楚国・斉国との同盟に失敗し、軍部と意見が対立した張儀は辞職を申し出る。そして相国府で片づけをしていると、蘇萱がやってきた。
* * * * *

張儀:よく来たね。
蘇萱:張儀、いいかしら。
張儀:利聡いなぁ、相国じゃなくなって何日も経ってないのに、もうその呼び方かよ。(※1)
蘇萱:真面目にして。笑ってないで。
張儀:…話って?
蘇萱:…あたし…その…仲人がウチに来て結婚の申し込みを…嫁に行くのか行かないのかってあんたが言ってるって…。
張儀:誰に嫁に行くんだ。
蘇萱:あんたが言いなさいよ。
張儀:おれに言わせるなら当然おれの嫁にってことになるが。
蘇萱:あたしそうするわ。
張儀:!!…ああ天よ、おれは本当にこの日が来るのを待ってた。君はどうしてその気になってくれたの。
蘇萱:誰かが言った事(※2)であなたは仕事を失ってがっかりしてるところだから、あたしが言った事もたいして嬉しい事ではないかもね。でもあたしには条件があるの。
張儀:陛下の再度のお召しを待たず、君と宿を経営するのか。
蘇萱:どう?
張儀:……。
蘇萱:あなたはまだ天下を動かすことを考えてるの?
張儀:……。
蘇萱:でも陛下はもうあなたの職を解いたのでしょう。
張儀:君がおれを見捨てないでくれたことに感謝するよ。でもこの数日家にいて、はっきりわかった。これがおれなんだ。世の中にはもっと良い人がいる、君はやめておいた方がいい。このおれが役に立つ人物として重用されるのは、まさにこの考え(※3)があるからだ。この志があるからこそおれは信じられないような力が出る。もし国の政治ができなければ、おれは柴を刈ったり煮炊きができるわけじゃない、君の前に残るのは廃人だ、見たくもない生きてるのも嫌になるような。
蘇萱:でも陛下があなたをまた登用することはないでしょう?
張儀:もうすぐシェンヤンを離れようと思う。
蘇萱:行ってしまうの?どこへ?
張儀:大梁。
蘇萱:魏国…魏国へ帰るの。…じゃあ、私が別の人に嫁いでもいいのね。
張儀:どうしようもないさ。
蘇萱:…張儀、もし行ってしまったら、あたしはもうあなたを待たないわ。
※1 この時代、人を本名で呼ぶのはぶしつけで失礼なこと。普通は官職名やお兄さんお姉さんなどと呼ぶ。
※2 朝議で批判されたことを指す
※3 君主に天下取りを指南すること
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