張儀は河西戦場でスパイと間違われて捕えられ、秦国将軍・犀首によって秦都シェンヤンへ連行された。容疑は晴れたがシェンヤン城の城門前に放り出される。無一文で途方に暮れる張儀。すぐそばの宿・萱蘇客棧の女将・蘇萱と従業員の天佑がじろじろ見ている。
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天佑:お客さん、ウチに来るの?
張儀:失礼、こちらの店主で?
蘇萱:店主じゃなかったら、こいつのお母ちゃんだとでも?
張儀:そのうまい切り返し、この張儀、感服致しました。
蘇萱:チャン・イー?どこのチャン・イーよ。
張儀:魏国の名士・張儀。秦に招待されてやってきたのだ。
蘇萱:誰に招待されたって?
張儀:秦国の大良造、犀首だ。
蘇萱:…商君が死んだ後は、この秦国に大良造はいなかったと思うけど。
張儀:おねえさん知らないんだなぁ、犀首は河西の大戦で功を建てて、シェンヤン城の十里向こうまで秦の君主が自ら迎えに行って大良造に封じたんだ。
(蘇萱と天佑は顔を見合わせる。張儀はその間を通って店へ入って行く。)
張儀:上房(※1)を借りるぞ。
蘇萱:ちょっと待ちなさい、上房ですって?
張儀:おれは大良造犀首が招いた客だぞ。
蘇萱:あたしには、大良造の護衛の兵士があんたを押送(※2)してきたように見えるんだけど。
張儀:あれは護送って言うんだよ!
蘇萱:じゃあなんであんたをウチに泊まらせるのよ?!
張儀:…おかしいか?
蘇萱:当たり前でしょ。もし大良造の客人なら普通はお屋敷か領事館に招くわ。
張儀:うるさいなぁ。
天佑:あァ!?今なんて言った?
張儀:いや、おねえさんとってもキレイだなあって。
蘇萱:バカな事言って言い逃れられると思ってんの?
張儀:上房を借りるぞ。
蘇萱:ちょっと待ちなさい!
※1 一番良い部屋。
※2 犯人や捕虜を護送すること。
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