御用聞き型営業、商品説明型営業、そして提案型営業と、営業は3つの種類に大別できます。
どの営業スタイルが理想であるかという議論はおいておいて、現在の成熟した業界において機能する営業手法は提案型営業と言われることが多いです。
これは顧客の求めるニーズや商品・サービスの種類が複雑になったせいもあるでしょうが、顕在化したニーズよりも「潜在ニーズを掘り起こす」ことがビジネスにつながるケースが増えてきているからなのです。
タクシーにのるとよく、「最近の景気はどうですか?」と尋ねます。
大方、還ってくる返事は「以前とは比べ物になりませんね」とか、「さっぱりですね」などネガティブなものが多いのはなんとなく推測がつくでしょう。
さて、彼らはいったい何を、いつを基準にして、“今”があまり芳しくないといっているのでしょうか。
恐らくはバブル時代なのです。
私は「地方なんかは、ここ20年以上ずっと景気悪いですから、悪い基準からですから、気が楽なもんですよ。」と答えることが多いです。
大切なことは、「変化を認識することと、その変化に対応する策を考えること」です。
時代の変化を捉えていない人は同じ手法しか考え付きません。
企業にいたっても同じことです。
物が売れない現代では、潜在ニーズを如何に見つけるか、顧客の抱えている課題は何かを探ることをしなければ、成果は生まれてこないでしょう。
そして組織として機能するようにその手法を仕組化していくことが不可欠です。
これからこの仕組化について解説していきます。
仕組化を理解したら是非、行動に移してみてください。
(1)メンバーを信用しきれないマネジャー、社員を信用しきれない経営者がもつジレンマとは。
営業マンはある程度の権限を委譲されて顧客と向き合っているはずです。
どこまで権限を委譲されているかは、それぞれでしょうが、権限移譲した側の経営者やマネジャーははたしてメンバーを心底信用することができているのでしょうか?
恐らくは任せたものの、内心は心配があとをたたないはずです。
企業収益は彼らの一挙手一投足にかかっていると考えればご理解いただけるでしょう。
そこをあえて腹をくくって責任をとるのがマネジャーであり、経営者ではあるのですが、これからその心理的な要素も含めてマネジャーや経営者がかかえるジレンマについて解説します。
1)ブランド力がものをいうB to C
対消費者(エンドユーザー)へのビジネスをB to Cと呼んでおり、例えばスーパーマーケットに商品を並べている生産者はBe to C のビジネスをしていることになります。
一般消費財に多いB to Cの範疇では、企業収益を大きく左右するのは営業マンの良し悪しというよりはむしろ、その企業がもつブランド力によるところが大きいでしょう。
そこには買い安心感だとか、ネームバリューといった言葉が購買意欲をかきたてるものになるからです。
名も知らないメーカーのコーヒーとブランド力のあるコーヒーでは、名が通ったメーカーのコーヒーが売れていくのが必然です。
細かいことを言えば、味や風味に格別の差があれば、そうとも限りませんが、大方B to Cは企業ブランドがものいう世界と考えられます。
2)人材が全てのB to B
対法人を相手にしたビジネスをB to Bと呼んでいますが、こちらのマーケットはB to C とは異なり、営業マンの対応力といったクオリティが企業収益を左右します。
企業ブランドが3割、営業能力が7割と言われているのがB to Bの世界です。
顧客となる企業担当者が発注権限を持っている事を考えれば、現場での営業マンの対応の仕方によって結果は大きく異なってきます。
例えば、企業ブランドはあるのに、どうしようもない営業マンが訪問してきた挙句、的外れな営業をしたとなれば、企業担当者は発注するのを躊躇するでしょう。
あるいは、「あんな営業がいる会社とは付き合えない」となるかもしれません。B to Bとはそうしたものです。
つまり、現場での対応で、自社の営業実績は大きく変動することになるのです。
営業マネジャーの方々や企業経営者にとって、見る事が出来ないのが営業現場です。
いったい自社の営業が顧客とどんな話をしているのか、どのような対応をしているのか、気にならない方がおかしいかもしれません。
ある程度の権限移譲をされている営業マンであるがゆえに、マネジャー、経営者にとってその言動が気になるのは道理です。
かといって、逐次チェックされていればこれは営業マンのモチベーションを下げる事にもなりかねません。
マネジャーや経営者のもつジレンマがここにあるのです。
しかし、自社の営業がどんな対応をしているのか、会社の為、収益の為にマネジャーや経営者はしっかりと見ておくべきでしょう。
従って同行訪問は有効という方も多いと思いますが、これは観点が異なります。
あくまで自社営業がどのような対応をしているかを見るべきであって、顧客に会って話をすることが目的ではないのです。
マネジャーと同行訪問ともなれば、いつものシチュエーションではなくなり、自社営業の日常を見る事はできません。
顧客はマネジャーとの話に集中するでしょうし、担当営業は借りてきた猫のようにただ相づちを打つ、といった情景は想像がつきます。
まさにマネジャーや経営者は「自社の営業管理」にジレンマを抱えているのです。
(2)マネジャー、経営者が考えるべきジレンマへの対応策について
ビジネスにおいてよく使われるパレートの法則は20:80の法則とも呼ばれていますが、これを企業(組織)に置き換えた場合、20:80の割合で仕事が出来る組と出来ない組みがうまれるというものです。
つまり成績上位20%の人材で組織の収益を稼ぎ出しているというものです。
往々にして組織の構成がこの比率になることを前提とするならば、マネジャーや経営者はどのように組織にメスをいれるべきなのでしょうか。
20%は黙っていても、顧客との対応よろしく数字を上げてくる営業なわけですから、収益を少しでも高めるには、80%をどうにかしないとなりません。
簡単に言えば80%のうち1%の営業が対応よろしく営業をしてくれば企業収益への寄与度が上がるというわけです。
しかしながら、企業内でよく見かける風景ですが、よく仕事のできる営業に負荷をかけてしまうのが常です。
どうしても、よくやってくれる営業に期待を寄せ、さらなる営業目標を課したり、結果が出ない営業にゲキを飛ばしたりする光景をよく目にします。
なぜこんなことが起こるのでしょうか。
恐らくはそれが最も効率的だと考えているからでしょう。
もっと言えば、てっとりばやいということになるのでしょうか。
ここが「大きな間違い」であることに当事者は気付かないものなのです。
20%に負荷をかける事は本人のモチベーションも下がるでしょうし、企業として見た場合には最も非効率な手段でしかありません。
ここで組織全体の底上げができれば数%でも収益寄与度は目に見えて変化してきます。
つまり、営業組織を強化する上で、マネジャーや経営者が考えるべき点は、平均点を上げることにあります。
言い換えれば、80%の人員の底上げをすることを真っ先に考えるべきなのです。
では、営業マンを底上げするための方策はあるのか。
顧客の見直しもありです。
やる気を高めることもありです。
仕組みで回すこともありです。
ノウハウを共有することもありです。
20%の人たちと比較する必要は全くありません。
残り80%の人たちを20%の稼ぎ頭に仕立て上げるのではなく、底上げを図るためには様々な方法があります。
そこには、俯瞰して診れる、経験と手法を持っている外部からの専門家の力が必要なのでしょう。
改めて考えてみて、それを包括的にお手伝いするために私が存在しているのかもしれないと思いました。