最近は「株主重視の経営」が叫ばれており、その中で「企業価値」や「事業価値」という言葉が良く使われるようになっています。それでは企業の価値は何で計るのでしょうか。
これまでは、企業を評価する考え方として売上規模や会計基準の利益および資産効率、シェアなどが用いられてきました。
しかし、最近良く使われている「企業価値」や「事業価値」は、現在の本業(事業と投資)や事業が将来どれだけのキャッシュフローを生むか、という点に主眼が置かれています。
企業価値とは「本業が将来生み出すキャッシュフローを現在価値に割り引いた総額」
事業価値とは「事業が将来生み出すキャッシュフローを現在価値に割り引いた総額」
中小企業においては、銀行の企業に対する融資審査の厳格化を背景に、財務の柔軟性・安全性を確保するために、従来の間接金融依存の資金調達から直接金融の活用も視野に入れる必要が生じています。債権者や投資家は 、キャッシュフローベースの利回りを重視します。つまりその企業ないし事業が将来生み出すキャッシュフローは現在の価値でどれくらいで、これからは高まる可能性はあるか」を重視するわけです。
したがって、中小企業にとっても将来のキャッシュフローをベースに企業価値、事業価値を考えることは重要になってきているのです。
さらに、経営環境の変化に伴い、M&Aや事業の集中と選択などのドラスティックな施策が必要となる場面が多くなっており、これらの場面で適切でスピーディな意思決定をするために、業界の事業価値の水準と自社の事業価値の水準を知っておく必要が出てきています。なぜならば、これらを知らないと、施策の選択肢の適切な評価ができず、結果として「自社の事業を安すぎる価格で売ってしまった/他社の事業を高すぎる価格で買ってしまった」ということが起こりがちになるからです。
M&Aや事業の集中と選択が経営上の施策の1つとして多用されている欧米では、経営者やCFOが業界と自社の事業価値の水準を知っており、「自社の○○事業の事業価値は△万ドルくらい」と常に答えられると言われています。
中小企業においても、事業の競争力を強化するために、不採算部門の売却や他企業買収によるコア事業の強化、不採算コア事業の合弁化等が必要になる場面が多くなると予想され、企業価値と事業価値がより重要になると考えられます。