「イノセントワールド」「戦場のレクイエム」「ハッピー・フューネラル」のフォン・シャオガン(馮小剛)監督作品。
「唐山大地震」(2010年 監督/馮小剛 主演/徐帆、張静初)
135分
唐山大地震 [DVD]/松竹

¥4,104
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――1976年7月27日、工業地域の唐山を突如大地震が襲った。
方大強(ファン・ダーチァン)は崩れ落ちる自宅に取り残された子供を助けに行こうとする妻・李元妮(リー・ユェンニー)をかばってがれきの下敷きとなった。がれきの中から引っ張り出されたが既に絶命していた。双子の子供・方登(ファン・ドン)と方達(ファン・ダー)はがれきの下でまだ息がある。息子ダーの助けて助けてという声が聞こえる。そして娘ドンは声が出ないのか手にした石を叩きつけて助けを求めている。ユェンニーは必死になってがれきを持ち上げてくれるよう人々に頼むが、大きながれき一枚の両端に挟まれている格好の二人は、がれきの片側を持ち上げれば一人は引っ張り出せるがもう一人はその分の重みがかかるため助からないだろう。周囲はどちらかを選べと言う。あちらこちらで助けを呼ぶ声が上がり男たちも一人でも助かる方へ行ってしまう。ついにユェンニーは、「息子を助けてくれ」と叫ぶ――
[ここからネタバレ-------
がれきが持ち上げられドンとダーが引っ張り出された。ユェンニーはドンを抱きしめ弟の方を選んだことを泣いて詫びる。だがダーもぐったりしていて危険な状態だ。ユェンニーはダーをおぶって追い立てられるように軍の救護隊が来ている空港へ。
唐山には続々と救援部隊がかけつけた。命を落とした人々の遺体が並べられている広場で、ファン・ドンは目を覚ました。彼女はまだ生きていたのだ。隣には絶命した父の姿があった。そして母と弟の姿はどこにもない。ただ母の「息子を助けて」という声だけが脳裏に蘇る…。
唐山地震で親を失った子供たちは人民解放軍に保護された。
軍人の王徳清(ワン・ダーチン)と董桂蘭(ドン・グイラン)の夫婦には子供がいなかった。ワンはドンを養女に迎える。ドンは最初一切口を利かず名前も解らなかったためワン夫妻はヤヤと呼んで可愛がった。ドンも少しづつ心を開いていく。
10年後。ユェンニーは地震で左腕を失った息子ダーを女手一つで育てていた。片腕では収入の良い仕事にもつけずいいお嫁さんも来てくれないと心配なユェンニーは息子を大学へ行かせようとするのだが、ダーは授業をさぼってバイトに精を出す。そして大学試験は受けず、今急速に発展してきている深圳(シンセン)へ行ってチャンスをつかみたいといって家を出て行くのだった。
王登(ワン・ドン)は医師として働く母の影響で自分も医学の道へ進みたいと言う。だがこの近辺にいい医大はない。グイランは娘が遠くへ行く事に不安を抱え反対するが、ダーチンは娘の意思を尊重したいと好きにさせる。
ドンは遠くの医大へ進学、寮生活を送る。そして二年後、父が寮の部屋へやってきた。大学院生の恋人と一緒にいたドンは父の突然の訪問に驚くが、母が病に倒れ入院していると聞いてすぐに帰郷する。母は癌に冒され余命いくばくもなかった。そしてもう引き留めはしないから唐山へ行って本当の家族を探してみなさいと言うのだった…。
ドンは恋人の大学院生の子供を妊娠するが、恋人はあっさり堕胎しろと言う。この人は命の重みを解っていない…ドンは大学院生と別れ大学も中退し失踪する。ワン・ダーチンは大学へやってきて、ドンが行方不明なのに能天気に遊んでいる元恋人を殴りつける。
方達(ファン・ダー)はシンセン市で成功し小さな会社の社長になっていた。そして婚約者をつれて唐山へ帰郷する。一人で暮らす母を心配して都会で一緒に暮らそうと持ち掛けるが、母は頑なに唐山を離れないと言う。天国の夫と娘が毎年還って来る場所が必要だからと…。
そして幾年かが経った年末。退役軍人の集まりに参加していたワン・ダーチンの元に、行方不明だったドンがやってきた。小学生くらいの娘を連れている。ダーチンはどれだけ心配したことかと叱りつけ、そして戻ってきたことを喜ぶ。ドンは英語教師などをしながら娘を育て、そして知り合ったカナダ人と結婚することにしたと告げる。
2008年、四川省で大規模な地震が発生する。ファン・ダーの旅行会社も比較的揺れ客や従業員は逃げ惑うが、ダーはこんな小さな揺れは心配ないし、大地震なら逃げようもないと冷静だ。
