活きる | あさひのブログ
ちょっと、いや、かなり古いけどグォ・ヨウ(葛優)の主演作品を。

「活きる」(1994年 原題「活着」 監督/チャン・イーモウ 主演/グォ・ヨウ)
181分(※特別版。元々は122分の作品らしい)
活きる 特別版 [DVD]/コン・リー,グォ・ヨウ

¥5,076
Amazon.co.jp

原題の「着」という字は「~し続ける」「その状態が続く」という意味。
チャン・イーモウ(張芸謀)は中国の大ヒットアクション映画「HERO」「LOVERS」の監督。私はああいう作風のはあまり好きではないので若干不安だったけど…。

――1940年代。徐福貴は資産家の息子だが賭博癖があり、ある日とうとう全財産を賭博ですってしまい屋敷は龍二に取られてしまう。龍二はかつては卑しい影絵師として生計を立てていたことがあり、金を借りに来た福貴に同情して彼に影絵芝居の道具一式を譲ってやる。
福貴は老いた母と妻を家に残し、影絵師として街を渡り歩いて稼いでいくことに。――

[ここからネタバレ------
ある時町で影絵芝居をしていると、軍隊(国民党?)がやってきて福貴たちの一座を無理矢理徴兵していく。福貴は一座の仲間・春生と共に同じ部隊で働かされる。そこでは老兵・全氏が同郷のよしみでよく面倒をみてくれた。彼は戦争に駆り出されて行った弟を探して入隊したらしい。
ある厳寒の夜、部隊は敵に包囲される。春生が凍死した負傷兵から防寒具を剥いで持ってきた。福貴は複雑な気持ちになるが全老人から生きることを考えろと言われ防寒具を纏う。翌朝目が覚めると辺りに人はいない。夜の間に部隊は撤退し、彼らは取り残されてしまったのだ。と、全老人が着ている防寒具を見て声を上げる。これは彼の弟がいる部隊のものだ!春生が昨夜行った負傷兵のキャンプには凍死した兵士の遺体が折り重なっている。全老人はその中から必死で弟の姿を探すが、その時銃声がして全老人は倒れる。福貴と春生は逃げるがすぐに共産党軍に取り囲まれてしまった。

共産党軍の捕虜となった二人だが、影絵師だとわかると兵士達の余興として影絵を上演するよう命じられた。やがて家へと帰ることが許され、車が好きな春生はそのまま共産党軍の運転手となり、福貴は影絵道具を持って家へ戻る。すでに母は亡くなり、妻の家珍はお湯配りの仕事で細々と暮らしていた。娘の鳳霞と息子の有慶もたくましく成長していたが、鳳霞は高熱の病にかかったことが原因で声が出なくなっていた。
世間は人民解放軍(共産党。革命派)優勢で、革命に賛同しない者は皆から糾弾され人々の不満と憎悪の対象となった。かつて福貴から屋敷を奪っていったあの龍二は、立派な屋敷を持っているということで地主だと思われ(※革命派はとにかく旧体制のもの、既得権益を悪とみなしている)反改革派として捕えられ、福貴の目の前を連行されそして処刑された。もしあの時屋敷を取られてなかったら処刑されていたのは自分だった…福貴は己の身に災いが降りかからないことをただ祈るだけだった。

1950年代。共産党政権下で人々は一律に食事にありつけ定められた労務をこなす日々。福貴の町は武器を作るための鉄を集め溶かし鉄鋼を作っていた。福貴は製鉄所で働く人々のために影絵を上演して心を和ませていた。
口のきけない鳳霞は近所の子供達からいじめられるが、それを見た弟の有慶がいじめた子供に仕返しをする。子供の親が怒って反革命派(非国民みたいな意味合い)だと騒ぎたてたため福貴は皆の前で有慶を叩いて叱りつける。
学校でも製鉄をすることになり、区長も視察にやってくると言う。家珍は疲れて眠りこけている有慶がかわいそうで学校を休ませようとするが、福貴は一人目立つ行動をして反革命派と言われることを恐れ、有慶を起こして学校へ連れて行く。だがその夜、学校の先生と子供たちが慌てて福貴のいる製鉄所へやってきた。区長の運転する車が誤って壁に激突し、有慶が崩れた壁の下敷きになって死亡したというのだ!悲嘆にくれる福貴と家珍の元に、区長が謝罪にやってきた。それは、福貴と共に戦場を命からがら抜け出したあの春生だった…。春生は少しでも償いをしたいと金を差し出すが家珍は激しく拒絶し追い返す。

1960年代。毛沢東思想が絶対化した世の中。少しでも政権に反する言動があれば補導されるため、町長が福貴の影絵道具は廃棄した方がいいと勧める。影絵の登場人物は旧体制を象徴していると誤解される恐れがあるからだ。福貴は長年自分を助けてくれた影絵道具が燃やされていくのを複雑な気持ちで見つめる。
町長が娘の鳳霞のために縁談を持ってきてくれた。相手は工場長を務める二喜という男で、足が多少不自由ではあるが良い人柄で生活も保障できるという。さっそくお見合いをするが鳳霞はひと目見てすぐひっこんでしまい、二喜もすぐに帰ってしまった。だが家珍がこっそり娘の様子を窺うと、彼女は鏡で自分の容姿を気にしたりしていて喜んでいる様子。
後日買い物をしていた福貴と家珍の元に近所の人がやってきて、政府の人間がお宅の家を壊そうと集まってると言う。急いで家に戻るとそこには二喜が。彼は工場の人間を連れてやってきていて、ぼろぼろになってる福貴の家の修繕に来てくれてたのだ。傍らには嬉しそうに彼の仕事を手伝っている鳳霞の姿が。
縁談は無事まとまり鳳霞は二喜の元へ嫁いでいった。

