常遠の断罪を早まる楚王寧弈は空席の御史台(監察官)に立候補した。御史台はその性質から政を執ることはできない、つまり皇太子にはなれない。今まで寧弈を皇太子にするために動いていた辛子硯は彼の勝手な行動に憤る。
* * * * *

「殿下…。楚王!」
「うん?」
「寧弈!貴方はよくよくじっくり考えると約束したじゃないか、貴方のこの斟酌は何だ、まったく相談もなく一人で勝手に行ってしまって!」
「おれが御史台にさえなれば常氏を倒す機会を得られるんだ。」
「常氏を倒す!?陳紹が常氏に命じられて林任奇を殺したと言ってるだけで(*1)証拠は!?」
「おれはもう御史台になったんだ、証拠は、正々堂々と(職務として)調べられる。」
「貴方はッ!貴方は御史台を任されることが何を意味するか分かってるのか?御史台に入ったということは後継者を争う資格を失ったという事だ!常氏を倒すチャンスはこの一回きりじゃない、なぜ今回にと焦る必要が!?」
「国に法が無ければいかにして国を治める?(無法を許せば国は治まらない)、民が生活できず何をもって帝を称える?(治める民がいてこその皇帝だ)」
「本当にあの陳紹ごときで常氏を倒せると言うのなら、じゃあこの辛子硯が陳に姓を変えてくれる!おれは陳子硯だ!!」
「木は既に船になったのだ!(*2) 子硯、さあ手伝ってくれよ。おれはすでに手掛かりを見つけたんだ。」
寧弈は魏知が描いた弓矢の絵を見せる。
「見たことない!」
「おい、お前の度量は三兄には及ばないな(*3)、こんなちょっとした小さいことでそんな風に怒るとは。わかったよ、おれは三兄のため(の目的を果たすため)にお前に謝りはせんが、今後はどんなこともお前と相談する、それでいいだろう?」
「…小さいこと?貴方はそれを小さいことと言うのか!?貴方は敢えて三兄を持ち出しておきながら!私は貴方の三兄に面と向かってこの口で彼の頼みに応えたんだ、貴方を明君とするための手助けをすると。なのに貴方は!貴方は一時の勝利(の快さ)のために後継者の位から離れてしまった、私はあの世で寧喬さまに合わせる顔がない!!(*4)」
「子硯、子硯。」
「…もういい。その絵の弓矢は大悦の辺境のある小さな部族の特殊な弩だ、師匠の元にいた時に見た事があるよッ!」
「…わかった。大悦の辺境ね…。」
*1 直訳:陳紹は自ら常氏が彼(自分)の手を借りて林任奇を殺したと称している。
*2 物事がすでに定まり元へ返すすべもない、後の祭りという意味の熟語。
*3 直訳:あなたはやはり私の三兄のあの寛大さには及ばない。
*4 直訳:あなたは私に将来どうやって寧喬に会いに行かせるつもりだ。
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辛子硯が初めてキレるシーンですね。この後何度もキレることになるんだけど…。
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