1969年4月20日、新宿にあった東京厚生年金会館にて行なわれたザ・テンプターズの公演。
それが「ザ・テンプターズ・オン・ステージ」というライヴ盤で同年秋に発売された。
後に、CDとして再発にもなった。
ショーケン(萩原健一)好きな割りに彼の歌う作品のCDを持っていなかった。
(アナログはいくつか持ってたんだけど)
実は、過去にこの音源がYouTubeで公開されていて(現在は無い)聴いてはいたのだが、先日楽天ポイントが結構貯まっていたのでこれをオーダーしました。
通しで聴くと、いや酷い!でもカッコいい!そして切なくもなる!
まず、音質が酷い…ペッシャペッシャな音。
そして演奏も下手…舞台上でモニターが出来てないんだろう。
でも若い時の未熟ながらもとてつもないエネルギーは充分に伝わってくる。
こりゃ、元祖パンクロックバンドじゃねぇか!?
てっきり、バンド結成~デビュー直後の期間に演奏された音源かと思い込んでいたら、1969年って絶頂期じゃないですか。
で、このレベルってのも…。(苦笑)
収録曲は、
M-1:ジャンピン・ジャック・フラッシュ(by ザ・ローリング・ストーンズ)
M-2:ジェラルディン(by ブーツ・ウォーカー)
M-3:サティスファクション(by ザ・ローリング・ストーンズ)
M-4:太陽を探せ(by デル・シャノン)
M-5:自由になりたい(by ザ・モンキーズ)
M-6:孤独の叫び(by アニマルズ)
M-7:恋をしすぎた(by オーティス・レディング)
M-8:夜明けを求めて(by THE HERD)
M-9:ストーンズ・メドレー(by ザ・ローリング・ストーンズ)
(エヴリバディ・ニーズ・サムバディ・トゥ・ラヴ~ペイン・イン・マイ・ハート~レディ・ジェーン)
M-10:モーディー(by ジョン・リー・フッカー)
M-11:ノー・タイム(by ザ・モンキーズ)
M-12:リトル・バード(by マリアンヌ・フェイスフル)
M-13:キープ・ミー・ハンギン・オン(by バニラ・ファッジ)
M-14:涙のあとに微笑みを(by ザ・テンプターズ)
と、最後の1曲以外は全て洋楽カバー!!
ま、当時のGS(グループ・サウンズと呼ばれたバンドたち)は皆アマチュア時代から洋楽に憧れてバンドを始めてた(あのタイガース然り)ので、洋楽カバーは多かったんだろうけど絶頂期にこんなにもカバーばかりって?と思ったら、これファンクラブ用のライヴだったようです。
なので、ファンはもうオールOK!だったのでしょう。
実際、最初に出てくる音はファンの「テンプ!テンプ!!…」という開演前の声援。
意外だったのは、メンバー全員がそれぞれリード・ヴォーカルを取る曲を入れていて、わりと個人個人を対等に尊重していたバンドだったんだと認識。
勢いで進んでいくと(ま、1曲も短いし)、途中から耳が馴れたのか、演奏が上手く嵌ったのか、だいぶ聴ける感じになる。
実はロック系の演奏は得意でなかったのかも?という感じ。
ショーケンも“ジャンピン・ジャック・フラッシュ”なんて歌詞ちゃんと歌ってないしね。(ちゃんと歌わないってもうこの頃からだったのか<苦笑>)
ブルース色の強い楽曲の方が、断然良い。
途中の“ストーンズ・ナンバー”なんてストーンズがカバーしたのをカバーしてるし。(笑)
そんな中で一聴の価値ありというのは、ショーケンが水を得た魚のように伸び伸びとパフォーマンスしているように思える「孤独の叫び」(M-6)と、バンド全体の勢いと一丸な感じが直球で来る様な「モーディー」(M-10)ですね。
前者のショーケンの行っちゃってる感じはすでにこの時に始まってる。
後者は、「これが俺たちの本来やりたいことさ!」って感じが伝わるし、ショーケンのブルースハープも冴えている。
でも面白いのが若く、まだ1969年の事なので、MCも「ですます」的な紹介で優等生的。(笑)
途中、ショーケンが「次は静かな曲を歌います、静かに聴いてくださいね。」客席(声を揃えて)「はーーーーい!」ってな感じが、いいね!(笑)時代を感じます。
(でも、そこへ左チャンネルからファンと思われる女子の会話が思いっ切り入ってるんだけど…これトラックダウンで切れなかったんかい?!)
最後は、「皆さん、ひとつだけ僕の願いを聞いてもらえますか?」と問いかけるショーケン。
観客また「はーーーーい!」と声を揃えていいお返事。
そしてショーケン「全員、起立をお願いします。」(爆笑)
いや、音源聴く限り、最初から最後まで超嬌声、超声援、超悲鳴、という感じでキャーキャー聞こえるのですが、そんな興奮している女子たち声は出すけど皆着席していたんですね。
そこへ、ショーケンも「起立をお願いします!」って、今なら手のひらを上に上げる仕草で皆立つと思うが(或いは「立ちやがれー!」と煽ったり)これまた時代です。
そんなやりとりの一部がちょっとだけ聴ける「涙のあとに微笑みを」をどうぞ!
49年前の今日、まだ若干18歳の萩原健一がVo.のザ・テンプターズがこんなステージを繰り広げていたんですね…。
それを考えると、18歳のショーケンって凄ぇな!
そうそう前述のアナログは幾つか持っていたけど…という中にこんな商品がありました。
カセットテープ。(笑)
これ、テンプターズに興味持った頃(中坊になった時)にはレコード(当時は)はもう全て廃盤で、新宿の「コタニ」でやっと見つけた唯一のテンプターズ商品。
このライナーは無記名だがどうやら当時のレコード会社担当ディレクターが書いたもののようでテンプターズ初めて見た印象をこう記している。
「細いのから太いのまで、可愛らしいのから少々ナニがナニしているのまで、まあよくもこうバラバラな人間を集めてグループを結成したものだと、なかば呆れ果てたのが第一印象。ところが、ステージを観て僕はまたまたアッと驚く為五郎、歌や演奏技術の上手下手はさて置いて、とにかく全員が身体全部で音楽にぶつかってゆくその迫力に本物の“何か”を感じて席を立つことが出来ませんでした。」と。
この「ザ・テンプターズ・オン・ステージ」を聴いても、同様な“何か”が伝わってきます。
改めて、49年前の本日4月20日のテンプターズのライヴ音源、18歳の萩原健一の歌とパフォーマンス…酷ぇ、でもカッコいい、そして切ない。