昨日、離乳食導入の時期により、子どもたちに、糖尿病やセリアック病(小麦の関連する慢性腸炎)が、おきてくることがあるという話をしました。特別な遺伝子の背景を持った子どもに、将来的に糖尿病やセリアック病におきてくるという話ですが、離乳食の導入時期の問題点が指摘されています。
 
この事実は、糖尿病やセリアック病の発症原因を示唆しますが、一般的な子どもたちでは、離乳食の適切な導入時期がいつなのか?を考えさせられます。
 
今回は、2編の自己抗体に関する論文を紹介します。一編目では、小麦の早期の離乳食導入は、糖尿病のリスクをあがるが、セリアック病のリスクはあげなかったとしています。二編目では、セリアック病、糖尿病のリスクの高い子どもを集めて、小麦の導入時期を検討しています。そして、離乳食への小麦導入時期は、早すぎても、遅すぎてもいけないことを、示唆しています。

JAMA. 2003 ;290:1721.
1610人の、親に1型糖尿病がある子ども(ハイリスクベビー)において、膵島に対する自己抗体 (インスリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ, IA-2抗体) が、血中で産生されてくる状況を、生下時から、子どもを追跡調査した。採血した時期は、子どもの生下時, 生後9 ヶ月, 2歳, 5歳,8歳の時点であった。追跡研究中に、14%の子どもが研究からドロップアウトした。
 
5歳までに、膵島自己抗体が2 回継続して陽性となった子どもの確率は、5.8%であった。膵島自己抗体の産生は、母乳投与の状況とは、関連しなかった。グルテンを含む食品を生後3ヶ月か月までに食べた子どもは、生後3か月までの母乳限定の子供とくらべて、膵島自己抗体のリスクが4倍となった(95%信頼区間1.4-11.5)。生後3ヶ月までにグルテンを含む食品を食べた17人中4人に、膵島自己抗体を産生した。この子どもたちは、DRB1*03/04,DQB1*0302の遺伝子型を持っていた。生後3ヶ月前までのグルテンを含む食品を摂取した(小麦を食べた)子供たちの中に. セリアック関連自己抗体の増加はなかった。6ヶ月以後に、グルテンを含む食品を食べても、糖尿病やセリアック病の上昇はなかった。
 
 
JAMA. 2005 May 18;293(19):2343.
HLA-DR3 あるいは DR4遺伝子型を持つ子ども、あるいは、1等身に糖尿病のある子ども1560人において、セリアック病関連自己抗体を調べた。その子どもたちを、4.8年間、追跡調査した。セリアック病関連自己抗体は、51人の子どもが陽性となった。その後に、腸の生検でセリアック病のある子どもにおいて、セリアック病関連自己抗体の出現と、グルテンを含む食品を食べた時期との関連を調べた。生後3ヶ月、及び7カ月以後にグルテンを含む食品を食べた場合では、4-6か月にグルテンを含む食品を食べた子どもたちとくらべて、セリアック病関連自己抗体をつくりやすかった。JAMA. 2005 May 18;293(19):2343-51.

 
食物に対して、人はいろいろに反応を起こします。多くの場合は、自然に調整され、それが症状として出てくることは少ないです。時には、食物アレルギーのような, 乳児に起きる一過性の病気があります。食物アレルギーの多くの場合は、軽快していくものの、中には慢性化する場合がまれにあります。

子どもたちが、食物に対して反応しないようにするためには、どうした工夫が必要なのでしょうか?それについて、論文を紹介します。
 
まず、ヨーロッパの健康乳児を対象として出された学会勧告です。パン食が多い欧米では、セリアック病というのがあります。小麦アレルギーに似ているのですが、それよりやや複雑な病気で、慢性の腸炎を起こします。離乳食への小麦導入をいつするかは、欧米の母親の関心事です。
 
学会の勧告では、早すぎても、遅すぎてもいけないというものです。離乳食への導入時期によって、セリアック病のみでなく、糖尿病の発症が増えることが指摘されています。もちろん、小児の糖尿病は誰でも起きる病気でなく、素因があるのですが、そうした子どもたちは、インスリンに対して自己抗体をつくってしまうのです。すると、インスリンをつくる膵臓の島細胞が死んしまいます。こうした子どもでは糖尿病が数年後から起きてきてしまいます。インスリンが作れない一型糖尿病が発症します。

