統合失調症は、脳内ネットワークの連絡性の低下などが指摘されています。論文では、統合失調症と診断された人を対象として、言語テストや、記憶テストなどの作用負荷を与え、その時のfMRIなどを用いて、脳内機能を評価してきました。
 
結果は論文ごとにばらつきはあるものの、左上側頭回の容積減少が、統合失調症の人の陽性症状と関連することを指摘する論文や、あるいは、前頭葉と側頭葉の連絡性の低下を指摘するものがあります。
 
さらに、最近は、作業負荷(被検者に記憶させたり、しゃべらせたりの)をかけずに、安静時の脳内機能を測定する検査方法が試みられています。脳内には、健康人も含めて、解剖学上(脳の構造的)、灰白質の容量の低下がある部分が存在します。そうした元々の脳構造を考慮して、統合失調症の人の脳内機能を評価した論文を紹介します。Am J Psychiatry 2009;166:196
中側頭回の異常は、統合失調症の人の重症度とも、良く一致すると述べられています。

統合失調症の中には、家族性に発症するタイプの遺伝性の強いタイプがあります。このタイプでは、
の容積減少が特徴のようで、この所見は、発症前の人で、すでに見られることから、病気に進行に伴う変化ではないと推定されているようです。むしろ、発症の元となる病因的な変化ではないかということです。
 
統合失調症とfMRI
平均年齢24歳の未治療の初発の統合失調症 68人(女性38人、男性30人)の検討です。DSM-IV(実際の症状を客観的に評価して偏りを少なくした精神病の診断法)で診断されました。統合失調症は、健康人にくらべて、灰白質の重量の低下が見られる脳部位は、右の前帯状皮質ACC、右中側頭回、右上側頭回でした。この部分の重量の低下は、臨床的スコアPANSSとも一致がみられました。しかし、統合失調症の人の年齢や病気の期間とは、関連しなかったです。
 
右中側頭回の容量の減少は、反対側の帯状回、下頭頂回の活動性との関連を認めました。右中側頭回の容量の減少は、陽性症状、思考障害、パラノイアと関係しました。さらに、中側頭回、右上側頭回との連絡性の低下は、症状の重症度とも、一致しました。右中側頭回の活動性は、反対側の帯状皮質や、基底核、小脳の機能、側腹部前頭葉と関連を認めました。
 
PANSSとは、統合失調症の重症度を評価するスケーリングスコアのことで、陽性症状、陰性症状、一般精神病理症状(委譲3項目の点数が大きい)、思考障害、過活動性、妄想、うつ、無気力、衝動行動などを点数化して、病気を評価する方法。
「あなた、更年期?」 と聞かれて、無視する女性もいれば、怒る女性もいます。更年期の言葉は、心地よいものでなく、女性は傷つきます。女性たちは、若くないと言われたことが悲しいのでしょう。
 
しかし、ここで少し、考えてみましょう。一般的に、50代の女性では、まだ十分に、健康が保たれ、致命的な病気は少ないです。この時期の女性たちは、健康と若さに自信を持つべきではないでしょうか?2008年のランセットにのった総説を紹介します。
 
Lancet. 2008 ;371(9614):760.
更年期障害は、卵巣から分泌されるエストロゲンと黄体ホルモンが減少することに起因する症状とされています。しかし、その症状には、個人差が大きく、更年期の女性の一部が、医師による治療を必要と感じます。
 
しかし、女性ホルモンの低下と関連が深いのは、血管運動性障害(ホットフラッシュ)と、膣の乾燥です。その他の 気分変調、睡眠障害、尿失禁、認知能力、不快な身体症状、性的機能不全、QOLの低下などの、他の一般的な徴候については、別の病気に続発して起きてくるちか、他の病気に関連がありそうです。
 
ホットフラッシュの治療は、エストロゲン、ガバペンチン、パロキセチン、クロニジンである程度の改善が期待できますが、他の薬剤の効果は期待できません。これらの副作用も、考慮されなければなりません。 更年期の女性における健康懸念については、多くが未解決のままに残されています。
PMID: 18313505
昨日、男性の方が、fMRIで活性化が高い脳部分が多いという話をしました。今回、紹介するのは、健康な男女を対象に、言語、記憶、空間認識などの負荷をかけて、脳の活性化、脳の酸素に依存するパラメータを用い、脳部位の活性化の強度を比較した論文です(Neuroimage 2006;30:529.)。
 
