河西奪還のため進軍する衛鞅(エイ・オウ)。魏国の国境を守る龍賈将軍は都に援軍を要請するが、軍を率いてやってきたのは丞相で魏王の弟の卬(ゴウ)公子。傲慢なゴウ公子は自分が秦軍を蹴散らすので龍賈の軍は一切動くなと命じる。ゴウ公子の気性をよく知る衛オウはある策を立て、公子に講和を提案する。公子は応じると見せかけて衛オウを捕えようと画策し、講和の場に姿を現わした。
* * * * *

「中庶子よ、この二十年会わぬうちに、野草が(立派な)菊に変わるとは思わなかったぞ。」
「朽木ですら棟梁になるのだ(※1)、この世に変わらない事があろうか。」
「衛オウ、お前というやつは。何年たっても、お前のそのへらず口を叩く癖は、どうして変わっていない。」
「これは大丞相大元帥との講和だ。(→本題に入ろう)」
「よし。衛オウ、お前の秦軍が河西から撤収するなら講和に応じてやろう。さもなくば、お前のたった五万の秦軍の将士は死にその身を葬る地も無いぞ。」
「随分と大口を叩いたな。」
「衛オウ、私はお前とは長年の友人でありそのよしみもある、でなければどうしてこんなところまで来てお前と…」
「私とお前が友人だ?(※2)」
「もし私があの時お前をかばってやらなかったら、お前はどうして我が魏国から脱出できたろうか。」
「あの時恥知らずの卑しい者(のようなふるまいをしておいて)、今になって友だと言い張るとは、なんと図々しい奴だ。」
※1 能力がないくせに国の重役を任される。丞相となったゴウ公子への皮肉。
※2 衛オウにとってはゴウ公子は師匠の政敵であり、師亡き後には龐涓(ホウ・ケン)将軍とゴウ公子の権力争いに巻き込まれ軟禁されたこともある。

「今秦国の大軍が国境を制圧し、お前ははっきりとした行く道(→この状況に打つ手)がないことを認めるのだな。自惚れ強く横暴な性(さが)で、自らを欺き人を欺く奴め。お前とこの衛オウはこの人生においてただ憎々しい顔見知りに過ぎない。」
ゴウ公子は怒って手元の竹簡を投げつける。
「そう騒がず少し落ち着かれよ。そなたのような大丞相大元帥どのがいなければ、ホウ・ケンが戦死しただろうか、龍賈が病に臥せっただろうか(※)、魏国が(斉国に)敗北を喫することとなっただろうか。ゴウ公子よ、そなたは魏国の柱石であるばかりか、秦国の功臣であるぞ。」
「大元帥さま、講和などやめて我が軍は戦いましょう!」
「衛オウ、言え。結局のところどう思っている(何を考えている)。」
「講和だ。魏国は河西を全て(秦国に)返還せよ。秦の東の函谷関に、離石要塞もつけて、東南の武関に、崤山(コウザン)の六百里に及ぶ地もだ。」
「この野郎…!」
※魏国が斉国に負けた時にゴウ公子は敗戦の全責任を戦死したホウ・ケン将軍に押し付けた。ホウ・ケンの部下だった龍賈も責任を負わされ一時投獄された。病に臥せる→投獄によって体調を崩したことを指す。

「衛オウ、私はお前と話す気にもならんな、気は確かか?お前は忘れてるのではなかろうな、私には二十万の大軍があるのだぞ。」
「ゴウ公子は本当に点兵(※兵を数える、確認する事)の名手であらせられる、十四万が一瞬にして二十万に変わった、感服いたしますな。」
「…確かに十四万であるが、それでもお前の三倍は多いのだ。」
「報告!…大元帥さま…。」
魏の伝令がゴウ公子に何かを伝える。
「衛オウめ!お前は(陰謀を図り)私を嵌めたな!」
「こんな白昼に、秦軍には("陰"謀ではなく堂々とした)"陽"謀しかございませんな。大元帥どのがいくつかの小隊を展開しているのを、私は早々に見透かしていた。お前が洛水に忍ばせた歩兵軍で私の退路を断とうとしたのだろうが、すでに私の精鋭の鉄騎兵が(歩兵軍を)倒して回った。お前が山谷付近で待ち伏せさせていた鉄騎兵もまた私の二万の歩兵軍に抑えられている。お前は五千の鉄騎兵を連れてきているが、それもまた私の五千の鉄騎兵に囲まれている。大丞相大元帥どの、もう一度自分の兵を数え直してみるのだな、どのくらい多いのか。」
「衛オウ、本帥(わたし)を声を張り上げて脅せると思うな。」
「声を張り上げ脅す?それは公子あなたのお得意技でしょう。」

「衛オウ、私にはまだ龍賈将軍の八万の大軍がある、お前の秦軍を包囲することができる。」
「だがお前は一万の兵を龍賈の元にやって、この戦局に入って来させないように(足止め)した。この一手が最もお見事だな(※皮肉)。」
「では言え。お前はどうしたいのだ。」
「秦国の新軍は(訓練により)大変強く仕上がっている、その大軍の戦力を公平に比べたい、どうだ?」
「よし。言ってみろ。本帥(わたし)が公平かどうか判断してやる。」
「お前の河谷で足止めされている二万五千の主力の鉄騎兵を解放してやる、そこにわたしを護っている(※皮肉)五千の兵を加えて合計三万の精鋭の鉄騎兵軍だ。それと我が二万の歩兵軍で陣を組んで対戦しよう。」
「それは本当にか!?」
「戦において戯言はない。」

「大元帥さま、歩兵と騎兵を比べると、歩兵は(騎兵の)倍多く出してちょうど公平と言えます。秦国の二万の歩兵軍と我が三万の鉄騎兵では、我が軍が戦力がないとの辱めを受け大いなる魏軍の尊厳を失います、(この)力比べをしてはなりません。」
「だまれ!衛オウ、もし我が軍が勝ったら?」
「秦軍は河西から撤収し、二度と失地を取り戻すとは言わぬ。」
「(書記に向かって)書き留めよ。」
「もし秦軍が勝ったら?」
「お前の言う通り魏国は秦国に土地を返還しよう。」
「よし。大丞相大元帥どのには山(高み)に上っていただき、両軍の決戦を観戦いたそう!」
* * * * *
ここぞとばかりに吐き出される衛オウの毒舌は序盤を見てた視聴者には爽快!
でも史実ではむしろ衛オウがゴウ公子に友人じゃないか仲良くしようなどと言って講和に誘ったらしい。
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