まず、一つ目の論文です。
6か月までの乳児に、母乳は望ましい。抗原性の高い食品の導入を遅らせることは、アレルギーリスクのある子供であっても、そうでなくても、アレルギーを防ぐことにはならない。固形の離乳食、グルテン(小麦)の導入は、乳児が生後4か月未満で早すぎても、7か月以後の遅すぎてもいけない。母乳を飲んでいる間に、じょじょに小麦を開始するのが、セリアック病、糖尿病の予防に役立つ。J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2008 ;46:99. PMID: 18162844
 
膵臓から分泌されるインスリンに対して抗体をつくってしまう子どもがいます。なぜ、こうした間違いが体内で起きてしまうかというと、食物として体に入った蛋白構造物に対して反応をしてしまい、抗体を作っていまいます。この抗体が、自らのインスリンに対して反応してしまうようです。これを自己免疫と言います。
 
子どもがこうした間違いをして、反応してしまう食べ物の代表的なものは、ミルク、小麦などです。すなわち、子どもがミルク蛋白に対してつくった抗体の中に、ミルク蛋白に結合するだけでなく、インスリンにも結合しやすい構造をとってしまう場合があります。すると、抗体がついたインスリン産生細胞はへっていってしまい、ついに糖尿病が発症してしまいます。
 
離乳食として体に入った食物が、のちの糖尿病の元になることがあるのです。とっても不思議なような気がしますが、こうした事が、実際に起きてしまう子どもがいます。
 
普通の人は、ミルクや小麦が、こんな大それたことを起こすと考えないと思いますが・・・・。その機序はまだ解明されていませんので、真相の解明までには、紆余曲折があると思います。インスリンに自己抗体をもつ子どもたちが、将来、糖尿病になりやすいと言えますが、短期間の観察では、証明できないことがあります。又、こうした特殊な反応に過剰に反応して、食べ物を制限するのも、良くないことです。どの食べ物も、何かをしでかす可能性!があるのです。
 
病気の素因を持つ子どもにおいては、離乳食をいつの時期に開始するのかが大事です。乳児期は、食物をすみやかに受け入れやすい時期になっているので、時期を逸せずに、ミルクなどの異物蛋白に接する(ミルクを飲む)ことが必要でしょう。しかし、個人差があり、どの子にいつ糖尿病が発症するのか予想は難しいものです。
 
欧米では、成人期までもちこすセリアック病が多いので、論文が多く見られます。次に紹介するのは、どの食べ物に対して作られる抗体が、慢性腸炎や糖尿病へのリスクをもっているかを調べています。調べたのは、牛乳、小麦、鶏肉などでした。結果は、ミルク蛋白に対して作られる抗体が、インスリンにも結合してしまう(インスリン自己抗体になりやすい)ことがわかりました。
 
自己抗体が陽性の子供を、数年、経過をおっていくと、一部に糖尿病が発症してきます。作られた抗ミルク抗体が、インスリンにも結合してしまい、インスリンを産生する細胞を壊します。以下の論文は、インスリンと結合する抗体を含む血清(自己抗体が陽性の血清)に、ミルクを加えることにより、インスリンに結合する能力が低下することを示した成績です。試験管内で、ミルクと抗体が結合してしまい、インスリンに結合できる能力が減ってしまうのです。これをしらべた実験結果です。インスリンに結合する抗体が、ミルクで吸収されるのは、ミルクとインスリンの立体構造が似ているからです。(抗原抗体複合物の形成され、抗体のインスリン結合能が低下する)。
 
Clin Exp Immunol. 2011;164:42-9
インスリンに対する自己抗体を持つ0•3-14歳の人53人から血清を集めました。このうち、6人の血清に、ミルク粉末をくわえると、23%から100%に、インスリン結合能が低下しました。この子どもがミルクを飲むと、インスリンに結合する自己抗体産生をつくらせてしまう可能性があります。ミルク抗体が陽性の6人の血清が、α、βカゼイン蛋白で吸収できかどうかを調べたところ、二人が吸収されました。インスリンに反応する抗体をつくったこどもが、将来膵臓の島細胞に対する自己抗体をつくるように発展する可能性が懸念されましたが、5年間、追跡した限りにおいては、糖尿病の発症はありませんでした (この実験的手法を、ミルクによる吸収試験と呼びます)。
 