カナダで暮らすドンはテレビで四川の大地震の惨状を目の当たりにし、居てもたってもいられず帰国、四川の救援部隊に参加する。同じ頃、ダーも会社のトラック一杯に救援物資を積んで社員総出で救援に向かっていた。
がれきに足を挟まれて動けない少女。母親は必死になってがれきをどけてくれと叫ぶ。レスキュー隊が救援活動を続けるが、その時余震が起こり隊員が負傷する。隊員はすぐさま助けられ運ばれて行った。その姿を見て茫然と立ち尽くす母親。そして少女に点滴を続けているドン。母親は叫ぶ、娘の足を切ってくれと。このままでは隊員らの命も危ない、娘がこの先いくら自分を怨もうともかまわないから足を切って引っ張り出してくれと…。少女は足を切断し救出されたが母親はいつまでも泣き叫んでいた。
自分の母がかつて自分を捨てて弟を選んだことへの恨みを抱えてきたドンは、母親の想像を絶するような苦しみを今目の当たりにしたのだった…。
救援活動は果てしなく続き、食欲はないが動くためにドンは配布される食事を喉におしこめる。彼女の近くでやはり休憩していた男性二人の会話が聞こえて来た。彼らも唐山出身で唐山地震の被害者だったようだ。彼らの昔話を聞くうちに、その一人が弟ダーだと気づく。
三十数年ぶりに姉弟は再会した。ダーは姉を母の家へ連れて行く。娘の姿を見たユェンニーは膝をついて詫びどれだけ想っていたかと泣き崩れるのだった。
翌日、家族皆で父ダーチァンの墓参りに行く。ダーチァンの墓の隣にドンの墓が作られていたが、もうこれは撤去しようとダーは言う。しかしドンは、いずれは還って来る時が来るのだから父母の傍に墓があるのは良いと、そのままにしてほしいと言うのだった。彼女の墓の中にはお骨の代わりに遺留品が収められていた。それはあの地震の日に母が買って来た学習カバン、そして教科書だった…。(終)------ここまで]
原作は張翎という人の小説「余震」(Aftershock)。原作のタイトルのように、地震そのものではなく地震のその後を描いてる。
物語は昭和の古き良き時代のようなセピア色の風景から始まる。でも10分そこらで大地震が起きて、その描写が本当にリアルで容赦ない。よくよく見直すと一部CGでできてるけど、ぱっと見全然わからないしとにかく表現が、非常に厳しい現実を突きつけられる。慈悲はない。
開始早々災害が起こって、その救出状況を描くというわけでもなくそこもあっさりと終わる。
この作品は地震の惨劇を描くのではなく、地震で引き裂かれた親子の心の葛藤とトラウマを描いた物語だからだ。
我が子の命の選択を迫られた母親、そして母親に「捨てられた」子。何十年も心に深く突き刺さっている矢じり。それを痛みと共に引き抜く物語。
期待を裏切らない本当に素晴らしい作品だけど、残念ながらこれは日本ではTV放送はされないだろうなと思う。冒頭の地震シーンがあまりにリアルで、東北の震災の記憶が未だ抜けない日本人にはツライ。そして子供が見たらトラウマになること必至。夢に出てきそう。
でも重ねて言いたいのは、この作品は地震ではなく人の心の葛藤を描いた物語。
命のかかった究極の選択を迫られた時に人は何をどう考えどう行動するのか、そして何を背負っていくのか。この辺りの描き方は
「戦場のレクイエム」に通じるものがあると思う。
そしてこの監督はやっぱり、伏線の敷き方が巧妙で素晴らしい!!最初のうちの何気ない行動がきっちり後で生きて来る、無駄がない、あらゆる場面に必然が隠されてる!
あとこれはお遊び的なものかもしれないけど、王登が父母に連れられて映画館へやってくるシーン、最後の最後に映ってる映画のポスターがチャン・イーモウ(張藝謀)監督作品。どうやら「紅いコーリャン(紅高粱/1987年)」のようだ。
主演のシュイ・ファン(徐帆)はフォン・シャオガン監督の奥さんらしい。彼女がやはりすごい。そのリアリティある芝居に心わしづかみにされ序盤から最後までもう泣き通し。
そしてまぁ、その風格の時点で目立ってしまうチェン・ダオミン(陳道明)。ええお父さんすぎやしw
若い頃には理解できない気持ちを歳とってからやっとわかるというシーンが可笑しいくらいに何度も出て来る。子供が独り立ちしていくのが心配でたまらない母親の気持ちは、年老いた母の一人暮らしが心配だと思う息子の気持ちと実は同じ、ということに目から鱗が落ちる思い。まだまだ私も若かった…。
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TSUTAYA DISCAS2枚ずつしか借りられない。そしてひと月に4枚借りねば損…。
20勝15敗4引分け。