牢の曹墨の元に、監査院の王中丞の部下で科挙(国家公務員試験)の同期でもある鄒少卿がご馳走を持ってやって来る。まもなく牢から連れ出されると聞いた曹墨はいよいよ処刑されると察知し酒をあおる。
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「曹兄さん、(酒を注ぐのを)ちょっとにした方がいいですよ。酒ってものは飲み過ぎるときっと体に障るよ。」
「酒を注いでくれ…。」
「はいはい、注ぎますよ。」
「満杯に注げ!」
「満杯、満杯ね。曹兄さんよ、我々二人とも飲んで(お互いに)ちょっと話をしようじゃないか。」
「話をするって…お前は何を話そうというのだ?」
「曹兄さんよ、去年の都の試験(科挙)であんたと僕は同じ科で(受験して)、結果は曹兄さんが状元(首席)になって小弟(わたくし)は畏れ多くも次席だ。あんたに対して嫉妬があったかというと、ちょっとあったけど、でも僕はこれまであんたを恨んでないし、恨むなら自分の学が浅く才能がない事を恨むべきだと思うよ。実は小弟は曹兄さんを五体投地するほど心から敬服してるんだ。」

「少卿兄さんよ…本当にいい奴だな。そんな話(見え透いたお世辞)はいつもならきっと私は全身鳥肌が立つことだろう。しかし今日は、この曹墨はまさに断頭台の端に上らんとするところ…少卿兄さんが酒を飲んで言った真実の言葉に、私の心は感動し嬉しい(→お前の言葉はうわべだけだろうがそれでも私は嬉しいと思う、もう死ぬという奴に気を使ってくれているのだな)。いい奴だ、本当にいい奴だな、さあ、飲もう!」
「ええ。曹兄さん、僕の言う事を聞きなよ、あんたはもう飲まないほうがいいよ。」
「少卿兄さん、お前とは腹を割って話し始めたんだ、私には腹の奥にしまってることがあるのだ。」
「曹兄さん。」

「私の話すことを聞いてくれ。鳥がもう死ぬという時の鳴き声が哀しく響くように、人がもう死ぬという時の言葉は善だ。少卿兄さん私の言う事を聞いてくれ。あんたや私は皆十年寒々しい窓に耐え忍び出てきた(苦労し勉学に励み出世した)、読んだのは(多くの)聖人賢人の書物で、修めたのは儒家の道徳だ。人となれば小人の心を抱くべからず、官吏となれば貧しい考えを持つべからず、臣下となれば皇帝の聖なる命令に背くべからず。どうしてこの曹墨一人の命を掛けるに惜しいというのか(国や皇帝のためなら命など惜しくはない)!聖上(陛下)とお知り合いになれた(→官吏として採用してもらえた)ご恩に報いるためなら、この曹墨は命を犠牲にして尽くし、たとえ死んでも悔いはない。」
「曹兄さん、あんたは何の話をしてるんだい?何が人が死ぬ時の言葉は善で、何が命を犠牲にして尽くし死んでも悔いはないだ?(→どうして死ぬなんて言い出すんだ?)曹兄さんが言った聖人賢人の文章については、かつて聖人賢人はこう言ったんだよ、天がまさに大きな役目を人に与えたなら、(与えられた人は)必ずその筋骨をもって励め(全力を尽くせ)と。曹兄さん、牢獄を出たら、あんたの前途は無限に広がっているじゃないか。」

「少卿兄さんはこの曹墨の(処刑台への)旅立ちを送っていくのではないのか?」
「そうだよ(出獄を見送るんだよ)。」
「この曹墨を断頭台へ送るのではないのか?」
「曹兄さん、あんたは何の話をしてるんだ?…そうか、そうか。小弟をお怨みなさい(私が悪かった)、小弟がはっきり説明しなかったのが悪かった。今日今頃、皇上(陛下)は曹兄さんの件で中丞さまと、吏部・刑部のお二方の尚書さまを召集されて、皇上はこれまで五品の官吏(→曹墨のこと)の職務の事案をお読みになったが(罪を)問われなかった。曹兄さんは皇上としてはこの朝廷の一品、二品の臣下をも当然超える人だとお考えなのだと、僕は信じてますよ。お三方の大臣さまが戻ってこられたら、(彼らは)きっと曹兄さんの冤罪を正し名誉を回復する聖旨を皇上から賜っておられてるはずだと僕は確信してる。(だから)小弟は曹兄さんの出獄祝いをするために前もってやってきたんだよ。曹兄さんが(その後)とんとん拍子に出世していっても、どうか小弟を導いてやってくれよ(→気にかけていろいろ便宜をはかって欲しいな)。…曹兄さん、どうしだんだい?何か言ってくれよ。」
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曹墨役ソン・トウ(孫涛)の熱演光るシーン。
そしてこの少卿はモブかと思ってたら実は後々も曹墨にからんでくる味のあるキャラ。
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