この研究でも、男性脳の方が活性化はさかんでした。男性は、記憶負荷において、上頭頂回や、右下後頭部において活性化がみられ、左下頭頂回で、脳血流酸素に依存する数値が増加しました。言語負荷では、男性は、左右の前頭前皮質、右下頭頂葉と島の脳部位で血流を高めていました。脳部位の活性化に差があるものの、記憶や言語など処理能力でみる限り、男女間で、作業能力は同程度でした。しかし、空間認識の負荷では、女性は男性より劣りました。処理能力に差がなくても、男女の脳のおける活性化に、差がありました。
 
なにより、男性の身体能力は、女性より高いです。脳に限らず、男性の方が、女性より重く大きな体をうごかすわけですから、血流が、盛んで、そのためのエネルギーも多く必要です。男性は大きな予備力を持ちます。脳への作業負荷が多少持続する場合は、女性は持ち前の忍耐力を発揮して、男性よりがんばれるのかもしれません。しかし、さらなる負荷がかかると、もともとエネルギーを生み出す能力の低い女性は不利になるのでしょう。
 
その他の身体能力は、比べるすべもなく、男性にはかないません。脳の重量も男性が女性より重いのでが、脳回の深さなどは女性が大きいとか、神経細胞のネットワーク機能などの差が指摘されています。エストロゲンの濃度差の違いなどの影響もあるのかもしれません。今後、さらなる機能解析が進み、男女は異なるしくみで、脳機能を処理する事実の解明が進むでしょう。
 
人が言葉を使う時は、脳の前頭回、頭頂回、側頭部、島、小脳、視床、基底核など多くの脳部分を活性化させます。それでは、ペラペラと喋る芸能レポーターのような人と、言葉がなかなかでない無口な一般人との違いは、どこにあるのでしょうか?
 
さらに、バイリンガルの人が異なる言語を巧みに扱う時、あるいは、腹話術をする人が、同じ脳内で、異なる二人の脳を即座に操れるのは、なぜなのでしょうか?彼らのパフォーマンスから推定すると、恐らく、異なる脳場所でそれぞれの言語を扱っているような気がします。最近は、ファンクショナルMRIを用いて、言語を扱う時の脳の活性化部位を追及しています。

男女別、及び、言葉が流暢にでない人と、言葉が流暢な人を、機能的fMRFを用いて比較した論文がありました。Cortex 2009;45:164
 
男女が言語を扱う時の脳の活性化の部位の違いは、下側頭回、小脳、前および後の帯状皮質、右上前頭回、前頭前皮質の部分で、差が出ました。男性の方が良く活性化していました。

左の前帯状皮質ACCと小脳が、言葉の流暢性と関係しました。言葉が流暢な人と、言葉が流暢に出ない人の違いについては、流暢でない人では、ACCでの反応が強く、一方、言葉が流暢な人は小脳の活性化が強いという結果でした。つまり、言葉を巧みに扱える人では、運動の機能をバックアップする小脳の活躍の違いがでたことになります。
 
言葉の流暢な男性は、右の楔前部(けつぜんぶhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A5%94%E5%89%8D%E9%83%A8と、左のPFC前頭前皮質との活性化がさかんでした。

言葉がなかなか出ない人では、前帯状皮質ACCで必死に考えているようで、そこに血流も集中するようです。一方、言葉が流暢な人では、ACCの機能をフルに動かさなくても、苦労せず言葉をさがせてしまい、実際の口の動きなどに関与する小脳の方に血流の負担が移っているのかもしれません。
 
男女別に言語の時に、脳の活性化に若干の差があるようです。又、右か左かでの脳の役割もあるようです。男女別では、男性の方の活性化が高いということは、男性の方が脳をよく動かして言葉を発して結果かもしれません。男性は、無口に見えても、言葉を選んでいる可能性があります。
 
つい、言い過ぎてしまい、後で、「言わなきゃよかった!」と後悔するのは、断然、女性の方がおおいのではないでしょうか?
 
