秦国が衛鞅(エイ・オウ)の変法(改革)を取り入れて約20年が経った。魏国は韓国に攻め込むがその隙に斉国が魏国の都を襲撃する。斉の軍師孫臏(ソン・ビン)の奇策によって魏の大将軍龐涓(ホウ・ケン)は命を落とした。主将を失い大戦の直後、魏の軍力と士気が低下している今が絶好の機会だ、衛オウは孝公にいよいよ20年前の国仇を討つ時だと進言する。
* * * * *

「大良造よ、河西を取り戻す(戦い)には、お前は何割くらいの勝算があると思う?」
「八割です。」
「秦と魏の血の戦いは数十年に及ぶ。今再戦するのは、私はまだ確実には勝てないのではないかと思うのだが。」
「わたくしの直言をお許しください。君上(陛下)は少年の頃から将士となり、魏軍と血の戦・死に物狂いの殺し合いをされました。そして魏国は財に富み、戦力は強靭である…(そんな)烙印(印象)が大変深く刻み込まれているため、慎重になり過ぎてしまいやすいのです。そしてわたくしオウは君上の念頭にあるような(魏国に対する)印象はなく、また秦人が魏国に対して抱く血の海より深い仇(の気持ち)も少ない。(先入観にとらわれずに)天下の大勢から判定を下すことが容易であり、事実から論じることもたやすいのでしょう。いずれにせよ、好機はちょっとたてばすぐに過ぎて行ってしまいます。もし(報復が)遅れれば、(天下の)大勢が再び変化する可能性があります。」

「私はただ兵力を心配しておるのだ。河西(国境)の守軍は八万、再度(徴兵して)集めたなら十数万の大軍だ、魏国と(戦うの)はどうも難しくはないか?単に軍力だけで言えば、秦国が必ず勝つという確信はないように思うが。」
「しかし戦場での(戦の)行い方は、軍力が全てではないのです。」
「秦国は富国強兵を成したが、しかし国力で魏国を超えているとは言えまい。」
「君上がおっしゃっているのは、ただ国の財力についてのみであって、全ての国力ではありません。」
「全ての国力とは?」
「民の心・民の意気、兵の士気・戦力、君主と臣下が(心を一つに)集合し、廟堂(※)に想いを巡らせる、この全てが国力です。」
「大良造の考えでは、秦国の全体の国力はすでに魏国よりも強くなっていると。」
「その通りです。」
※廟は墓の事だが、時代劇では故国の政治の中心地(=君主の宮殿)という意味合いのようだ。

「財力に富んでいることは、従来より国力の魂(核心部分)ではありません。」
「では国力の魂はどこにあるのだ?」
「その土台は庶民にあり、その魂魄は廟堂にあります。君上に敢えてお聞きしますがまだ何か憂慮することが?」
「統帥(総帥)は?誰を統帥にするのか。車英では不足(手におえない)であろう、虔公子もまた再び出てくる事は不可能だ(※)」
「君上はそのことを懸念されてるのですか。」
「そうだ。やはり私が兵を率い、大良造に国を守ってもらうか。」
「いいえ、わたくしが兵を率い、河西を取り戻します。」
「大良造は兵法がわかるのか?」
「君上は陳倉へ軍の視察へ行った時に、私が話した事をお忘れのようですね。」
※かつて領上将軍だった虔はとある事件によって何年も前に表舞台から姿を消した。

「そういえばこんな事を言ってたな、師匠がお前は兵法を治めるべきだと言った…」
「先生は私に兵法について天賦の才があると認められ、私にまず兵法を治めるよう定められたのです。」
「ではお前は本当に先に兵法を修めたのか。」
「まず兵法を五年修め、その後自ら希望して法家の学問を修めることに転じたのです。」
「運命か、天は本当に我が秦国を救ってくださるのか。」
「わたくしは実際に兵を率い陣を組んで戦ったことはないとはいえ、河西を取り戻すのには決して(実戦の有無は)差はありません。」
「大良造はこれまで空論を口にしたことはない、多くを言うべきではないな。この嬴渠梁(エイ・キョリョウ)は今日将軍(衛オウ)に拝礼しよう。」
「君上は臣(わたくし)をよく理解しておいでです、また何を申しましょうか(→お任せ下さい)。」
「行こう。ああ櫟陽(ヤクヨウ)よ…。大良造、お前が河西から帰って来るのを待つ間に、私は咸陽(カンヨウ)で大良造のために凱旋の宴の準備をしていよう。」
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キョリョウも衛オウも歳とったよな…と思わずにはおれない。設定年齢40歳くらいのはずだけど白髪多すぎない?昔の人はこんなもの?(^_^;)
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