ドラマでお勉強-大秦帝国(第一部) #5 | あさひのブログ
「大秦帝国(第一部/黒色裂変)」第九集、23分あたりから。
魏の都・安邑に密偵として潜り込んでいる景監将軍と熒玉(ケイギョク)公主は衛鞅(エイ・オウ)の人柄を探るべく、多くの商人や思想家が出入りする囲碁サロンの洞香春へ。二人で碁を打ち、衛オウが通りかかったところでわざと声を上げる。

* * * * *

「(お前の)負けは決まった、7-7で勝ちだ。」
「楚国(※)は明らかに優勢だったのに、なぜかわけがわからないうちに負けた!」
「楚国は大きいが、我が魯国のような地盤の堅さがない。負けはもう決まっているぞ、お前はまだ不服か?(給仕に向かって)酒を!」
 衛オウはその対局を一瞥すると鼻で笑った。
「ちょっとあなた、そこのあなたなぜ笑うんです?この対局に何か異議でも?」
「いいえ。」
「先生、お待ちください。先生にもし良いアイディアがおありなら、小弟(わたくし)に教えていただけませんか、私はもう三局続けて負けてるんです。」
「…楚国は一目で敗局を挽回できる。下9-5に打て。」

※囲碁の国盗り対戦をしている。諸国になぞらえた強弱のハンディキャップをつけて戦うゲームと思われる。黒林は楚国を、猗垣は魯国を選んで対戦している。


「…すごい、すごいぞ!楚国は飲み込まれ危うかったのが、かえって負けが勝ちになったよ!先生のご教授に大変感謝致します。」
「魯国は機敏さは余るほどだが、大事な所が足りない(要所を押さえていない)。」
「先生の判定は、(自信ありげに)大きく出ているが当たっていないのでは。そのように言うからには、在下(わたくし)は先生と一局願いたい。」
「いいですね。お二方は名手ですから、ちょうど大盤滅国棋でどうですか?」
「一局お付き合いしても構わない。」
「では。どうぞ。」

* * * * * *

景監(猗垣)と衛オウは、洞香春のメインステージで国盗り対局戦「大盤滅国棋」で勝負することに。国を選ぶくじで景監は魏国を引いた。一方衛オウは秦国を引いた。強国魏と弱小国秦の対決なら当然魏国が勝つだろうと観客は皆魏国を応援する。



「お二方お席にお座りください。用意始め!」
「貴公の弱い秦を、在下(わたくし)と交換してもよいぞ?」
「弱い秦を、我が手の上で強い秦に変えることができることをどうして知っていようか。(我が手にかかれば強い秦に変わるのだ。)」
「先生、国ごとの強弱は棋運(碁の道筋)を決めます(左右します)、お考え直しを。私はもう三局も彼に負かされたんですよ。」
「勢力の強い弱いは、昔から定まっているものではない。小兄弟(きみ)はこの碁がどう進んでいくか見ていなさい。」
 そう言って衛オウは第一手を碁盤の中央、天元に指す。
「秦国(衛オウ)の第一手、天元。」
 サロン中がざわめく。囲碁で最初に天元に指すのは無意味、無策とされているからだ。
「あなたがもう一度やってもいいですよ(やり直してもかまいませんよ)。(弱い)秦国で(勝てないとみて)おふざけにならないでいただきたい。」
「中枢という場所は四極(四方)に影響を及ぼし、八荒(八方向)を雄々と見渡せる。どうしてふざけていると言うのだ。」
「私がこの地を占めれば、あなたの勢力は跡形もなくなりましょう(※)。」
 景監は隅から着実に攻めて行く。衛オウの陣地は中央で取り囲まれ劣勢に見える。
「あなたは高い所でお空を歩いておいでのようだが、実際は基盤となる土地もありませんよ(広い領地を占めてる気分でいるようだが実際はあなたの領地などありませんよ)。」
「高い所にいるのに、どうして基盤となる土地がないというのだ。あなたの魏国がどうなるかよく見てなさい。」

※囲碁の勢力が無くなる=負けるという意味と、あなたのその自信、面子もなくなるという意味を込めている。

* * * * * *

景監が衛オウを追い詰めていると見えたがその後のわずか数手で衛オウが逆転勝利する。サロン中が唖然として息をのみ、そして拍手喝采が巻き起こる。


「あなたの碁道は高遠(※)でいらっしゃる、在下(わたくし)は心から敬服いたします。」
「魏国はもうすでに滅亡している(運命なのだ)…。」
「洞香春の慣例として、滅国戦の勝者が自ら碁道を解説します。先生、どうぞ。」
「この世のすべての物は、皆輪になって互いに囲われ存在している。庶民は役人に囲われ、役人は主君に囲われ、主君は国に囲われ、国は天下(世界)に囲われ、天下は宇宙に囲われ、宇宙は創造する神力に囲われ、そして最後には、創造力もまた生きとし生けるものに囲われている。このため碁道は天道(政治・社会)であり人道(人生)である。そのため碁をもって囲む(囲碁)と命名されており、まさに天地万物の法則に合致するのだ。」
「いいぞ、素晴らしい!」
「秦国がどうやって魏国を倒したのか、先生に解き明かしていただきたい。」
「碁道は、囲うことによって落ち着く場所(陣地)を得るが、必ず根本に勢力を持って(陣地を)取らねばならぬ。勢力が高ければ広く囲い、勢力がなければ小さく囲う。さきほどの碁では、もし秦国が到る所で魏国と陣地を争いもつれておれば、秦国は早くに持ちこたえることもできなくなっただろう。(だが)もし遠く先を見通す勢力で陣地を囲えば、再び機に乗じて魏国(の力)を削ぎ弱めることで、秦国は自ずと勝つのだ。」

※考えなどが広く深く、計り知ることのできないこと。

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いかにも諸子百家の逸話にありそうな、特に好きなシーンです。


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