女性は、一般的に、言語能力は高いと言われています。しかし、言葉がたくみな女性が、えっと思う位、他の処理能力に欠けたりします。つまり、言語能力で他の能力が修飾されてしまうのです。さらに、難しい理論的な話は、女性は不得意です。難しい基礎免疫の理論の解説などは、男性の方が、優れています。
 
将来的には、この男女差がどのように変化していくのかは、わかりませんが・・・。
 

前回のブログで、併用ホルモン療法による、肺がん死を報告しました。今回は、2編の関連論文を紹介します。
 
1編は、エストロゲン単独使用法を用いたホルモン補充療法が、肺がん発症に及ぼす影響についてです。結論を簡単に言うと、エストロゲン単独では、肺がんによる死亡を増やさなかったという結果でした。
 
もう1編は、女性ホルモン療法の利点として評価された大腸がんを減らす治療効果に関してです。実は、観察が長期に及ぶようになると、大腸がんを減らす女性ホルモン治療効果は消失してしまったとするものです。
 
この結果から、何を連想できるでしょうか?かつて近代医学が、女性ホルモンを初めて取りだすことに成功してから、この物質は、子宮がんを増加させる物質であることがすぐ判明しました。それゆえに、エストロゲン単独療法は、子宮摘出後の女性に限定して行われてきました。その子宮摘出群の女性を対象とした試験では、女性ホルモンは肺がんの発症を増やしませんでした。
 
このギャップがなぜ生じたのかの原因は解明されていませんが、子宮がんを減らすために添加された黄体ホルモンに何らかの問題があった可能性が高いと推定されています。
 
WHIの無作為対照化試験で、治療に使われたホルモンは、うまの尿から精製されたものです。以前にジエチルスチルと言う名前の合成エストロゲンが作られた時代、がんの増加が指摘されました。そして、その物質には子マウスに影響が及ぶ薬害が証明できました。現在でも、どの女性ホルモン製剤をどのように使って、安全にホルモン補充療法を行うかの結論はまだ出ていません。
 
今回の結果から推定できることは、薬剤別の結果に違いが出たことが大事ではないかと思います。すなわち、エストロゲン単独では肺がん死との関係は出ず、一方エストロゲンと黄体ホルモン併用では、肺がん死との関係が出たというこの事実です。同時に進行させた臨床研究によって、特定の薬剤のみに、効果との関連が証明できました。この意味は、治験が正確に行えたと見なされること、その結果、真実に近い結果を導きえたと考えてよいかと思います。

Women Health Initiative(WHI)無作為対照化試験では、抱合型馬エストロゲンの治療により、閉経後の女性の肺がんの発症を偽薬群と比較しました。今回の研究は、エストロゲン単独の使用でも、肺がん発症に影響があるかどうか、事後評価を行ったものです。

方法: WHI研究は、アメリカ合衆国の40のセンターで行われる無作為二重盲検プラセボ対照試験です。 子宮摘出を受けた50-79歳の閉経後の女性、計10 739人を対象に、一方は、625mgのタブレットの抱合型馬のエストロゲン(n = 5310人)を、もう一方は、偽薬(n = 5429)の1日1回投与しました。結果: 追跡機関の7.9年(標準偏差= 1.8年)後、ホルモン治療グループでは61人、プラセボ群では54人が肺がんと診断されました(年= 0.15%対0.13%につき肺がんの発病率; 発生率= 1.17、95%のCI ;0.81-1.69、P = .39)。 非小細胞肺がんは、両群に統計的に差がなく、肺がんによる死も両グループの間で同等でした。肺がんによる死亡数は、エストロゲン群は34人、プラセボ群では33人、オッズ 1.07、95%のCI 0.66-1.72)。

結論:抱合型馬のエストロゲンだけの使用は、発生率および、肺がん死を増やしませんでした。J Natl Cancer Inst. 2010 ;22;102:1413.PMID:20709992
 
次は、女性ホルモン療法による直腸癌に関する論文です。

WomenHealth Initiative(WHI)エストロゲン+プロゲスチンの併用治療は、かつて、直腸がん発生率を減らしたと報じられました、しかし、その後、年余が経過し、7-9年以上のホルモン補充療法群の女性を再検討の結果、直腸癌が減少するとしたホルモン療法の優性は否定されるに至りました。
 