今回の研究では、抗インスリン抗体を持っている子どもから、糖尿病の発症はありませんでした。この論文では、糖尿病の発症機序として、食物に対する抗体が、自己抗体として働き、将来、糖尿病の発症につながる可能性は、それほど高くはないであろうと言っています。
 
2009年、世界的に新型インフルエンザH1N1(パンデミックインフルエンザ)がはやりました。冬以外のインフルエンザの流行がおき、かかりつけの医師にかかれないという医療現場の混乱などがあり、母親など多くの人がつらい経験をしました。
 
実は、インフルエンザと人間は、もう何十万年も前からつきあっていて、究極の持ちつ持たれつの関係になっています。すわなち、ほとんどの人では、自然に治ります。しかし、ここにも人の免疫の多様性がかかわってきます。すなわち、ごく一部の人では、とても重症化してしまうという事実です。その原因は、感染症では時に起きることですが、なんからの遺伝子背景にあると、免疫の暴走が起きてしまうのです。残念ながら、その機序はまだ完全には解明されていません。
 
ネーチャーメディシン2011年2月に、健康成人で新型インフルエンザ感染症が重症化した人において、重症化の原因を追及した成績を紹介します。Nature Medicine 2011;17;196
 
論文では、重症者や死亡者は、過剰な免疫反応が起きたというエビデンスをいくつかあげています。抗原(インフルエンザウイルス)と抗体(人が感染防御を目的につくる物質)の結合物が、重症化に関与したと結論しています。
 
ウイルスがすごい量で増加したわけでなく、重症者や死亡者では、効率の悪い抗体ができてしまい、うまくウイルスを処理できなかったことが、過剰な炎症反応へと導きました。重症者では、リンパ球の減少が観察されました。そして、本来、酸素を取り入むはずの肺胞が働かなくなってしまいました。亡くなった人は、大気中で呼吸しながら、水におぼれた状態になってしまったのです。
 
一般的に、インフルエンザ予防にワクチンが有効で、ワクチンは、人工的に抗体を作らせるものです。しかし、実際の感染症の時には、ウイルス蛋白のさまざまな部分に対して抗体がつくられますので、つくられた抗体が、特殊な不利益な反応を起こしまうことがあります。こうした現象は、免疫の働きのよいはずの成人においてみられます。乳児や高齢者では、免疫が弱いので、免疫の暴走は起きにくいのです。水ぼうそうやおたふくが、成人で重くなるのに似ています。
 
今回は、高齢者が比較的軽症だった原因として、高齢者のウイルス中和抗体が高かったことが示されています。重症者では、IgG抗体は高かったのですが、ウイルス中和抗体は低値でした。乳児も、抗体が低値であったため、過剰な反応が起こらなかったであろうとしています。
 
ウイルス感染を治癒に向かわせるためには、さまざまな免疫因子がかかわりますので、抗体産生が少ない方が、軽症で終わる場合もあります。抗体という物質は、感染症を時に軽くし、そして、時に重くする物質です。
 
中和抗体が高値なために軽症化する場合(高齢者)、一方、中和抗体が低値なために軽症化(時に重症化もある)する場合(乳児)があり、病原体と人の間には、多様な免疫現象があります。
 
補体というのは、私たちが自然に作る体内物質ですが、補体は、殺菌(菌を溶かす)能力をもち、感染防御に働きます。今回は、肺に抗原抗体複合物が観察され、これに補体が結合する組織像がみられました。重症者や死亡者は、補体が肺で消費されてしまったため、血清中の補体は低下していました。論文の著者は、補体低下を、パンデミックインフルエンザ重症化に、抗原抗体複合物の形成が関与した根拠にしています。
 
Nature Medicine 2011;17;196
54名の入院を要したパンデミックインフルエンザ重症例で、うち23人が死亡しました。15人は、集中治療室での治療を要しました。平均年齢は39歳(17-57歳)でした。重症例と、外来で軽症だった人(乳児や高齢者)との間で、それぞれの肺の免疫状態を比較しました。
 
パンデミックインフルエンザで死亡した人の肺は、肺胞が浮腫状、肺胞膜の肥厚、出血、ハイアリン膜の形成があり、酸素をとりこむ働きの肺胞の壁が、厚くなっていて酸素を取り入れることができなくなっていました。
鼻汁中のウイルス量は、重症者で増加している所見は得られませんでした。
 
