世界的美女ファン・ビンビン(範冰冰)主演、フォン・シャオガン(馮小剛)監督作品。
「わたしは潘金蓮じゃない」(2016年 原題「我不是潘金蓮/I am not Madame Bovary」 監督/馮小剛 主演/範冰冰)
138分

※日本語版はまだありません。
潘金蓮(パン・チンリェン)とは中国古典「水滸伝」「金瓶梅」に出てくる悪女で、不倫女、あばずれという意味で用いられる。英題のMadame Bovaryもフランス文学「ボヴァリー夫人」という不倫物語のヒロイン。
――ある日弁護士の王公道の元に一人の女がやってきた。田舎臭い恰好をしたその女は彼の遠い親戚にあたる李雪蓮だと名乗る。彼女は離婚調停を依頼したいとやってきたらしい。曰はく、離婚すれば社宅のマンションが夫の秦玉河のものになるため法律上の離婚をしたのだが、マンションが手に入りいざ再婚しようとしたら玉河にはもう他の女がいた、裏切られたと。…法律上の離婚が成立しているなら離婚したいとはどういう意味だと聞くと、雪蓮はもう一度元夫と結婚して、それからまた離婚するのだと言う。
要するにこの女は元夫にいいように騙されて離婚させられ、元夫は晴れて愛人と籍を入れたという事のようだ。法律上は問題がなく、マンション目当てに嘘の離婚をしたと言うならそれは悪意を持って世間を騙したことになり裁判では絶対に勝てない。
王公道に諦めろと言われたが李雪蓮は裁判を起こす。雪蓮は玉河とは嘘の離婚をしたのであって本当に離婚するつもりはなかったと訴えるが、手続き上は間違いなく離婚が成立し証拠も証人も揃っており訴えは却下された。
李雪蓮は不当な判決だと逆恨みし、裁判官が賄賂をもらっていたのだと法務局の局長に直訴するが、局長は証拠があるのならしかるべき手続きを踏んで提訴しなさいと追い払う。
逆恨みが止まらない李雪蓮は県長や市長にまで直訴し(※省>市>県なので市長の方が偉い)、やがて公務執行妨害で逮捕された――
[ここからネタバレ--------
出所した李雪蓮は秦玉河の元へ。自分を捨てて他の女と結婚した玉河を責めるが、玉河も雪蓮が結婚当時既に処女でなかったことを引き合いに出してお互い様だとなじり、お前の名はリー・シュエリェンであってパン・チンリェンじゃないだろうと言い捨てる。夫からあばずれ呼ばわりされたことがさらに彼女の憎しみを増大させた…。
李雪蓮は弟の元へ。秦玉河を殺すのを手伝ってほしいと頼むが馬鹿な事をと止められた。そこで次に知り合いの肉屋の胡の元へ。秦玉河を刺殺する手伝いをしてくれたら体を許してもいいと言う彼女に胡は喜び応じるが、秦玉河だけでなく裁判官、法務局長、県長に市長まで殺すと言われて唖然とし断る。
これ以上は誰に訴えればいいのか…李雪蓮は北京へ。幼馴染で今は北京の一流ホテルのシェフを務める趙大頭を頼って身を寄せる。すると近日このホテルでお偉方の集会(共産党の大会?)が開催されるようだ。なんと雪蓮はその会合のトップに直訴した。たかだか一個人の離婚問題をわざわざ首都北京にまで訴えに来るとは地方公務員の仕事がなっていないと首長は怒り、よくよく改善するようにと各省長市長を厳しく叱りつけた。
しかしやはり法律上離婚が成立しており、再審でも結果は変わらず李雪蓮はその後も幾度も高官に訴えるという騒ぎを繰り返した。
そして10年に一度の集会が北京で開催される年になった。省長、県長は大事な集会にまた李雪蓮が来て騒ぎを起こしたら今度こそ首が飛ぶと、厳重に彼女を見張らせる。
李雪蓮の元に趙大頭がやってきた。昔から彼女に想いを寄せていた大頭は雪蓮に結婚してほしいとプロポーズするが、なら北京へ行くのを手伝ってほしいと言われた。大頭は見張りの男らを宴に招いて酒を飲ませ、酔いつぶれたところを雪蓮と一緒にバイクで逃げ出した。
北京へ向かう道中で大頭に迫られた雪蓮はついに体を許してしまう。大頭からもう秦玉河の事は忘れて故郷へ帰り幸せに暮らそうと言われ、そして潘金蓮のように結局他の男に気持ちを許してしまった自分に玉河を責める権利はないと感じた雪蓮は大頭の言う通り故郷へ戻ることに。