方法: WHI登録のエストロゲン単独群は、50歳から79歳の女性たち21,552人と、別の観察グループに属する10,739人の女性を対象としました。 エストロゲン+プロゲスチン併用群は、子宮を持つ女性たちで、WHIに属する群32,084人と、別の観察グループに属する女性16,608人です。 結腸直腸がんは、病理学報告によって確かめられました。

結果:WHI観察研究、結腸直腸がんと診断されたのは、エストロゲン群168人と、併用群175人の女性たちでした。危険率は、エストロゲンでは、0.80(95%の信頼区間0.53-1.20)、プロゲスチン+エストロゲン群では1.15(0信頼区間.74-1.79)でした。 エストロゲン+プロゲスチン群で、診断の遅れはないようです。
 
今回の結果によると、エストロゲン+プロゲスチン併用療法を7-8年以上続けると、結腸直腸がん死亡率を減少させるという治療効果は消えていることがわかりました。
Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2009 May;18(5):1531-7  PMID: 19423530
プラセボ群よりも、ホルモン補充療法群(エストロゲン+プロゲスチン併用)で、肺がんの発症に違いがあるかどうかを検討した論文の紹介です。

ホルモン補充療法は、女性の肺にも危険であることを世界に知らしめました。アメリカの40施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化試験で、1993~98年に、50~79歳の閉経後女性16,608例を対照に、ホルモン補充療法を行い、この治療が女性たちに与える影響について検討したものです。詳しくは、過去ログ(エストロゲン・女性)をご参照ください。

方法は、結合型ウマエストロゲン0.625mg+酢酸メドロキシプロゲステロン(黄体ホルモン)2.5mg(合剤)を1日1回投与する群(8,506例)、あるいはプラセボ群(偽薬)(8,102例)に、無作為に割り付けました。年齢分布は、ホルモン補充療法群は、50-59歳2837人33.4%、60-69歳3854人45.3%、70-79歳1815人21.3%、一方、偽薬群は、50-59歳2683人33.1%、60-69歳3655人45.1%、70-79歳1764人21.8%でした。両群に差がありません。白人の占める割合は、両群とも85&、喫煙状態は、両群ほど同頻度で、非喫煙約50%、元喫煙40%、喫煙10%でした。喫煙機関は、30年未満が約65%、30年以上は約35%で、両群に差がありませんでした。
 
この研究では、試験期間中に、肺がんと診断された女性をフォローアップし、さらに試験期間が終了した後も、女性たちを追跡して解析を行いました。試験期間中および追加フォローアップして、全肺がん、小細胞肺がん、非小細胞がんの発症率を検討し、さらに死亡率について解析しました。

平均試験期間5.6年および平均追加フォローアップ期間2.4年の時点で肺がんと診断された女性は、併用ホルモン補充療法群が109例(年間発症率:0.16%)、プラセボ群は85例(同:0.13%)でした(ハザード比:1.23、p=0.16)。
非小細胞肺がんの発症率も、併用ホルモン補充療法群は96例(年間発症率:0.14%)、プラセボ群は72例(同:0.11%)でした。(ハザード比:1.28、p=0.12)。

年間の肺がん死亡率は、ホルモン補充療法群(73例、0.11%)は、プラセボ群(40例、0.06%)よりも有意に高い結果で、(ハザード比:1.71、p=0.01)となりました。

この結果は、主に非小細胞肺がんによる死亡率の差によるもので、ホルモン補充療法群は62例(0.09%)の死亡率であり、偽薬群は 31例(0.05%)の死亡率で、ハザード比:1.87、p=0.004]でした。一方、小細胞肺がんの発症率および死亡率は両群で、ほぼ、同等(ホルモン群は1.16倍)でした。
 
ホルモン補充療法群で肺がん死となった人は、喫煙をしていない人は9人、過去に喫煙していた人は32人、現在も喫煙している人は30人でした。
一方、偽薬群は、喫煙をしていない人は4人、過去に喫煙していた人は16人、現在も喫煙している人は20人でした。
ホルモン補充療法群は、偽薬群と比較し、非喫煙者では、肺がん死は2.09倍、過去の喫煙者では1.89倍、現在喫煙者では1.5倍でした。

ホルモン補充療法群は、非小細胞肺がんによる死亡率を増加させると結論されました。
Lancet. 2009 Oct 10;374(9697):1243-51. Epub 2009 Sep 18 19767090
 
