羅曼蒂克消亡史 | あさひのブログ
名優グォ・ヨウ(葛優)主演の近代劇。

「羅曼蒂克消亡史」(2016年 監督/程耳 主演/葛優、章子怡、浅野忠信)
125分

※日本語版はまだありません。

羅曼蒂克はロマンチカromanticaの中国語表記。上海のとある豪商が戦争によって華麗な生活を失うさまを、芸術的に描く。

――1930年代上海。豪商ルー(陸)は冷静冷徹な判断である時は財力で、ある時は武力で今の地位を維持していた。今上海にも日本が戦争をしかけてくるという噂があり人々の不安を煽っていた。ルーの妹夫の渡部は日本人だが上海暮らしも長く、ルーの良き参謀であった。
ある日日本の銀行がルーの銀行に取引を申し込んできた。それを知った渡部は、日本人は戦争と侵略しか頭になく災厄の原因にしかならない、日本と取引はしないほうが良いとルーに忠告する。ルーも今の情勢での日本との取引は益にならないと考え、取引交渉に来た日本人には丁重に断りを入れた。
断られた日本人は、ルーさえ消せば他の者となら交渉が進むと判断し、ルーを暗殺することを決める。――

[ここからネタバレ--------
日本人はルーの邸宅の家政婦長を殺害し脅しをかけてきた。ルーの上司で社長のワン(王)は、やはり日本は力づくで来るのでここは言う通りにするしかないと告げる。
再度交渉のテーブルについたルーを、日本人は射殺しようと銃を取り出す。同時に建物の外では日本人の手の者がルーの護衛らに向かいマシンガンを放つ。渡部が応戦しルーは退避したが渡部は射殺されてしまった。
ルーが邸宅へ戻ると、屋敷の者は全て射殺されていた。ベッドの下に隠されていた渡部の二人の息子だけが生き残っていた。ワンはしばらく上海から離れるようにとルーに金を渡し、ルーは渡部の息子達を連れて香港へ避難する。

時を遡る事三年前。ワンの新しい妻のリウ(小六)は新婚の身でありながらダンス教師と不倫にふける。事態はすぐ発覚したが老いたワンは事を荒げずとにかくリウを大人しくさせろとルーに命じる。ルーは暇を持て余しているリウのために手を回して上海一の劇団の看板女優の座を与える。みんなにちやほやされて満足するかに見えたリウだが今度は俳優と不倫しそれが明るみに出てゴシップ騒ぎに。さすがのワンも世間に対し面子が立たなくなり、リウと不倫相手を抹殺したことにして二人を上海から遠く離れた蘇州へ送り出すことに。リウは渡部の車で慣れ親しんだ上海の地を離れる。
だがその道中、渡部は突然車を停め運転手らを射殺、リウを強姦した上で上海へ連れて帰り自宅の地下室に監禁する。渡部は外では妻と子供を愛し上海人として生きるルーの忠実な部下を演じ、その実はリウを性奴隷としさらには日本軍と内通し上海を乗っ取ろうとする日本のスパイだったのだ!

ルーの暗殺時に射殺されたに見えた渡部だがそれは日本人との打ち合わせ通りの芝居だった。
その後渡部は日本軍へ戻りフィリピン戦へ赴き敗退する。そして終戦を迎えた。渡部は投降して生き残る道を選ぶ。
上海へ戻ってきたルーは収容所でリウを発見する。リウから真実を知ったルーはフィリピンの日本人捕虜の収容所へ向かう。渡部と再会したルーは身元引受人となってここから出してやると言うが渡部はルーや中国人を罵倒する。ルーは窓の外を見るよう促す。そこにはリウや大きくなった渡部の二人の息子の姿が。そして目の前で息子の兄の方がルーの部下の手によって射殺された。渡部は愕然とし、そしてすぐにルーが身元引受人であるという証文にサインする。外へ出た渡部は冷たくなった息子の亡骸を前に、残った弟の方に収容所へ行って自分は日本人だと言えば日本に帰れると言い聞かせる。弟は収容所へ走って行った。そして渡部の胸を、リウの放った銃弾が貫いた。(終)
-------ここまで]

いやー後半怒涛の展開に息つく間もなく。
これは好きな人は好きなはず。玄人向けのアジア映画。この静けさ、トーンはとても日本映画に通じるものがある。文学的人間ドラマ。
特に前半は物語の主筋とは関係なさそうなセリフやシーンが続いて先が読めないのだけど不思議と退屈ではなく、なにかしら不穏な空気が底を漂っていて目が離せない。そして後半になると時系列が激しく行き来しながら、衝撃の真実が明かされる。

全般通してセリフや会話そのものは人物の心情を描いてはいなくて、ほぼ画面だけで人々の心情を表す。カット割りにしてもカメラアングルにしても、印象に残る・印象に残す撮り方を重ねてストーリーを語る。なので最初は特に意味があるかもわからない会話やシーンが続くけどそれが後半にフラッシュバックして意味を成していくというミステリ的構造。
この監督、物語とは裏腹に日本が好きなんだろうなぁ。日本の文化の描き方が、すごく「外国人が好む日本」。日本の文化の美しい所を切り取ってて、リアルからはちょっと遠ざかるけどこれを見せたいというこだわりを感じる。

しかしまぁ、この映画はひとことでまとめるならば、とーにかく人が死にまくる作品です!!(´Д`;)バトルロワイヤル
ただそれがやけに静かで文学的で美しく撮られてる。
金と権力を持つ者の感覚が麻痺しているということを表しているようにも取れるけど、同時に、怒りとか哀しみとかの感情が激しすぎて閾値を越えると逆に声も涙も出てこないっていう放心状態を描いているようでもあり。
見終えた後に、確かにタイトルは「羅曼蒂克消亡史」で間違いないと、これ以上相応しいものはないと納得。失ったものは美化されて記憶に残る。ロマンとは失ってしまったものを懐古するための言葉なのだろう。しかしいくら懐かしんでもそれは決して取り戻すことはできない。

主演はグォ・ヨウということになってるけど、出演時間で言えばチャン・ツィイー(章子怡)と浅野忠信の方が長いかも。ただ、やっぱりグォ・ヨウの演技は凄い存在感。この作品ではぶっちゃけ終始ポーカーフェイスだけど、なのにいろんなざわめく感情が伝わってくるのは脚本やカット割りの力か彼の芝居力なのか…ともかくこの陸先生はハマリ役!
チャン・ツィイーは、お美しいですね、ハイ。男性が喜びそうなシーンもありますよ。
で、浅野忠信。日本人だけど上海人と結婚し上海人として生きる男の役。前半は他の人物の中に埋もれてて、でもまぁ何かしらキーパーソンになって来るんだろうなという予感はしてたけど、後半大活躍(?)。彼の"お芝居"は、もう一回最初から見直したくなることでしょう。


YOUKU
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長いものに巻かれろ