萱蘇客棧で蘇萱と天佑の結婚式が行われている。そこへ秦王イン・スーがやってくる。
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イン:…こちらが、相国(※1)が心底傾倒してたという蘇萱さんか。
蘇萱:陛下それは言い過ぎですわ。
イン:相国は我が秦国のために命がけで(敵国に)行っているというのに、お前はここで婚礼の灯を点すのか、ゾッとするわ。
蘇萱:陛下はわたくしの罪を問いにいらしたのですか。
イン:罪を一人で負うのは罪だと思うか?(※2)
蘇萱:はい。
イン:ではお前には罪があるか?わしに聞かせてみろ。
蘇萱:わたくしは確かにかつて秦の宰相さまに好意をよせていただいてましたけれど、懇意になることなく、最後にやっと勇気を出して言ったんですけれど却ってさよならを言われてしまったんですの。
イン:!?何だと?張儀から別れを告げたと。
蘇萱:秦相さまは、魏国へ帰ると。また秦国へ戻ってくることはないと。
イン:やつはお前に嘘をついたのだ。
蘇萱:別れを言ったのは嘘だと?
イン:あー…あいつはな、きっとお前を巻き込みたくなかったのだろう。わしもやつにお前を連れて行くなとは言わなかったが。
蘇萱:……。
陛下がお祝いに来て下さったんですから、もしよろしければお祝いのお酒を召しあがって行って下さいな。
イン:こちらが新郎か。
天佑:陛下にご挨拶申し上げます。
イン:相国張儀の夫人を奪ったのがお前だというのか。
天佑:ええっ?? 陛下、僕にそんな度胸がどこにありましょうか。みんなおかみさんのご配慮です。僕にもやっとこんな良い運が巡ってきました。
イン:お嬢さん、この兄さんは張儀とはあまりに差がありすぎないか。
天佑:陛下、国を治め守ることなら僕は相国さまにまったく及びません。でもご飯を作って家を守って奥さんの世話をすることなら、僕は相国さまにも負けません。
イン:それもそうだな…。全ての女性が爵位高い大臣になる男を求めているわけではないな。
よろしい。お前は煮炊きができて家を守り妻を養える、いいことだ。
これは相国が人に託して魏国から送って来たものだ。お前のめでたい日に間に合わせようと特別に六百里の道のりを急がせた。張儀…馬鹿…本当にあの馬鹿は。
※1 秦王は張儀が辞職した後もずっと相国と呼んでいる。彼が国謀のためにわざと辞職したことを知っているからだ。
※2 お前一人のせいにされるのは不服か?
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