アメリカ胸部疾患学会が、米国の報道機関が流した主要な医学ニュースを、ネットを通じて、会員に情報発信をしています。今回は、その中から3編びました。

1) 風邪の治療薬には、偽薬効果が期待できる
2) 妊娠中の喫煙は、子供の外表奇形を増加させる
3) 都会で暮らす人間は、健康的
 
1)
T7月12日付けの Wall Street Journalの記事を紹介しています。風邪の時に、薬は有効かどうかの検討です。
 
外国では、エキナセアという名前のハーブが、民間療法として有名です。材料は、キク科の多年草で、多糖類やフラボノイドなどが多く含まれています。アメリカでは常に売上上位を占める、人気のハーブとのことで、身体本来の力を高め、健康維持・増進に役立つと宣伝されています。
 
風邪にかかった人を次の4群にわけて、薬の効果を比較しました。何も投与しなかった群の人の群、民間薬であるエキナセアを、商品名を明らかにしてに投与した群、エキナセアであることを知らせずして投与した群、まったくのにせ薬を投与した群 の4群です。この4群の風邪症状を比較しました。
 
すると結果は、薬を投与した群で、風邪の軽症化が確認されました。しかし、薬の内容にはかかわらず、偽薬であっても効果はありました。つまり、なんらかの内服物質を投与された群では、風邪が軽く済むとの結果となりました。
 
論文 Annals of Family Medicine(家庭の医学)という医学雑誌に載った論文
新しく風邪をひいた人719人を、4群に分けて調べました。1群は内服薬なし、2群は偽薬、3群はエキナセアをわからない状態で内服した群、4群は、エキナセアであることを認めて内服した群でした。薬の種類にかかわらず内服をした群では、薬の無かった群と比較し、風邪の有病期間は、0.16日対 0.69日となり、重症化の頻度は8% 対17% となりました。つまり、内容にかかわらず、何らかの内服物質があると、風邪は軽くなりました。
 
2)
7月11日付けのBBCニュースは、妊娠中の喫煙は、外表の先天異常児のリスクを上げると報道しました。
50年間にわたり172の論文を調べました。腕や手足の欠損、口唇・口蓋の奇形、頭蓋骨の奇形のある子供を産むリスクが20― 30%高くなるとしました。
 
3)
7月12日付けのウオールストリートジャーナルの記事です。
一般的に、田舎は大気汚染がなく、健康的に暮らせるとイメージされますが、米国の健康データはそのようなデータは示していないことがわかりました。都会に住む人の方が、健康度が高い結果でした。その原因は、都会人では、収入が多く、学齢が高く、診療機関にもかかりやすく、健康度は高いとするデータ分析を示しました。
しかし、米国の都会ではメンタルトラブルが多く、その病気が多くなっているとの結果を示しています。又、郊外に住む人も、収入が多く、健康状態は良好とのことです。
 
米国と日本を比べてみるのが興味深いです。日本では、学齢、経済状態の格差は、米国ほど大きくなく、又、医療機関へのアクセスに格差は少ないので、日本独特の因子の配慮が必要そうです。
 
日本では、田舎は家族が多く、体を動かし、長期的には、田舎暮らしの方が、健康に良い影響を及ぼすかもしれません。テレビ番組でも紹介される、田舎の高齢者は、協調性が豊かで元気に見えます。但し、田舎は、労働が厳しく、田舎ならではのストレスもあるでしょう。日常生活が健康度に及ぼす影響についての分析は難しいです。医療のあり方を議論するには、良い材料かもしれません。
 
離乳食についての情報をお届けしています。2007年に、厚労省は離乳食に関するガイドラインを改定しました。そして、2008年に、専門職向けの指導書を発行しました。そこには、近年、日本の離乳食導入が遅れる傾向にあることを載せています。

この指導書に書かれていることは、病気の無い子供たちには、離乳食の導入をすみやかに勧めるのが望ましいとの厚労省の見解かと思います。こうした背景には、海外のコホート調査(追跡研究グループ)のデータが、影響を与えているものと思われます。
 