気管分泌物での、インターフェロンαは、鼻汁より低値でした。インターフェロンβは、ほとんど、上昇しませんでした。
 
サイトカインの産生は、新型インフルエンザと従来型のH1N1インフルエンザと、違いがありませんでした。
新型、従来型インフルエンザのハマグルチニン(赤血球凝集素)蛋白は、自然免疫系のTLR(トールライクレセプター)の発現を、増加させませんでした。
 
人の単球を用いて、新型、従来型およびトリ型H5インフルエンザ蛋白で刺激したところ、人の単球は、トリ型H5に対してのみサイトカインの産生が増加しましたが、新型、従来型のH1型インフルエンザは、少ないサイトカイン刺激性でした。
 
ウイルス感染の時には、増加するはずのTリンパ球(CD4+リンパ球とCD8+リンパ球と呼ばれる2種)が、死亡した人の肺では、増加しておらず、逆に減少していました。
 
乳児では、新型インフルエンザも従来型のインフルエンザに対する特異抗体価は低値でした。一方、75歳以上の高齢者と比較すると、重症者では抗体は高い傾向でしたが、抗体のウイルスに結合能は低下していました。
 
死亡者では、肺に抗原・抗体複合物が沈着しており、補体の活性化が見られました。特に補体の分解産物であるC4bが、肺胞膜に多く結合していました。
 
1957年当時の新型インフルエンザ感染で死亡した人の肺を用いて、同様の検査をおこなったところ、この場合も、肺胞膜へ、多くのC4bが沈着していたことが確認できました。
 
日本では、ホルモン補充療法をしている人は、2-5%位、看護職では10%位かと言われています。欧米では、2002年までは、40-60%の女性がホルモン補充療法をしていましたが、2002年のWHIの比較研究以後は、3人に1人がこの治療を止めています。ホルモン補充療法の低下は、米国で乳がんの発症が減少したことと関係すると推定されています。(2月13日のブログ参照)

血圧は、レニン及びアンギオテンシンと呼ばれる物質の支配をうけています。レニン・アンギオテンシン系は、血圧上昇に働きますので、レニン・アンギオテンシン系を抑える薬は、ACE阻害剤、ARBと呼ばれ、世界的に使われています。エストロゲンは、この物質にも関連します。
 
今回のカナダの研究で、66歳以上の女性で、経口のホルモン補充療法を行っていると、腎機能がわるくなる(糸球体ろ過量)が低下することが示されましたので、紹介します。
 
Kidney International 2008;74,377
ホルモン補充療法群(エストロゲン群1083人、黄体ホルモン群40人、エストロゲン+黄体ホルモン群336人)と、ホルモン補充療法を受けていない女性群4386人の間で、腎機能を2年間にわたり比較しました。女性たちの年齢は、66歳以上で、3群とも10-20%に糖尿病などの合併があります。レニン・アンギオテンシン系の降圧剤は、3群とも、40%に使われています。
2年間の間に、ホルモン補充療法を受けている人では、腎機能がわるくなる(糸球体ろ過量)が低下することが示されました。この腎機能の低下は、エストロゲン使用量と関係しました。エストロゲンを膣に挿入している人(経膣的エストロゲン)では、この腎機能低下はみられませんでした。エストロゲン+黄体ホルモンの併用群にも、腎機能低下はみられませんでした。
今回の研究では、経膣的エストロゲンは、経口と異なり、腎機能への悪い影響は出ませんでした。経口薬と比較し、肝臓の代謝酵素の誘導などが少なくて済むことが関係するようです。
 
経口エストロゲンは、レニン・アンギオテンシン系に作用し、血圧を上昇させます。妊娠中の女性では、循環血圧量が増大しますが、レニン及びアンギオテンシンの調節作用により、高血圧を避ける方向に働きます。妊娠中は、大量の内因性の女性ホルモンは、血圧をさげる方向に働きます。しかし、ピルなど人工的に投与されたエストロゲンは、血圧をあげてしまいます。特に、高齢になってからの外から経口的に体内に入ったエストロゲンには、レニン及びアンギオテンシンを上昇させます。そして、腎臓の機能を低下させます。
 
 
エストロゲンを投与すると、女性に益になると考えられている根拠は、卵巣除去マウスからの実験から推定されていることが多いです。卵巣除去したマウスでは、腎機能が悪くなります。そこにエストロゲンを人工的に投与継続的に与えると、腎臓機能が維持できます。しかし、エストロゲンの間欠的では、そうした効果が期待できません。
 
