最近、御訃報がタイムリーに記しておらず、いかんな…。(自戒)
去る2015年5月14日、ブルース界の巨匠B.B.キング氏が他界されました。
享年89歳。
死因は、かねてからの糖尿病による脱水症状のとのこと。
「1音鳴らすだけで、彼の音だと分かる。」と言われるように、テクニックとか目新しい奏法とか、そんなんじゃない「音」、そして「音楽性」こそブルースの真髄と言えるべきかと、この方の演奏を聴くとかように思うのです。
日本のブルース・ファンや音楽ファンのなかには、「ありゃ、ブルースなんかじゃねぇよ」と言う方々もいるのも事実。
特に野郎は、濃ゆ~いブルースこそブルース!と評価するのが多いですから。
(ジャズやロックもそうね)
もちろん、その気持ち判るのですが、B.B.キングをブルースじゃないと否定する人に一生ブルースは判らないと、逆説として思ったりもするのです。
何故、B.B.キングがそうも言われてしまうのかと言えば、彼はブルースを土台にその音楽を広く発展させていったからでしょう。
ブルースというと本人1人~数人で重く深く奏でるのが1つの根付いた形であり、根本なのですが、B.B.キングさんはオーケストラを従えていたり、ジャズ・フェスやロック・フェスなどにも積極的に出て、ロック・ポップス畑のアーティストとの共演も多いので、その方面のファンをも楽しませるステージを行なってきました。
この辺りが、 日和っている、媚びている、魂を売った、などと思われてしまったのかも知れません。
個人的には、ジャンルは何であれ音楽は、聴衆を楽しませてなんぼ、引き込んでなんぼ、と思います。
不特定多数の人を魅了して、その音楽、その演奏者はポピュラリティーを得ることになる。
ことさら「ブルース」という、古い時代に派生した音楽、黒人の間でこそ理解される音楽を、多くの人に聴いてもらう、知ってもらうための努力をしたB.B.キングの功績は、ブルース界のみならず音楽界全体に対してそれはそれは大きいしリスペクトされるべきものでしょう。
あ、あと彼の歌声もまたブルースだと思うのです。
私自身、彼のステージを観たのは、1989年に2度。
最初は、1989年5月17日…26年前の昨日です!
当時、「MZA有明」という会場で「B.B.キングvsアルバート・キング」と言う2大ブルース・キングの競演であった!
このライブで、「“ブルース”と言っても、こうも違うアプローチがあるんだな」と思った。
最初に登場したアルバート・キングはトレードマークのフライングVを抱え、いかにも酔いどれブルースマンのように、ミスタッチなどあっても気にせず、むしろそんな時こそ「ん、どした?このアルバート・キング様が弾けば、それは全て俺のブルースなんだよ、小僧!」とでも言いたげな表情に思えたのが印象深かった。
もちろんこれも「ブルース」。
対するB.B.キングは先に書いたように自分の楽団を率いて、音楽として、エンタテインメントとしてブルースを1人でも多くのよう人に伝えようとしていたような印象だった。
余談だが、会場の「MZA有明」は現在の「ディファ有明」というプロレス会場であり「プロレスリング・ノア」の会社所在地です。
2度目はその半年後。
ロックバンド「U2」のジャパン・ツアーに帯同してステージに上がった。
当時U2は名作『魂の叫び(Rattle and Hum)』を発表し、その中の1曲「ラヴ・カムズ・トゥ・タウン」にB.B.キングが参加し、このアルバムは映画化され映画『魂の叫び』の中でも両者の共演が描かれたこともあって、このツアーにはB.B.キングも加わりツアー・タイトルも「ラヴ・カムズ・トゥ・タウン・ツアー with B.B.キング」とされた。
1989年11月23日、会場は横浜アリーナ。
大会場の前から6番目の真ん中近いところもあり、非常に満足のいくライブだった。
今まで数多く観たライブの5本の指の1つに入るものだった。
そして、B.B.キングが登場した時の盛り上がりは凄かった!
自分の想像以上で驚いたのを覚えている。
U2のギタリストであるエッジが、ディレイ・エフェクトを利用し独自のエッジ奏法を編み出したのだが、それと真っ向から音数の決して多くない独特の音とプレイで立ち回る共演はとても面白く映った。
余談その2になるが、「プロレスリング・ノア」の杉浦貴選手の入場曲はこの「ラヴ・カムズ・トゥ・タウン」である。(笑)
残念ながら、その後は生でB.B.キングのライブを観ることは無かったが、NHKのBSで以前やっていた彼の比較的新しいライブ映像を楽しく観たのを覚えている。
でも、もうこの頃から、ステージ上ではイスに座り放しのままの演奏になっていたっけ…。
そのときと同じステージかな?
1969年にグラミーを受賞した代表作の「ザ・スリル・イズ・ゴーン」です。
ブルースの巨星、B.B.キング氏に心よりお悔やみ申し上げます。