改定時、専門職や一般の母親たちの間に、若干の議論がありました。しかし、日本では、海外の論文が紹介される機会は少なく、議論の材料に使われることは少ないいようです。
 
小児科の代表的医学雑誌ペディアトリクス(英語で小児科の意味)の、2010年のフィンランドの成績を紹介します。
この成績は、糖尿病発症の遺伝的リスクのあるこどもたちの離乳食と、その後のアレルギー感作との関係を検討したものです。

目的: 生後1年までに、離乳食の固形食品の導入時期が、5歳になった時点でアレルギー感作に影響を与えるのかを調べました。
方法:フィンランドの出生コホート研究)からデータを分析しました。 母乳継続の状況や、固形食品の導入月齢と、5歳になった時の免疫グロブリンEレベルを調べました。対象は、タイプ1糖尿病のリスクのあるHLA型をもつ994人の子供たちです。
 固形食品の導入時期とアレルギー性感作の間の関係は、ロジスティック回帰を用いました。そして、親のアレルギー性鼻炎と喘息を考慮しました。
結果:母乳のみで育てた期間の中央値は、1.8ヵ月でした(範囲: 0-10ヵ月)。 この子どもたちが5歳になった時に、アレルギー感作と関連した食品の導入時期は次のようでした。各食品の導入時期は、ジャガイモ(4ヵ月を超えてから)、オート麦(5ヵ月を超えてから)、ライ麦(7ヵ月を超えてから)、小麦(6ヵ月を超えてから)、肉(5.5ヵ月を超えてから)、魚(8.2ヵ月を超えてから)と卵(10.5ヵ月を超えてから)となりました(超えてからの意味は、その月齢は含みません)。各食品の導入を遅らせると、食物アレルゲンに感作されやすくなりました。 ジャガイモ、ライ麦、肉と魚を遅く導入すると、吸入性アレルゲンに感作されやすくなりました。 特に、ジャガイモと魚は、吸入アレルギー感作と最も関連しました。Pediatrics. 2010 ;125(1):50-9
母親たちは、離乳食をいつの時点で、開始するかの話題を、お届けしています。問題のない乳児であれば、かなりラフに進めても問題が起きないと思います。しかし、赤ちゃんの中には、離乳食トラブルがおきてくる子がいます。
 
日本では、乳児期に卵、ミルクの食べれない子どもが、学校に行ってからも食べれないことが問題です。欧米やアジアにおいて、学童期に見られる重大な食物アレルギーは、多くがナッツ、木の実、甲殻類です。日本は、卵・ミルクの小学生までの遷延化が特徴です。年齢が上がってから、食べれないもののある子どもは、圧倒的に男児が多いのです。
 
セリアック病の多い欧米では小麦の導入時期に関して、母親の感心が高いです。研究結果より、4-6か月の導入が良さそうとの学会見解であるとでとの話を、前ブログでしました。今回、類似の論文を紹介します。しかし、欧米では学会の勧告にかかわらず、母親たちは、勧告に従わず、望ましいとされる生後4-6か月でなく、生後6か月以後に小麦(グルテン蛋白)を投与している場合がかなり多いと論文にありました。
 
スエーデンからの論文では、 1歳までの乳児検診受診者467名の母親に聞いたところ、56%の母親が勧告と異なり、乳児が4-6ヶ月でなく、小麦導入は、生後6か月以後になっているとのことでした。
 
膵島に対する自己抗体と、ミルク導入時期との関連を調べた論文です。
ケースコントロール研究 1型糖尿病のリスクのある遺伝子背景のある乳児2949人を、3-6か月ごとに膵島に対する自己抗体を追跡した。島細胞に対して抗体ができた乳児では、次の自己抗体GAD65 (GADA) と、チロジンフォスファターズ関連 IA-2 分子 (IA-2A)に対する自己抗体を測定した。
 
4か月以上母乳に限定していると、2か月未満の乳児とくらべて、自己抗体の出現が低下した。生後4か月以後にミルクを投与された児と比較すると、4か月未満にミルクを投与された群では、自己抗体を作りやすかった。ミルクの導入時期により、IA-2A 抗体の陽性は、4.37倍(95 % CI 1.33-14.42)、4種の自己抗体陽性は 5.02倍(95 % CI 1.27-19.89)に変化した。Diabetologia. 2001 ;44:63.
 
