ベンチャー理論について整理をしてみました。
ベンチャー研究は、経営学・経済学・社会学といった複数の学問分野にまたがる学際的領域であり、その理論体系は多層的です。
「誰が・何を・どうやって・どこで」という4つの問いで整理してみようと思います。
まず「誰が」です。
シュンペーターは、起業家を“新結合”を担い、創造的破壊を通じて経済発展を導く存在と位置づけました。
一方で、ナイトは「不確実性を引き受ける意思決定者」と定義し、リスク管理の観点を強調しました。
これらは起業家の資質や行動原理をめぐる原点といえます。
次に「何を」。
キルツナーは“アラートネス(alertness)”という概念で、市場の歪みや未充足のニーズにいち早く気づくことが起業家の役割だと指摘しました。
シェーン&ヴェンカタラマンは、起業研究を「個人と機会の交差点」と再定義し、機会の発見・評価・活用プロセスに焦点を当てました。
「どうやって」では、ペンローズの提唱した資源基盤理論やティースのダイナミック・ケイパビリティ理論が重要です。企業は単なる資源の集合体ではなく、それらを組み合わせ・活用する能力によって持続的な競争優位を築きます。
またサラスバシーは「エフェクチュエーション」という考え方を提唱し、不確実な状況下での意思決定原理の解明を試みています。
最後に「どこで」。
ここでは制度・文化・エコシステムが重要です。
スタンフォード大学やシリコンバレーのように、大学・VC・大企業・行政が相互補完的に作用する地域はベンチャー創出の温床となります。もちろん、日本においても、筑波大学発ベンチャーや京都大学のiPS細胞関連企業など、学術研究と政策支援が結びつく事例が増えています。
具体事例として、メルカリはスマホ普及(環境変化)、匿名配送×C2C市場(機会)、リーンスタートアップ的な反復実験(プロセス)、国内外の法制度・投資資金(エコシステム)を統合し成功しました。科学技術シーズを活かし、環境課題を解決するビジネスモデルを国際展開しているSpiderという企業なんかもあります。
ベンチャーは個人の挑戦にとどまらず、社会構造を変革しうる存在であることを示しているのです。
Knight, F. H. (1921). Risk, Uncertainty, and Profit. Houghton Mifflin.(桂木 隆夫 (翻訳), 佐藤 方宣 (翻訳), 太子堂 正称 (翻訳)(2005)『リスク・不確実性・利潤』筑摩書房)
Penrose, E. T. (1959). The Theory of the Growth of the Firm. Oxford University Press.(日髙 千景 (翻訳)(2014)『企業成長の理論』有斐閣)