陛下に白骨が済王だと報告した直後に宋慈の助手の英は白骨が済王でない可能性を掴んでしまい、宋慈が窮地に立たされている事実に愕然とする。思い悩みながら提刑司へと戻ってきた。一方で宋慈も白骨が済王のものではない確証を得ていた。
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「英よ、どうしてそんなに不安そうに慌てているのだ?」
「私は貴方さまがここにおられるとは知りませんでした。」
「お前はきっと答えを探して来たのだろう。」
「答え?何の答えですか。」
宋慈は例の骸骨を指さす。
「彼は誰かということを。」
「彼は済王ではないのですか?」

「この幾年わたくしは破竹の勢いで奇怪な事件を続けざまに見破ってきて、ほとんど失敗を味わってきていない。(そのために)知らず知らずのうちに己が非凡であるといささか思い上がっていた。自分以外の者(の意見)をほとんど信じようとせず、私の身近にいる英や張堂の話も、わたくしはしっかり聞かなかった。ことわざに言う、尺も短き所あり寸も長き所あり(人には長所も短所もある)。昔の人はさらにうまく言ったものだ、謙じれば益を受け満じれば損に遭う(謙虚にすれば利益を得、驕り高ぶれば損をする)。今になってやっとわたくしは、頭を棒で打たれ喝を入れられたよう(な気持ち)だ。突然高台の楼閣の上から棹が落ちてきて(当たって)倒れ頭や顔は土埃にまみれたが(見上げても)誰もいなかった(というような気持ちだ)。私は自ら問わずにはおれない、宋慈よ、大宋王朝の提刑官という虚名(似つかわしくない立派な名)をお前はまだ担ぎ続けることができるのかと。」

「宋さま、貴方さまは(一体)どうされたんですか?」
「わたくしはこれまで世間の占いなどというものを信じてこなかった、だが世界は広く、奇妙でない事は存在しない(奇妙な事も起こりうる)。世間の占術士の中には、人々が神技のようだと思う(すごい術を持つ)輩も、少なくはない(※)。たとえば、あの時玉娘がちょうど言っていた、骨相で(運命を)推し量れるという(世間一般の)占術師、曹墨の骨には忠義を尽くす愚かな相が出ていると言った奴だ。さてお前は今日彼(骨相占い師)を探しに行ったな、必ずや成果があったはずだ。」
「私はそもそもそんな世間の術士を探しに行ってはいません。私が心の中で信じているのはただ一人、貴方さまです。」
※「令人匪夷所思的神奇之術」がわからない。人をして匪夷思う所の神奇の術?それとも人匪夷をして思う所の神奇の術?

「お前は、嘘を言い終えることはできない(嘘を突き通せない)。なぜならお前は今まで本官(わたし)の前で嘘を言ったことがないからだ。昼に曹墨が来た時、お前はきっと彼に訊いたのだろう、当時曹墨の骨相占いをした神業の占術師の事を。そしてその後、お前はこの骸骨のされこうべをこそこそと持っていった。それを骨董品として売りに行ったと思わせることはできぬ(売りに行ったとは言わせぬぞ)。」
「私は(占術師の所へ)行きました。でも結局は世間のよこしまな占術ですから、全てを信じることはできませんよ。」
「いいだろう、世間の占術師が信じるに足りぬというのなら、もしこの骸骨が自ら話した事なら、お前は信じないわけにはいかんだろう(きっと信じるだろう)。」
「貴方さまは骸骨に口を開かせて話をさせたのですか(※)。」
「だが残念なことに彼が口を開いたのは遅かった、遅すぎた…。」
※口をこじあけたという話ではなく、白骨から何かしらの証拠を得たという意味。検死官の宋慈は死体から僅かな証拠を発見して事件を覆して来たので世間では「死体と話せる男」と呼ばれている。
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まだ比較的ネタバレにならない部分を拾ってみました。
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