん)

 瀬田(せた)の夕照(ゆうしょう)

 三井(みい)の晩鐘(ばんしょう)

 比良(ひら)の暮雪(ぼせつ)

 堅田(かたた)の落雁(らくがん)

 石山(いしやま)の秋月(しゅうげつ)

 唐崎(からさき)の夜雨(やう)


 

歌詞全文、こちら

 

 

譜面。

 

 

 

少し調べていたら、近江八景は、もともと中国の「瀟湘八景」からきているとのこと。 

 

中国の湖南省に位置する洞庭湖(どうていこ)に流入する湖南省最大の川である湘江(しょうこう)と、湘江に2000以上あるの支流のひとつである瀟水(しょうすい)が交わるあたりは「瀟湘(しょうしょう)」と呼ばれ、そのあたりの美しさを北宋時代の高級官僚・宋迪(そうてき)がこの地に赴任したときに山水図として画き、後にこの画題が流行し、やがて日本にも及んだそうです。

 

湘江は長江の右岸の支流で、長江はチベット高原を水源地域として東シナ海へと注ぐので、つまり「瀟湘八景」で描かれてる水の水源はチベット高原。比良比叡から流れ込む琵琶湖の水も素晴らしいけど、さすが中国の地理は規模が違う!

 

 

瀟湘八景は、すべて湖南省に属する次の8つ。

これみたら、近江八景はこの8箇所を完全に模倣していますね。

今の時代なら、海を超えて著作権で訴えられちゃうかな??



 瀟湘夜雨 [しょうしょう やう] :永州市零陵区萍島瀟湘亭。瀟湘の上にもの寂しく降る夜の雨の風景。
 平沙落雁 [へいさ らくがん] :衡陽市雁峰区回雁峰。秋の雁が鍵になって干潟に舞い降りてくる風景。
 煙寺晩鐘 [えんじ ばんしょう] :衡山県清涼寺。夕霧に煙る遠くの寺より届く鐘の音を聞きながら迎える夜。
 山市晴嵐 [さんし せいらん] :湘潭市昭山。山里が山霞に煙って見える風景。
 江天暮雪 [こうてん ぼせつ] :長沙市岳麓区橘子洲。日暮れの河の上に舞い降る雪の風景。
 漁村夕照 [ぎょそん せきしょう] :桃源県武陵渓。夕焼けに染まるうら寂しい漁村の風景。
 洞庭秋月 [どうてい しゅうげつ] :岳陽市岳陽楼区岳陽楼。洞庭湖の上にさえ渡る秋の月。
 遠浦帰帆 [えんぽ きはん] :湘陰県県城・湘江沿岸。帆かけ舟が夕暮れどきに遠方より戻ってくる風景。
 

 

 

今週末の社中の演奏会では「竹生島」という曲を演奏させていただきますが(滋賀県人冥利に尽きる)、「近江八景」そのほかの曲の解説MCを担当しているので調べてて、メモメモ・・ インターネットある時代さまさま。

 

歴史も地理も、高校生のときくらいに円覚えしてはその都度完全に記憶から抜けていきましたが、大人になって知ると、なんて面白いキラキラ 

 

でもって、パソコンで読んで見て知ったつもりになるんじゃなくて、自分の目で本物を観るのってほんとに大事だよね、と思う今日この頃。音楽だって、YouTubeとかで聞くんじゃなくて、目の前で生で聞いたら全然違うもの。

昨年末に少し味をしめ、今年は美術館巡りしたいなあと思っています。

 

 

 

↓京都国立博物館に行けば、相阿弥(そうあみ)による「瀟湘八景図」が観られるのかな・・?

 いや、このサイトの表示によると2015年に展示があって、今はもうないのかな、「大仙院」ていうところにあるのかな・・? 「大仙院」て調べたら、我が師匠のおうちの近く、大徳寺??

 

 

 


 

Songbird TAEKO

深尾多恵子