当初、閉経後の女性ホルモン投与は、脳にも心にも良い影響があると考えられました。しかし、心も脳も、悪い効果がでてしまいました。人の予測がはずれました。実際の人の体は、さまざまな物質が交錯し、機能しているわけですから、相互関係で働きが異なります。
 
男性ホルモン、および女性ホルモンの人工的投与については、今後も、実際の人の疫学データの成績をしっかりフォロウしていく必要があります。
 
 “衛生仮説”
“衛生仮説”とは、乳児期の子供を取り巻く衛生環境が、その子供の免疫の発達や、アレルギーの発症に影響を及ぼすという考え方です。「自然環境で育つ」ことが、子供の将来の免疫を発達させ、病気に強い子どもになると推定されています。一方、人工的な生育環境は、子どもの免疫の発達を低下させ、アレルギー反応を強めてしまうだろうとされます。
 
しかし、“衛生仮説”は、し尿にまみれた不潔な生活環境が、子どもを強くするという単純な善玉説だけに目を向けるのは問題です。「自然環境で育つ」ということは、弱い子どもが病気になる機会が多い環境でもあります。衛生環響の悪い国では、乳児死亡が増えます。
 
“衛生仮説”が提唱されてから20年間経過し、疫学成績が集積されてきましたが、少し、その経過をひもといてみます。
 
1989年にストラヘンが、子供たちの枯草熱(日本の花粉症にあたる)の発症は、兄弟が多い家庭の子どもでは少ないと報告しました。この現象を説明するものとして、当初、兄弟が多い家庭の子供は、呼吸器や消化管の感染症にかかる機会が多いことが指摘されました。さらに、家庭環境に、し尿由来物質(エンドトキシン等)を多くあり、それが免疫を発達させると推定されてました。
 
この考えは、今も生きていますが、さらに、もっと、複雑な機序が指摘されるようになりました。母親が妊娠する回数が増えると、羊水成分などの胎児環境が変化することがわかりました。
 
妊娠中の母親が家畜小屋に出入りする、あるいは、生後に子どもが、感染症、麻疹などに罹患するなどにより、アレルギー発症に、予防効果が期待できます。
 
10163人の就学時の調査において、農家で育った小児では、そうでない子供とくらべて、枯草熱 0.52倍, 喘息 0.65倍, 喘鳴0.55倍となり、特に家畜との接触のある小児では、アトピー疾患は、 0.41倍となったと報告があります((von Ehrensteinら, Clin Exp Allergy 2000;30:187)。 小児が成長した時点でも、乳幼児期の農家育ちの影響が確認されています。
 
18-24歳で大学生10 667人を調査した北欧の成績では、農家で育った大学生は、喘鳴を含む喘鳴を 0.71倍としたが, アトピー性皮膚炎への影響は出無いとの成績があります(Kilpeläinenら, Clin Exp Allergy. 2000;30:201)。
 
イタリアの若い青年兵士を対象とした調査では、A型肝炎、トキソプラズマ感染症、ピロリ菌感染症の3種の感染症に罹患した兵士では、アレルギー疾患の有症率が減少しています(Matricardiら, BMJ. 2000;320:412)
 
農家で育つ乳児は、細菌由来のトキシン含まれる絞りたてミルクを飲んでいることが影響するとの成績もあります。8263人を対象とした調査でも、豚の飼育 0.57倍、絞りたてミルク0.77倍との数値が示されています(Ege MJ、J Allergy Clin Immunol. 2007;119:1140) 。
 
英国。キングスコレッジからの論文です。ピーナッツを原料につくられた物質が、生活環境中に多い場合は、乳児のピーナッツアレルギーが発症しやすいであろうとする疫学論文です。

J Allergy Clin Immunol. 2009 Feb;123(2):417-23.
ピーナッツアレルギーが発症した子ども、アレルギーリスクの高い子ども(後に卵アレルギーが発症した人)、アレルギーの無い健康児を集めて、それぞれの子どもたちを、3群の間の比較研究としました。
 
それぞれの群の人に、子どもが乳児期の生活環境における、ピーナッツ由来物質の量に関する質問票を配りました。質問票により、家族の全メンバーが使う皮膚用クリーム、オイルなどのピーナッツ関連物質の消費量を聞きました。質問票は、アレルギーの発症の前に配っています。
 