だが、実はこれは法務局が李雪蓮を北京へ向かわせないために練り上げた作戦だった。法務局から依頼され、また本当に雪蓮を愛していた趙大頭が協力したのだ。その事実を知って雪蓮は怒り飛び出していった。
またもや李雪蓮が行方をくらましたと知らされ市長は真っ青。集会まで時間がない。彼女は必ずや北京へ向かう、北京へ通じる道路交通機関を全て検問させた。乗り合いバスで北京へ向かっていた雪蓮はIDカードを盗まれた上に病気で動けないと言い繕う。すると病院へ運ばれたが入院費が支払えない。病院職員監視の下、親族を探して北京の市場へ。そこでついに警戒中の警察に見つかり捕まった。暴れる雪蓮は、しかし秦玉河が数日前に交通事故で亡くなったと聞かされその場に泣き崩れるのだった。
秦玉河への恨みが生きる活力と化していた李雪蓮は全てを失い、首を吊ろうと果樹にロープをかける。すると果樹園の持ち主がやってきて、こんなところで死なれたら迷惑だから、そんなに死にたいならライバルの果樹園で首を吊ってくれと指し示すのだった…。
さらに月日は流れた。定食屋で働く李雪蓮に客の男が声をかける。それは彼女が最初に北京で直訴を起こしたためにクビになった元県長だった。お互いいろいろあったようだがそれなりの生活しているようだなと言う彼に、李雪蓮は真実を話す。マンションの権利目当てに離婚再婚と言っていたが、本当は子供のためだったのだと。中国の当時の政策では二人目の子供を産むことは法律で禁じられていた。彼女と秦玉河には子供がいたが、どうしても二人目が欲しかった彼女は妊娠して離婚したのだ。既にいた子供は玉河が引き取り、出産後再婚する…その約束だったのに玉河は別の女と結婚、裏切られたショックで雪蓮は流産した。生まれてくるはずだった子供のためにずっと戦っていたのだと彼女は言うのだった。(終)-------ここまで]
おっおー、さすがフォン・シャオガン監督と言うべき最後のオチ!毎度お見事だわー。
主演がファン・ビンビンでタイトルがこれだから絶世の美女が男らを手玉に取ってくラブコメかと思うじゃない、全然違う!ファン・ビンビンが演じるのは美女ではなくごく普通の冴えない女、でも本っ当にメンドくさい女、モンスター訴訟人。モンスター〇〇を相手にすることのある職業の人はこれはなかなかに胃がしめつけられる作品です…本っ当メンドくさいな!(´Д`;)
常人には理解しがたい行動をとる彼女を客観的に見ている故に可笑しさを感じるけど、これ当事者にはなりたくないわー。話は全然違うけど
「嫌われ松子の一生」を彷彿とさせる…。
田舎の一人の女の理不尽な主張に地方の首長から法務局から果てには政府高官までが翻弄されるさまを描き、中国の統制の穴を指摘するシニカルな作品。ある意味コメディ。
主人公の李雪蓮が本当にマッドな女で見てる側としては彼女ではなく翻弄される周囲の人々に同情してしまうのだけど、最後の最後にオチが明かされると途端に「むむぅ…。」と考え込んでしまう。この最後の瞬間を見るために二時間以上を費やすのはどうかと思うかもしれないけど、でも見事なので是非!
そして物語以上に印象的なのがその画面。スクリーンの1/3ほどしかない円形の窓から覗くような格好で始まる。どうやら李雪蓮の地元での物語はこの円形の窓で展開し、北京のような都会に着くと今度はスクリーンの半分くらいの大きさの四角い窓に。どういう意味と効果があるのかはよくわからなかったけど、窓が小さいほど"より他人事っぽく見える"ように感じたかな。
しかしファン・ビンビン見直した。中国一の大女優って騒がれてるのも西洋ウケする顔立ちしてるってだけで所詮若さが売りのモデルでしょと思ってた、いやいや顔無しでも(ほぼノーメイク)ちゃんとお芝居できる子なんだーって。
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原作の小説。