プロバイオテクスは、北欧において、盛んで論文も多くでています。この問題は、プロバイオテクス販売企業の戦略が絡むことが多いので、学会でも議論はつきないところです。データが良すぎると、学会では、かなりの批判が出ます。一つの論文を紹介します。
 
子どもにアレルギーの発症が予想される妊婦1223人を対象に、プロバイオテクスが子供のアレルギー発症に影響を与えるかを、検討した。出産前に2-4週間、プロバイオテクスを母親に投与し、出産後は、母と同じプロバイオテクスか、あるいはプラセボ(偽薬)を6ヶ月子どもに投与した。プロバイオテクス群にはガラクトオリゴサッカライドも加えて投与し、プロバイオテクス群の子供の数は461人、プラセボ群は461人であった。子供が2歳になった時に、アレルギー疾患の有無と、腸内細菌相を調べた。

アレルギー疾患全体の発症を減らす影響はなかったが、IgE関与のアレルギー疾患は、0.71倍となり、減少させる影響はみられた。プロバイオテクス群では、湿疹が0.74倍、アトピー性湿疹は0.66倍と、プロバイオテクス群で、若干、アレルギー疾患が減少した。プロバイオテクス群の子供の町内細菌では、ラクトバチルスやビフィドバクテリアが多かった。J Allergy Clin Immunol. 2007 ;119:192
 
禁煙補助薬は、貼るタイプの薬(禁煙パッチ「ニコチネル」)や、ニコチンのガム(「ニコレット」)があります。そこに、新しく、ニコチンがまったく含まれていない、新しいタイプのチャンピックス錠(一般名は、バレニクリン)が発売されました。
 
日本のマスコミは、7月4日ロイター発のニュースとして、チャンピックス(米国名:チャンティックス、一般名:バレニクリン」について、心臓発作や他の心臓病リスクを高めるとの研究結果をつたえています。
 
薬に関する情報は、世界中に、ほぼ同時に発信されています。つまり、世界的に使われている薬は、副作用情報の集積が大規模で、説得力が強いです。そうした市販後調査の結果、それまで、日常で使われた良い薬が、あっという間に使いたくない薬になってしまいます。医療関係者にとっても、薬の使用者にとっても、大変な時代になってきたと思います。情報の格差がますます、広がってきました。

メーカーの説明では、チャンピックス錠は、タバコを吸いたいという気持ちを抑えたり、禁煙によるニコチンの離脱症状を軽減します。また、チャンピックス錠を服用中に喫煙すると、満足感が抑制されます。メーカーの示す作用機序は、脳内のα4β2ニコチン受容体に、チャンピックスが結合するとしています。
 
タバコを吸うと、この受容体に、ニコチンが結合して、満足感が得られます。チャンピックス錠はこの脳内にあるα4β2ニコチン受容体にニコチンの代わりに結合し、ニコチンを欲する気持ちを軽減します。チャンピックス錠を服用中は、タバコを吸ってニコチンを体内に入れても、4β2ニコチン受容体にニコチンが結合しにくいため、満足感が得られなくなります。
 
アメリカ胸部学会による会員宛てにメイルに、こんな記事がありましたので、紹介します。

月4日のNBC夜のニュースで、カナダ医学会は、それまでに心疾患が無い人でも、チャンティックスにより心臓のトラブルが起こりやすくなることを報告しました。
 
7月5日の、ニューヨークタイムスは、重大な心血管系のトラブルが、禁煙薬を使用している4,908 人中52人(1.06%)、一方、偽薬を使用中の3,308人中27(0.82 %)の割合で、おきたことを報道しました。
 
ウオールストリートジャーナルでは、FDAは、チャンピックスが、心血管系のトラブルと関係する可能性があると報道しました。
 
Bloomberg Newsでは、FDAは、メーカーのファイザーに対して、副作用について、大規模調査をするように依頼したと、報道しました。
 
他にも、以下の世界中の報道機関が、関連するニュースを流しました。数値は、日時を示します。
Time (7/5, Park)
"Healthland" blog, the Forbes (7/5, Husten) "Cardiobrief" blog, HealthDay
(7/4, Mann), MedPage Today (7/4, Bankhead), WebMD (7/4, McMillen), the UK's
Daily Mail (7/5), AFP (7/5), Reuters (7/5, Kelland), and BBC News (7/5).