ピーナッツ家族消費量は、133人のピーナッツアレルギー群では、18.8 g、150 人のコントロール群では、6.9 g、160人の高アレルギーリスク群(卵アレルギー)では1.9 gでした。母親の妊娠中、授乳中のピーナッツ接取量と、ピーナッツアレルギーとの関連はありませんでした。
 
乳児期に、ピーナッツ関連物質に、経口的に暴露されると、ピーナッツアレルギーの発症を招くと考えられました。しかし、環境にピーナッツ物質が多くても、乳児が経口的にピーナッツをとっていると、アレルギー予防に働くと考えられました。
食物アレルギーが治っていないとの思いこみだけで、除去食を続けていることは、勧められません。
ニューヨークの有名病院、マウントサイナイ病院で、食物アレルギー患児を対象に,食物負荷テストを行い、その成績が論文として発表されていますので紹介します。除去食をしている食物アレルギーの子どもたちは、除去食を中止できるかを知るために、食物負荷テストを行います。その時に、どの程度の症状が誘発されるかで、除去食を継続すべきか?食べていくか?を、主治医が判断します。
 
エピネフりンは、血圧を緊急的に上昇させる物質で、アレルギー症状が複数で出たり、血圧低下など、アナフィラキシーへの進行が疑われる時に、緊急的に注射されるものです。食後のアレルギー症状が進行してしまった場合、あるいは悪化が予想される場合に、医師の判断で注射が行われます。自宅で症状が出た時も、両親、本人は注射をすることができます。今回の論文では、血液や皮膚反応でアレルギーが強いと予想されても、実際と負荷テストの成績とは、関係しなかったとしています。つまり、この論文では、血液や皮膚反応の強さは、実際に、そのものを食べた時の反応を予測しないと、言っています。
 
J Allergy Clin Immunol. 2009 Dec;124(6):1267-72.
1273 回の食物負荷テストのうち、反応が出たのは436回 (34%)であった。負荷テスト陽性後の11%の小児に、エピネフりンを使用した。陽性例、陰性例をまぜた負荷テスト全体では、エピネフりンの使用率は、3.9%であった。
 
負荷誘発率が高かったのは、食品別に、卵 (n = 15, 卵負荷テストのうち16%), ミルク負荷テストの陽性率は12%、ピーナッツ26%, 木の実, 33%, 大豆 7%, 小麦9%, 魚1, 9%.であった。 エピネフりンを使用した群としない群のそれぞれの平均年齢は、7.9 歳と5.8歳で、これら両群に、性差、IgE値、皮膚反応の大きさ、過去におけるアナフィラキシーの既往などには差がなかった。エピネフりンの使用は、ピーナッツ負荷テストで多かった。2相性の反応は1名にみられた。負荷テストで極めて重症となった小児はいなかった。
 
ピーナッツアレルギーに関する論文を紹介します。昨日からの続きで、乳児期の腸は、異物蛋白を受け入れやすいという話です。
 
ピーナッツアレルギーの発症には、塗るクリームとして、皮膚からピーナッツ蛋白が吸収されて、アレルギー状態になる可能性が指摘されています。皮膚は、アレルギーの起きやすい場所なので、食べても大丈夫だが、皮膚につくとかぶれるということはありえます。つい最近も、小麦石鹸が問題になりましたね。

J Allergy Clin Immunol. 2008 ;122:984-91
論文タイトル .早期にピーナッツを食べることは、ピーナッツアレルギーが少ないことと関連する

国で暮らすユダヤ系の小学生5171人と、イスラエルで暮らす ユダヤ系の小学生5615 人を比較した。ピーナッツアレルギーの罹患率は、英国1.85%、イスラエル0.17%であり、罹患率の違いが大きい。小学生では、両国の間で、ピーナッツアレルギー罹患に、8倍の差がある。1月に食べるピーナッツ蛋白量は、イスラエル7.1 g、一方、英国では、0 gである。英国でくらすユダヤ系住民は、ピーナッツアレルギーが多い。
 
イスラエルのユダヤ系の小学生は、生後1年以内にピーナッツをよく食べることが、小学生のピーナッツアレルギー罹患率の低下になるであろう。
 
離乳食の導入を遅らせること、あるいは除去食をすることは、世界中で勧められないとする時代になりました。現在、乳児に、病気がないのに、アレルギーの病気の発症を避けることを目的に、離乳食から卵白、ミルクなどを避けることを、予防的除去と言います。
 