ある日福貴は春生が陥れられ反共産主義者とされたと聞く。町長から彼とは距離を置いた方がいいと言われ福貴はうなづく。だがその夜、春生がこっそり福貴の家へやってきた。そして福貴に息子さんの件の償いだと言って通帳を渡す。そしてこれでもう心残りはないと別れを告げ去っていこうとする。春生は反逆者だと人々から批難され、妻は自殺し、生きる希望を失っていたのだ。福貴は通帳を春生の手に押し戻し、これは貸しておくから必ず返しに来い、どんなに苦しくても生き続けて、必ずまた会いにきてくれと言って送り出す。

鳳霞が妊娠。福貴たちは喜び生まれて来る子供を楽しみにする。
やがて鳳霞が産気づいたと聞いて福貴と家珍は病院へ行く支度をする。長年親しくしてきた町長も喜んでくれるが、実は彼もまた反共産主義者との言いがかりをつけられ、これから党本部へ釈明に行くところだった。今は突然何が起こるかわからない世の中だと改めて感じる福貴。
病院へ行くと働いているのは医者ではなく若い女学生ばかりだ。ここにいた王医師は反逆者だとされ逮捕されたのだという。不安を感じた福貴は二喜に相談、二喜は王医師を連行と称して病院へ連れてくることに成功。三日三晩飲まず食わずにされていた王医師はふらふらだ。福貴は町でマントウ(いわゆる肉まん)を買ってきて王医師に差し出す。マントウをがっつくその姿を見た家珍は生まれて来た子供はマントウと名付けようかと冗談を言う。人間らしくない名前をつければ閻魔様の帳面に名が載らずお迎えがこないという昔話があるからだ。
産声が上がって、鳳霞が無事男児を出産したことがわかる。
王医師は一気に7個もマントウを食べて喉を詰まらせてしまった。お湯を飲ませると少し落ち着いたようだ。だがその時悲鳴が上がる。鳳霞の出血が止まらないのだ。女学生たちはどう処置したらよいのか解らずパニックになっている。急いで王医師を連れてこようとするが、大量のマントウを食べた上にお湯を飲んで胃がぱんぱんになっている王医師は苦しさの余り身動きすらとれない。みるみるうちに鳳霞の顔から血の気が引いていく・・・。

幾年かが過ぎ、福貴、家珍、二喜とマントウと呼ばれている彼の息子は鳳霞の墓参りへ。マントウは途中で買ってもらったひよこに夢中だ。墓参りを終えて福貴の家に戻って来たマントウはひよこの家が欲しいと言う。福貴は思いついてベッドの下から大きな箱を取り出した。それはかつて影絵道具を入れていた箱だった。(終)

-------ここまで]

おおー素晴らしい!これは凄く良い映画だった!「HERO」と同じ監督とは思えない!!
良いというかこれは好みに左右されるけど。好きだー。とっても地味な人間ドラマだけど。
これ話が細かい所もよく出来ててしかもその伏線にあざとさがなくて自然なところが凄い。ちょっとした小道具や背景(装置)に実は意味があったりですごく芸が細かいけどそこは全く前面に押し出さずサラッと映し出してる演出がまた小憎いw

中国近代の歴史はまったくわからないので逆に先入観なく見れたのかも。明日を生きていくために必死な庶民にとって政治や戦争はわけもわからなくバックを急速に流れ去っていく背景のよう。ただ家族といった身近な小さなものを守って生きていたいと思う主人公たちを、運命はきまぐれに容赦なく弄ぶ。決して特別ではない、この時代の一般的なひとつの家族にスポットを当てた物語。人生には良い事もあれば悪い事もある、この先どうなるかなんて誰にも解らない。未来は不安だらけでも、ちょっとした幸せを見つけてそれを大切にして、ただ今を生きていくことのみ。そういう意味のタイトルかな。
この特別版は60分も増量されてるというわけだけど、逆にこれのどこをどう削ったのか気になるところ。削れる場所ないし。いちエピソードごっそりやらない限り60分も削れないんじゃあ??

キャストとして特に際立った人はいなかったけど、これ登場人物が実はすごく少ないのと、その少ない人たちがみんな手堅い芝居をしてたので誰かが抜きん出て印象に残るってことがないだけで、みんな素晴らしかった。なんといっても物語や演出が素晴らしいしそれを殺すことのない手堅さが良かったのだと思う。


TSUTAYA DISCAS
2枚ずつしか借りられない。そしてひと月に4枚借りねば損…。
12勝8敗3引分け。


活きる/余 華

¥1,620
Amazon.co.jp
原作の小説。




長いものに巻かれろ