ドラマでお勉強-新版・水滸伝 #11 | あさひのブログ
「(新版)水滸伝」第三十八集「潯陽楼題反詩」25分あたりから。
殺人を犯し江州へ流刑となった宋江は思いがけずも道中多くの好漢と親交を結び、また江州の人々も親切で何不自由ない平穏な日々を送ることができた。
深酒して二日酔いのある朝、鬱々とした気分の宋江は罪人となった我が身を振り返り自問自答する。

* * * * *

「昨夜もまた飲んで酔ってしまった…。」
「酔い覚ましの六和湯か。お前の顔には趙官家(皇帝)の官印が入れ墨されているな(※1)。宋押司、まだ起きてこないのか?」
「私はどこの、あるいは何の押司だというのだ、この地に拘束されている(というのに)。」
「まさか以前(過去)を後悔してるのではあるまいな。」
「以前はどうで、今はどうだというのだ…。」
「かつてお前は一日中応対(仕事)し四方を駆け回り、黄泥岡事件が起こると、生辰綱を強奪した好漢に情報を知らせて逃がし、梁山に落草させた。押司(という身分)はちっぽけとはいえ、れっきとした朝廷の公務員だ。一旦(賊を助けた)情報が漏れれば、さらに罪は重くなるだろう。是要満門抄斬的(※2)。この友への義侠心は、大丈夫(義理)を必要とされたから引き受けたのか。」
「私はあの女を殺したのにまだ生きている。私は今やそんな立派な男ではない。百里千里を歩き自ら軍へ入ったが(※3)、ただ(善人のような行いをして)自他ともに欺いているに過ぎない…。」

※1 罪人は両頬に入れ墨を施される(ドラマでは片頬だけど。)
※2 「門を満たして盗みや殺人をするようなものだろう」?逃げ場がないのに犯罪を犯すということか?
※3 流刑になった罪人は辺境に送られ兵士として働かされる。



「金があれば鬼が苦しめに来るのを遅らせることができるのは世の道理だ(※)。(おかげで)お前の今の日々はゆったりして楽しくはないか?鄆城(ウンジョウ)と比べてこの江州であっても。」
「見知らぬ地へ流刑となり九死に一生を得、殺威棒の百叩きを免れ、この牢城の管理の記録係を整然と行っている。ここでは戴宗君が世話をしてくれ、張順と李逵(リ・キ)の二人の義兄弟もいる…。毎日集まって(宴会を開き)、酒を飲んで楽しませてくれ、酔いつぶれても心は和やかで楽しい。ただ一日中するべきことがなく、何に従うべきかわからない(何のために生きるのかわからない)…。」
「宋押司、こちらへ来なさい、碁を打とうではないか。」
「このところは、心が麻のように乱れて、碁などできぬ、できぬできぬ…。」

※囚人が牢に入るとまず百叩きにされるが、刑吏に金を渡せば免除してもらえるというのが暗黙の了解だった。

* * * * *

体調も幾分落ち着いてきた宋江は外へ出掛け、潯陽楼というこのあたりでは有名な河辺の酒店へ。楼閣からの素晴らしい眺めに満足するが共に楽しむ仲間はいない。飲むうちにまた鬱々としてくるのだった。


「私は山東(省)に生まれウンジョウ(県)で育ち、学問を修め役所の下役人となり、世間の多くの好漢と親交を結び、はからずも一つの虚名をも留めるに至った。今や30歳近くになろうというのに、名も成さず財を築くこともなく、罪人の刺青を彫られ、この地に送られた。私はどうして故郷の父上や郷の皆様にお会いできようか(とても顔向けできない)。
この楼閣は素晴らしい、だがずっとここにいるわけでもない、この(楼閣)の門を出れば、気忙しく通り過ぎていく客(の一人)であり、しかも顔に刺青を彫られた罪人だ。
人々はこの宋江の事を、義を重んじ財を軽んずる及時雨(旱天の慈雨)であると言う。だがその実は魂の抜けた一人の人間でしかない。たとえ大きな悩みを抱えていても、一人空に向かって酒杯を交わし、孤独に(涙の)水溜りに倒れ伏すばかりだ。」
 己の心情を写すかのように外は突然暗くなり大雨が降りだす。宋江は酔いにまかせて壁に詩を書き綴る。


『かつては幼い頃から経史を学び、また(政治的)策略にも長じるところとなったが、あたかも猛々しい虎が荒地に臥せるかのように潜伏し、その鋭い爪や刃を(使うことを)我慢している。不幸にも両頬に刺青を彫られ、江州に送られたことをどうして耐えられようか。もしいつかこの恨みを晴らせるならば、潯陽の河口を血で染めよう。(※)
「天が私のほんとうの胸の内や高い志を知っているわけではなかろうが、私に神の力でも与えてもらえない限りは(私の志は)とても成せまい…。」

※宋江は、国に貢献するために学問を修めてきたのにこんな辺境の囚人となって国に貢献するすべがないという己の運命を恨んでいて、もしお上が罪を許してくれたら私は国のためにこの体中の血全てを捧げ(その捧げた血で潯陽の河口が赤く染まるくらい)熱心に働きますよ、という意味で作った。だが普通に読めばこれは、自分は勉強もできて策略に秀でていつか大きな事をしでかしてやろうと企んでたが(何らかの理由で)とっ捕まってしまった、この恨みをいつか晴らしてやる、この潯陽の河口を血で染めるような大事件を起こしてやる、という意味にしか見えない。そのため反逆の意図ありとして後日捕えられてしまうことになる。


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前半はオリジナルで後半はほぼ原作通り。この前半部分はなんだか映画っぽい演出で特に好きなシーンの一つです。
反詩の内容は知らない人には日本語字幕があってもちょっと早すぎて解らないと思ったので訳してみました。

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