ドラマでお勉強-大秦帝国(第一部) #3 | あさひのブログ
「大秦帝国(第一部/黒色裂変)」第四集、20分あたりから。
献公の娘・熒玉(ケイギョク)公主は亡くなった父の仇討ちのために、捕虜として捕えている魏の丞相・公叔座がいる驪山(リザン)の軍営へ単身駆けつけた。

* * * * *

「リ山の将軍よ、(軍営の)門を開けなさい!」
「誰だ?」
「秦国公主よ。」
「末将(わたくし)公主様にご挨拶いたします。姫様いかがされた?」
「公叔めの首を取りに来たのよ、開けなさい。」
「新しい君主様みずからがいらっしゃらねば、末将は命に従う事はできません。姫様お戻りください。」
 そこへ嬴(エイ)公家の老執事・黒伯が駆け付ける。
「姫様、国君(国王)様がすぐにいらっしゃいますぞ。」
 間もなく孝公が到着する。
「妹よ、帰りなさい。」
「いやよ!あたしが父さんの仇を討ってやる。」
「お前は何をしようというのだ。」
「あたしがこの手で公叔めを殺してやる。」
「私は国君だ。私刑を見過ごすことはできぬ。」


「国君?(それでも)あんたは秦人の国君なの!?」
「妹よ、お前は私を兄とは認めずとも、国君と認めぬことはできないのだ。」
「国君が仇敵を擁護するというのなら、今日あたしはまず国君であるあんたを殺す!」
 ケイギョクは剣を抜くが孝公は避けようとはせず剣は肩に刺さる。黒伯が剣を弾き孝公の前に立つ。
「老夫(わたくし)は君主をお守りする、逢亲不避(※)、姫様お許しを。」
「黒伯、下がれ!…妹よ、帰るのだ。」
「あ、あなたはどうして公叔の奴を殺させ(てくれ)ないの?」
「私怨でみだりに殺せば、国は乱れまとまらぬ。」
「昔から君主の仇は国の恨みと同じ、どうして私怨などと言うの!?」
「国家の存亡(がかかっている事)を無視し、ただ己ひとり(一個人)の恨みを晴らすのは、まさに私怨だ!」
「先代の君主の位を得ておいて、先代の君主の仇を忘れるだなんて、もはや天地(全世界)が認めないわ!」
「公人たるもの私念を抱いてはならぬ。もし父上がいらっしゃったならやはりこうするだろう。」

※「私が直接あなたと対峙することを避けられない」か?亲(親)が「おや」「みずから」どちらの意味なのかが解らない。


 そこへ孝公の兄・嬴虔(エイ・ケン)が兵を率いて駆けつける。公叔座の処刑を望む大臣らも揃ってやってきた。
「子岸、(軍営の)門を開けろ!」
「兄さん!」
「左庶長、公叔座を殺してはなりません。」
「"左庶長"?私はお前の兄だろう!」
「国家に関わる事においては、兄ではありません、君主と臣下です。」
「偉大な秦人は仇敵への憎しみを共有している、敢えて仇を守ろうとする国君など見たことがない。」
「父の仇を討つのは私的な事、公的な(国家としての)報復はできません。」
「父の仇を討つのは天(世界)のため、報復せずにおれようか!(※)
「左庶長、本公(わたし)はお前に命ずる。即刻兵を引き櫟陽(ヤクヨウ)へ戻れ!」
「私を(君命という)くさびで打ち付け動けなくするか。いいだろう、私はこんなくそ庶長など不当だったのだ、私は(君命に反してでも)報復するぞ!」
「左庶長がどうしても公叔座を(殺す)というのなら、我が身を踏みつけてから行け!」
「皆の者!」

※直前の孝公の台詞を受けて、「そうじゃない、こうだろう」と弟の"間違い"を訂正しているニュアンスがある。


 黒伯は孝公を守るため間に立つ。
「下がれ!」
「太后様のご到着!」
 太后が景監将軍に支えられながらやって来た。
「母上、奴を見てください、奴は…」
 太后は虔の言葉を制止する。
「母上…。」
「渠梁(キョリョウ)、お前に考えがあるのなら、皆によくお話しなさい。」
「君主様のご教授お聞かせ下さいませ!」
「どうかご教授下さいませ。」
「老臣(わたくし)に国君様が仇人を殺さぬ理由をお示し下さい。」
「臣等(わたくしども)にお示し下さい。」


「…母上、兄上、我が妹、大臣将士諸君。このキョリョウは若い頃から軍に入り父や老兄弟(皆さん)と肩を並べ戦場で血を流し戦い、足元に何千何万もの秦人の屍を踏み越えて来た。誰が復讐を叫ぶ事が夢でないことがあろうか(→誰もが復讐を誓っている)。父上が(敵)陣に突進したのは私を救うため、父上に矢が当たったのはこの私の目前で、父上は臨終の際に優しく私の手を取って下さった。報復をと言うのなら、このエイ・キョリョウはすぐさま河東を踏み平らげて行ってかの魏国を(根こそぎ)すくい取ってやらずにはおれない。だができるのか?偉大なる秦人が何千何万人と死に、偉大なる秦国は何千何万の土地を失った。これはどんな仇だ?これは"国仇"である!これは偉大なる秦人が(一斉に)天下に出でて、(魏の)国を亡ぼし軍を一掃してやっと片を付けることのできる血の海より深い仇だ!しかし、今できるか?できぬ。なぜか?秦国は窮している、秦国は弱い。糧食はなく、精製された鉄はなく、人口はあまりに少なく、土地はあまりに小さい。(たった)一つの戦いの敗北にも耐えられようか?(耐えられまい。) つまりこういう事だ、秦国は他所へ打って出ることはできない。打って出ることはできずとも、報復(の準備)を整えるため生きるのだ。自分が死ねば子孫は途絶え、来るべき時機に仇の事を聞き継いでいる者がいない、(そんな事になったら)どうして報復できようか!?一人の捕虜を殺したところで、我ら偉大なる秦人の血の性(※)を証明できるのか!?」

※受けた恩や恨みは決して忘れないという民族性


「今日公叔座を殺せば、ただ一時の恨みを晴らせよう、だが必ず山東の六国が集って秦を攻めることになるだろう。そうなれば故国は滅び、屍が山となり、誰が報復してくれる、報復だと!?(※1) つまりは、国家を保ち、百姓を保ち、将士を保ってこそ初めて、秦国は報復し、苦境から脱し、雪辱を晴らせるのだ!」
「君上(陛下)のお考えでは、公叔めを解放されるつもりですか?」
「鹿砦(※2)を開け!もし皆が私を信じられないのなら、皆我が身を踏み越えて行ってかまわない。もし信じてくれるなら、私は言いたいことがある…」
「キョリョウ、母はあなたを信じます。」
 そう言って太后は去っていく。その後をケイギョクや大臣らが黙ってついていくのだった。景監は孝公のケイギョクに刺された傷を心配する。
「君上、風が冷たいですから、軍営に入り早く傷のお手当を。」

※1 鳥は罵倒語。「それで復讐とは本末転倒、ばかげている」の意か。日本語字幕では「誰もいない。」となっている。
※2 軍営の門に立ててある敵の侵入を防ぐための垣。さかもぎ。

* * * * *

キョリョウの長台詞に圧倒される一幕。この辺りからこの人の真の力が露わになっていく…。


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