今までの疫学データは、除去食をしている群で、アレルギーの発症が高くなるという結果が出るものが多かったです。日本でも、母乳栄養に限定した乳児群で、湿疹の発症が高いという疫学データがあります。
 
しかし、これは、母乳にこだわる群、除去食をする群では、もともと、アレルギー素因を抱えた子供であるというマイナスの背景があることが問題になっていました。遺伝的な背景のある子どもは、アレルギーの発症は、健康な子どもと比べると多くなります。
 
比較する対象乳児の間で、アレルギー状態が異なると、除去食は、効果があるのか、無効なのか、簡単に結論をつけることはできません。世界的にも、このタイプの研究のネックになっていました。しかし、疫学データの客観性を高める手法を駆使して、比較群のアレルギー背景を同質化して、データの客観性を追求しました。そうした成果の結果、除去食は、アレルギー予防効果はなく、治療として、どうしても必要な場合に限定的除去食にとどめることになりました。つまり、予防的にはやらないという意味です。
 
それは、1歳までの乳児期が、一番、異物蛋白を受け入れやすい状態になっているからです。できるだけ乳児期に導入のチャンスをつくること、という世界的なコンセンサスになっています。世界で一番保守的だった米国小児科学会も、2005年から、方針を変えています。
 
2007年、小児科の専門誌「ペディアトリクス」に載っているオランダのコホート調査の結果は、ミルク導入を遅らせると、湿疹の増加をまねくとしています。今回は、この論文を書きます。今後も、このブログで、いろいろな乳児コホート研究を紹介していきます。
 
オランダで出生後の新生児を追跡して病気の発症経過を調べるコホート研究です。
 
妊娠時から、子どもが2歳になるまで追跡しています。研究に参加したのは2558人の乳児でした。
研究の対象となったのは、ミルクの導入時期と、その後の湿疹やアトピー性皮膚炎との関連でした。妊娠35週、生後、3ヶ月、7か月、12ヶ月の乳児の様子を追跡しました。
2歳時に、乳児の血液検査をしました。
多重ロジステック回帰分析により、ミルクの導入時期と、2歳時のアトピーとの関連をみました。ミルクの導入を遅らせることが、2歳児の湿疹を増やしました。他の食品導入を遅らせることも、2歳児のアトピーの増加となりました。
早期に湿疹や、ゼーゼーする乳児を、追跡対象から除外してしまった場合でも、結果に変化はありませんでした。
結論、離乳食において、 牛乳および、その他の食品の導入を遅らせても、アトピーの予防にはなりませんでした。
昨日のネーチャー記事で引用されていた論文をPubMedで検索しました。腸内細菌再建法です。ひとつの論文は、大腸鏡をもちいて、2番目の論文は、胃腸管チューブを用いて、便の注入をおこなっています。
 
J Clin gastroenterol 2010;44:567
反復性のクロストリディウムデフィシル感染症19人に、他者の便を移植する腸内細菌再建の手技をした。便の注入は、大腸鏡を用いた。19人中の18名は1回の手技で良くなったが、1人は2回目の手技を要した。治療効果の持続は、6か月から4年間であった。3名は、6か月から4年間にわたり症状がとれた後、再度、クロストリディウムデフィシル感染症が起きた。
 
QJMed 2009;102:781
15人の反復性のクロストリディウムデフィシル感染症の人に、移植便治療を行った。対象者は、慢性の肺疾患を持った人が多く、難治性の肺炎などで、抗生剤療法を余儀なくされている人が多い。ドナーになる人は、ウイルス病、梅毒などの感染症が無いことをチェックした。移植を受ける人は、胃酸低下薬のPPIを服用した。30gの便を150ccの生理食塩水にとかして、フィルターを通した。30ccを胃チューブで注入した。10名は、翌日、退院した。注入後、4-24週間後に、腸炎が改善した人が多かった。
2人は、手技後も症状が続き、抗生剤療法(メトロニダゾール)を要した。1名は、再度の便移植を要した。
 
J Clin gastroenterol 2010;44:354
クロストリディウムデフィシルの反復感染がある人が便移植療法を受けた。移植前後で患者さんからとった便中腸内細菌を、16SrRNA検査で菌の種類を調べた(培養不可能な細菌を調べる方法)。手技後、14日後では、患者さんとドナーの便中細菌層は酷似しており、バクテロイデス種が優勢菌であった。注入された菌は、腸のひだ深くくい込んだ部分に住みつくものと思われた。手技後の患者さんの腸炎はよくなった。