価値基準とは、M.トレーシー氏&F.ウィアセーマ氏が提唱した、成功する企業が顧客に対する価値を創造する方法のことです。
M.ポーターの事業戦略類型では、差別化、コストリーダーシップ、ニッチへの集中という3つの戦略を提唱しています。
ところが、実際はP&Gやトヨタのように差別化とコストの両面で優れた企業もあります。
そうした類型では説明しきれないポジショニングの差異を説明したのが、価値基準による類型です。
価値基準では、以下の3つの基本戦略で類型しています。
①製品リーダーシップ
②卓越したオペレーション
③顧客との親密さ
企業が成功するには、次の4つのルールに従う必要があると述べています。
1.3つの価値基準のどれかで1番になる。
2.残りの2つの基準において、まずまずの水準を達成する。
3.競合企業に負けないために、選択した基準においてポジションの向上を怠らない。
4.競合企業の活動によって顧客の期待値は常に高まるので、残りの2つの基準においても、より妥当な水準を目指す。
①製品リーダーシップ
絶えず最新の製品・サービスを提供してイノベーションを追求、製品やサービスにより高い価値を提供し続けることで、競合他社に真似しにくい状況を作り競争優位性を構築するアプローチです。
最先端の技術を築く企業を好む顧客がターゲットになります。
製品リーダーシップでは、既存製品の保護と新製品開発、自由な創造と採算の問題、少数の大きな賭けと幅広い可能性の育成といった背反する事項の綱渡りが必要で、キーとなる本質として「緊張感」が挙げられています。
APPLE、ナイキ、SONY、メルセデスベンツが挙げられます。
②卓越したオペレーション
生産方法と販売方法の改善を追求し、競争優位性の構築を目指すアプローチです。
コストパフォーマンスが優れ、信頼性が高い製品やサービスを求めている顧客がターゲットになります。
卓越したオペレーションでは、独自のノウハウ、技術の応用、厳しい管理の慎重な組み合わせが重要な要素で、そのためのキーとして「定型」が挙げられます。
DELL、ウォルマート、マクドナルドなどが挙げられます。
③顧客との親密さ
顧客ロイヤルティを築き上げて販売力を高めるとともに、顧客からのフィードバックを改善に生かし、顧客ロイヤルティによる競争優位性の構築を目指すアプローチです。
個々のニーズを満たしてくれて、最も反応が早く融通のきく企業を好む顧客がターゲットになります。
顧客との親密さでは、ノウハウを極めた人材、顧客側の重要プロセスに対する最新かつ最高の技術の応用、製品やサービスが持つ機能性の広大なネットワークから生み出され、そのためのキーとして「ソリューション」を挙げています。
IBM、リッツカールトンが挙げられます。
価値基準の選択においては、次の5つの問いに答えなくてはなりません。
①顧客はどのような価値領域に関心があるのか?
②その価値領域を優先的な基準として見なしている顧客の割合なのか?
③その価値領域で最高の価値を提供しているプレーヤーは?
④その価値領域で競争相手に対抗する方法は?
⑤その価値領域の価値リーダーに追いつけていない理由は?